コンフェッションブース 6
「それで、なにがあったんですか?」
僕は、ゆっくりと尋ねる。この薄暗さ、湿った空気、そして僕の低い声。自分が本物の神父になったような錯覚を覚える。あ、神殿の偉い人のお墨付きだから、本物の神父って言ってもいいのか?
「毎日怖い夢をみるの」
いきなり馴れ馴れしい言葉つかいに変わったな。いや、多分、自分を取り繕う余裕がないんだろう。けど、夢? 怖い夢なら僕だってみる。
「どんな夢ですか?」
「私は、首から下が固い岩みたいな床に埋められてる」
埋められてる系の夢は、昔の僕はよく見た。そういう時は必ず、マイとかアンとかが僕に抱き着いてたなー。まあ、迷宮暮らしの時は寒かったから、あいつらは僕を湯たんぽ代わりにしてたんだが。今だにたまに、マイは寒いとか言って襲撃してくるが、他の奴のとこに行けって追っ払ってる。今、一緒に寝ようもんなら、いつ僕が暴走してもおかしくない。マイは昔僕が助けてあげたから好意をもってるだけで、本当に僕なんかを好きになる訳ないからな……
「そして、暗くなにも見えない天井から雫が落ちてくるの。ポタリポタリと」
なんか、そういう拷問の話聞いた事があるなー。けど、なんか不気味なだけで、そんな夢、怖くなくないか?
「低い声が聞こえるの。666から始まって、頭に水滴が落ちるたびに数字が減っていく。最初は変な夢って思ってたけど、みるのは毎晩で、数字は142まで減ったわ。多分、私は死ぬ。数字が0になったら……」
なんなんだろう。その夢は? 嫌だな。声が聞こえて数が減ってくって。死ぬは思い込みすぎかもしれないが、なんか起こりそうと僕も思うだろう。昔、魔道都市の図書館の本で、夢って、外部や体の刺激でみるものと、ストレス解消のために自分の願望を叶えるものがあるって読んだ事がある。そして、それに当てはまらないものは、魔的なものや未知なるものが関わってる事があると。
まずは、刺激からだ。
「寝てる時に、頭の上になんか落ちてきたりとかはないですか?」
「ないです。部屋は新しく綺麗ですし、他の部屋でもみます」
女の子の服装は縫製もしっかりしてる。多分、いいとこのお嬢さんだ。新しい部屋って言ってるし、雨漏りはないだろう。
「侵入者とか、家の誰かと敵対してるとかは?」
「ないです。ないと思います」
んー。さすがに頭に水滴が落ちてくるのがストレス解消になってるっていうのはないよな。
「つかぬことをうかがいますが、近親者に、サハギンとかマーメイドとか居ないですよね」
「神父さん? なに言ってるの?」
あ、ちょっとムッとしてる。軽率だったか。まあ、一応だよ。
なんか早くも手詰まりっぽいなー。こんな時には。
「専門家を呼ぶので少し待っててください」
「はい」
僕はスマホを出す。メールすんのは面倒くさい。コールしばし。
「なによザップ。授業中だって」
不機嫌な導師ジブルの声。
「そんなの知るか。来い今すぐ」
多分さっきマイが直ぐ来たのにはコイツも関わってる。しばらくしたら来る事だろう。
ネコちゃんつきの色紙を八枚書きました。
来週辺りには書店さんに飾られてるはずです。
見かけたら、そっと見守ってください。
にゃーん。にゃーん。




