コンフェッションブース 4
「みんなはみんな。あなたはあなた。人と一緒でなくてもなんら恥じる事はないです。しっかり自分の意志をもっちましょう。流されるのは良くはないと思います」
僕は、脳内加速でしっかり考えた文言を落ち着けた声で、ゆっくりはっきり丁寧に言う。なんか聞いた事があるような陳腐な言葉だけどこれくらいしか思いつかない。一瞬、ここは暗いし、誰もこないんじゃ? とか邪念がよぎったが、僕は今は悩める子羊を導く神父。そもそもここは神殿。そういう事をするとこじゃない。バチ当たる。
「えー、何でですかぁ? めっちゃ恥ずいじゃないですかー。私だけ卒業できないのって」
少女の合掌に力が入り、上目遣いに僕を見る。その目は潤んでいる。それより、ブツが寄せられてすんごい事になってるよ。ヤバいさっきのヤンママといい攻撃力高すぎる。なぜにここはこんな強敵ばかりなんだ。ドラゴンの巣窟にでも放り込まれた方がまだマシだ。
古来から伝わる由緒正しい言葉に、据え膳なんちゃらってのがある。もしかして僕も卒業チャンス? いかん、なんか頭がこんがらがってる。いや、ダメだ。そういうのは勢いでするもんじゃない。愛、愛が必要なんだ!
!!!
僕の右手がほんのりと温かい。なんと、少女はテーブルに置いてる僕の手を掴み引き寄せ包み込んでる。柔らかい。僕の回りではない新鮮な感触だ。僕らの手なんか、グリップだこでゴツゴツしてる。いいとこの娘さんなんだろうな。苦労せずに愛されて育ったんだろう。
僕は彼女に引き寄せられ、すんごいものがよりはっきり見える。
「お願いします……」
そんな目で僕を見られたら……
静寂が辺りを支配する。
ジジッと蠟燭が燃える音がする。
ヤバい。鼓動が。アグレッシブなビートが全身を包み込む。僕の手を通じて彼女にも伝わってるんじゃないだろうか? 戦いの日々で緊張には慣れてるはずなのに。静まれ僕のハートのビート!
僕は彼女の潤んだ瞳を見つめる。その中でチラチラと蠟燭の炎が揺れる。綺麗だ。そして可愛い。こういうゆるふわ系の女の子、大好きですっ。昔はそんな娘いたような気もするが、みんな育って脳筋殺戮マシーン化してしまってるもんな。僕は女の子が好きだ。女の子を愛してる。よしっ、愛を見つけた。
「しょうがないですね。協力しましょう私ができる事なら」
さすがにいきなりアブノーマルな要求はされないだろう。
「ありがとうございまーすっ!」
女の子は立ち上がりバンザイしてる。おお、揺れてるな。そんなに嬉しいのか。なんか少し照れくさい。けど、そんな大声出したら誰か来ちまうよ。
次の話からノクターンで(嘘)




