コンフェッションブース 青春編 無気力
コン。
コン。
なんだこのノック。弱いし間隔あきすぎだろ。舐めてんのか。音の高さから男くさいな。音のする高さからだいたいのノックする人の身長を割り出せるようになった。嫌な熟練だ。
「どうぞ」
的中。男。しかもなんかめっちゃ眠そうだ。顔の幼さからまだ十代後半だろう。なんかこんな奴ばっかだな。
「えっ、おっさん?」
「おっさんちゃうわ。お前より少し年上なだけだ」
「顔は見えないけど、若くて、おっぱいでっかい女の子と無料で話できるって聞いたから来たのに……」
もしかしてシャリー目当てか? 残念だがここにいるのは僕だ。巨乳じゃなくて、鍛え上げられた僕の腕の筋肉でも鑑賞しやがれ。袖をまくって二の腕をピクピクさせてやる。
「ヒッ。かっ、帰ります」
「帰んな。座れ。来たからにはなんか話せ」
「はっ、はいっ」
兄ちゃんは僕の前に座る。
「で、困ったりして相談したい事は?」
「い、今、ガラが悪いおっさんに無理矢理軟禁されてます……」
「困るなっ。軟禁じゃない。話し合いだ。あと、おっさん言うな。ほら、あんだろ。悩みの一つ二つ」
「そっ、そうですねー。なんて言うか何をするにもやる気がなくて。巨乳見たらやる気、起こるかと思ったんですが。逆に萎えました」
やる気がない? 今すぐ呼吸を止めろ! って言いたいとこだが僕は神父。なんと仕事着まで用意して貰えた。測ったかのようにピッタリだ。解せぬ。
「そうか、やる気が欲しいのか。お前にだってあるだろ。なんか欲しいもの。それを手に入れるために頑張れよ」
「別にそこまで無いですね」
「美味い食べ物」
「別に」
「格好いい服」
「別に」
「可愛い女の子!」
「無理です。僕なんかに可愛い女の子が興味ある訳ないじゃないですか」
お金払ったら可愛い女の子がちやほやしてくれる店もあるが、こいつにはまだ早すぎる。無気力の代わりに借金地獄に落としたら逆に悪化してる。
「なんか好きなものないのかよ」
「さぁ?」
「おいおい、自分の事だろ。じゃ、お前を思ってくれる人を喜ばせるために頑張れ。親兄弟いるだろ」
僕自身は、昔、妹のために頑張れた。自分のために頑張ると、妥協してしまうからな。
「居ないです」
「変な事を聞いて悪かったな。そうだ。ペット。ペットを買え。買うと金かかるの嫌なら捕まえてこい。うちには拾ってきたでっかいトカゲがいるが、そいつがしこたま飯を食ったり、ウトウト昼寝してたりするの見ると、コイツのために頑張らないとって思えたりもする。とりあえずなんか生き物飼ってみろ」
「生き物ですかー? そう言えば、子供の頃、ダンゴムシ飼ってたけど、面白くもなんともなかったですよ。すぐ死んだし」
「もっと可愛いものを飼え」
「えー、おっおにいさん。トカゲが可愛いんですか」
「ああ、まあそうだな。ソコソコ可愛いぞ」
「そうなんですね。じゃ、とりあえず、考えてみます。では、ありがとうございました」
なんか少しだけ、少年が元気になったような。出て行く姿が年相応だった。入ってきた時は爺さんみたいだったもんな。
けど、家に帰ったら何かがいるっていいものだ。最近うちのトカゲ娘は炬燵で寝てばっかだけど、美味しそうに飯食ってるのを見ると、頑張って稼がないとって思える。まあ、けど、見た目が可愛くなかったら、洞窟に放流してたかもな。
表紙左上の銀髪ちゃんが、ザップが飼育してるトカゲちゃんです。お家にこんなトカゲちゃんが待ってたら、そりゃ誰でも頑張れますね。
なんと、書籍にはこんなトカゲちゃんのセクシーなイラストを鍋島テツヒロ先生が書いてくれてます。ぜひ見てくださーい!




