お誕生日は何食べる?
「ザップ、今日は何食べたい。なんでも作るから言って」
マイはエプロンと三角巾フル装備だ。全身から、料理作りますオーラが出ている。
「たんた……」
担々麺と言いそうになって止める、今日は僕の誕生日。マイがそれを全力で祝ってくれようとしてるのに、担々麺は違う気がする。
リアルにシミューレートしてみる。
「お誕生日おめでとう」
マイが祝いの言葉をくれる。
「おめでとうございますご主人様」
炬燵ドラゴンも祝ってくれる。
「ザップおめでとう」
アラサー幼女も祝ってくれるはず。
「「ハッピ、バースデー、ディア、ザップー♪」」
みんな歌ってくれるだろう。
「「ハッピ、バースデー、トューユー♪ お誕生日おめでとう!!」」
「「ずるずるずるずるーーーっ!」」
そして、みんなで仲良く担々麺をすする。額に汗しながら一心不乱に……
やっぱ、無いな……
しかも担々麺で痺れてる舌でケーキを食べる。どんな美味しいケーキでも、その味を減じるだろう。
「どうしたの目瞑って頷いて」
「ちょっと待ってくれ、今、何がいいか考えてるよ」
チキンライス、ビリヤニ、カレー。んー、なんか違う。誕生日に食べるごちそうが思い浮かばない……だって、マイ達と出会うまでは、誕生日にごちそうを食べた記憶がないから。
「しょうがないわねー。行くわよ、ザップ」
「え、どこに」
「隣のレストランよ。ジブルが持ってるデータだと、誕生日に食べたいものランキングトップスリーは、寿司、焼き肉、ステーキだそうよ。多分ザップは悩んで選べないから、全部作って隣に準備してあるわよ。ここじゃ狭いからね」
まじか、優柔不断っぽく思われるのは少し不本意だけど、その通りだから仕方ない。特別な日に大好きな人から何を食べるか聞かれて即答できる人はそうそう居ないだろう。誰だって考え込むよ。
マイに手を引っ張られて、隣のレストラン『みみずくの横ばい亭』に行く。
パンパン!!
店に入ると、クラッカーが出迎えてくれた。恥ずかしいな、結婚式の新郎新婦みたいだよ。
「「お誕生日、おめでとう!!」」
店の中は見渡す限り僕の知り合い。まじか、こんなに沢山の人が僕を祝ってくれるのか……
ビュッフェ方式で、中央にごちそうの乗ったテーブルがある。ピザとかローストビーフとか僕が好きなものがある。焼き肉はバーベキューコンロでその場で焼いて食べるスタイルで、お寿司は忍者ピオンがその場で握ってくれるそうだ。なんて贅沢なんだ、まるでパーティーみたいだ。
ビュッフェ……なんか嫌な記憶が……
軽く僕が挨拶して、会食が始まる。みんな一言二言僕に挨拶に来て、そのあとは各々楽しそうに飯食いながら飲んでいる。こいつらただ宴会したかっただけなんじゃ? まあ、全然それでいいけど。
「ご主人様、今日は好きなだけ食べていいんですよね」
アンはキラキラした目で僕を見ると料理の方に走っていく。
「おいおい、好きなだけ食っていいと思うが、俺の分は残しとけよ」
奴はやっぱり化け物だ。恐ろしいスピードで料理を食べ尽くしていく。そう、王都のパーティーで参加者を新刊本させた時のように。まあ、けど、一通り僕も頂いたから問題はない。それに、寿司と焼き肉はその場で作るから、どんなにアンがマッハで食べても問題ない。マイは多分、これも考慮に入れてたんだろう。
「ザップ、おめでとう、これからもよろしくね」
僕のテーブルにはいつの間にかマイだけになってる。他のみんなは飲み食いに夢中だ。もしかして、僕らに気を使ってるなんてないよな?
「ああ、マイ、ありがとう。こちらこそよろしく」
そして、宴は夜遅くまで続いた。来年も頑張ろう。
回りは誕生日なんだから、マイともっと親密になれよと思ってるのに、そんなの気付かないで、しかも口説きもしないへたれなザップさん。そういうザップさんが好きです。
読んでいただいてありがとうございます。今日から6年目。初投稿から5年経ちました。今年は出版という大きなイベントがありました。まさかザップさんがあんなに格好よくなるなんて、鍋島テツヒロ先生には感謝しかないです。当然、出版に携わっていただいた全ての方にも感謝してます。
そして、何よりも、ここで読んでいただいた皆様のおかげで、本を出す事ができました。とっても感謝してます。
本当に本当にありがとうございます。




