コンフェッションブース 9
「おい、なんだこれ」
ジブルが僕とアナベルちゃんに差しだしたのはいわゆるナイトキャップというものだろう。けど問題はその形だ。でっかい猫耳ついとる。
「しょうがないでしょ。うちで実験に使ったやつなんだから」
ジブルの言葉に納得する。むー、道理だ。マイには猫耳、アンには角が生えてるからな。より耳が大きい方、アナベルちゃんが持ってるやつをアンが使ったんだろう。
これが夢を同調させる魔道具の試作品だから、しぶしぶ被る。
アナベルちゃんはベッドに横になり、僕は絨毯に引いたござに横になる。ジブルも奥さんもお手伝いさんもいるから間違いなんて起こらない。
「とっとと始めるわね。ザップ、抵抗しないでねスリープアロー」
ジブルが構えた杖から光の矢が放たれる。それがアナベルちゃんの腕、悪意を感じる事に僕の眉間に吸い込まれたと思った時には、薄暗い部屋の中、首まで埋まってた。
「ザップさん!」
横にはアナベルも埋まっている。なんとか首を回すと見える。
「大丈夫かアナベル」
言って思ったけど、大丈夫な訳ない。体動かんし。
ピチョン。
ピチョン。
僕とアナベルに落ちてくる水滴。
「ひゃくにじゅういち、ひゃくにじゅう」
聞こえてくる低い声。げっ、僕が加わったお蔭でカウントが倍になってる。
ピチョン。
ピチョン。
「ひゃくじゅうきゅう、ひゃくじゅうはち」
なんか数が減るのは気持ち悪いな。カウントしてるって事は数えているのは意志がある存在。ならばっ!
ピチョン。
ピチョン。
先に僕は叫ぶ。
「ひゃくにじゅういち、ひゃくにじゅうっ!」
これでどうだ!
「ひゃくじゅうきゅう」
ばかめ。つられたな。
「ひゃくじゅうなな」
騙されなかったか。けど、今さっき明らかにつられたよね。声の人。なかなか人間味溢れてんな。
頭に水滴が落ちると数がすすむ。それならば。
ピチョン。
びちょん!
「なんか音が変だったわよね?」
「ああ、水滴、食ってやった! なんか苦くてカビくさいなー」
「えー、まじー。そんなの口に入れて大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫だ。冒険者に必要なものの一つは強い胃袋だ!」
ん、カウント、おせーなー。
「ひゃくじゅうろく、ひゃくろくっ!」
「あー、怒ってるじゃないですかー。数が十進んだわよ」
「ふざけやがって! これならどうだ! ぶっ!」
僕は上を向いて、アルティメット荷物持ち唾吐きを真上に放つ。誰だかしらんが、水を垂らしてる奴に当たるはずだ。
びちゃっ!
「命中っ!」
「ザップさん、やばっ。どうやったらそんなこと思いつくのよ」
「よい子は真似しちゃダメだ。自爆するだけだからな」
ざばーーーーん!
上から大量の水が落ちてきた。頭ずぶ濡れだよ。収納スキルは使えないようだが、魔力は練れる。
「おい、そんなチンケな嫌がらせなんか止めて出てきたらどうだ!」
さっきまではなんもなかったけど、あきらかに上に何者かの気配がする。
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