コンフェッションブース 終
「いてててっ。もしかして、寝てても魔法が発動したのか?」
パラパラ落ちてくる白い粉。手を伸ばして舐めると塩っぱい。寝てる時におしっこしてる夢見ておねしょしたようなもんだな。金銭的な被害は大きいけど。
「何があったのよ?」
上からジブルの声。僕は立ち上がり収納から服を出して着る。ああ、またお気に入りの服が……
「ザップさん、大丈夫ですか?」
アナベルも上から覗いている。その後ろからは奥さんも見ている。悲しそうな顔で壊れたテーブルを。弁償しないとね。
僕たちは、二階のアナベルの隣の空室に集まり、起きた事をジブルに話す。
ジブルはしばし考え込むと、口を開く。
「逃げられたのね。まあ、けど、もうここには来ないとは思うわ。アナベルちゃんのシーツから魔力痕が出たわ。それを処分したら、あっちからは何も出来ないはずよ」
「えっ、あのシーツですか? お気に入りだったのに」
シーツを確認すると、なんの変哲も無い。強いて言えば造形が良くないアヒルっぽい何かが無数に描かれている。買ったのは王都で、アナベルはなぜかこれに強く惹かれたそうだ。
「アナベルちゃんは魔力が高いわ。私もなぜかこのシーツを使ってみたくなるわ。多分、魔力が高い人には魅力的に見える魔法ではない神秘的な力がはたらいてるんだと思う」
そうか、選別してるのか。だから、魔力が低い僕には不愉快なものに見えるのか。なんか不愉快だな。けど、ということは。
「魔力が高い者に恐怖を与えるシーツ。多分、それを力にして集めていたんだな、あの死神もどきは」
「そうね、けど、そんなので集められる悪意はたかがしれてるから、もしかしたら、これってたくさん出回ってるのかも。一応解決って事で、私はこれがどっからきたのか調べるわ。その前に一応、これ」
ジブルはバラが一輪入った花瓶を収納から取り出してアナベルに渡す。フワッとバラの香りがする。
「対アストラル体の芳香結界よ。試作品だからあげるわ。大気の魔力を吸って、悪意ある幽体が入って来られない香りを出すの。この花が枯れたら魔族クラスだから私たちの家にすぐに来て。けど、悪魔は慎重だからもう来ないと思うけど」
「ありがとうございます」
ん、それ始めから出せば良かったんじゃ? まあ予測してた一つに落ち着いたってだけか。試作品って言ってるけど、実験台っぽいな。ジブルが何かをあげる時は、その金額が回収できる時。この魔道具を悪夢払いで売りつけるつもりなんだろう。
ジブルはシーツを持って立ち去る。あ、修理費、少しは出してもらいたかった。
収納にテーブルや床の破片を入れて、軽く補修して、あとはプロに頼んでお金を請求するように言う。奥さんは遠慮したけど、一押しで快諾した。あとでジブルにたかろう。
そして、トボトボ帰途につく。とは言ってもここは家と近い。悪魔か。もう関わる事が無ければいいんだが。それにしても散々だ。まさか悩み相談で修理費で散財する事になるとは。絶対床とテーブル高い。
「ザップさん。探しましたよ」
目の前には神殿の偉い人。
「では、また来週火曜日お願いしますね」
えっ、また行かないとなの……
コンフェッションブース 終了?
もうじき12月。12月12日から6年目突入に。




