コンフェッションブース 3
「悩める子羊よ……」
夜の営みって、あの、あんな事だよな……
こんな清楚っぽくて可愛らしい女の子が子供がいる訳で、営みまくった訳で……
「悩める子羊よ……」
それって不倫ってやつだよね。営めないだけで外で営むなんてひでー奴だ。僕なんかまだ営んだことすらないのに。周りは可愛い女の子ばっかでハーレムとかも言われたりしてるけど、全く営んでないし、そもそも営める素振りすらみえない。それに対してこの娘の旦那はこんな可愛い娘と営んだばかりか、他でも営んでやがる。有罪だ。ギルティ!
けど、旦那になんかあったらこの娘は路頭に迷う訳で、助けるはずが、逆に苦しめる事になる。
「悩める子羊よ……」
こんな時、どうすればいいんだ? いい解決策が思い浮かばない。けど、解決するって自信まんまんに宣言しちまった訳で、今は僕が悩める子羊だ。僕が懺悔室に行きたい気分だ。
「神父様……やっぱり、人の気持ちなんでどうしようもないですよね。話、聞いて貰えただけで、なんかすっきりしました」
顔を上げて涙化粧でにっこり笑う女の子。強がりだ。これは強がりだ。健気さんだ。絶対に助けないと、この世から健気がまた一つ消える事になりそうだ。
考えろ。自分より強いものと対峙した時に取るべき手は?
簡単だ。自分より強い者に頼る。
僕はスマホで現状の詳細を高速メールする。
「しばし、待たれよ。担当の者がすぐに参る」
「はい」
来るような返信はあったけど、しばらく時間はかかるだろう。
バタン!
えっ、早っ……
「この娘ねっ!」
部屋に飛び込んで来たマイが、ヤンママの肩に手を置く。マイの顔は真っ赤だ。怒り心頭ってやつ?
「おい、王都に居たんじゃねーのか?」
「リナちゃんの魔王回廊を使ったのっ。行くわよ! 浮気ダメ! 絶対!」
マイはプリプリしながらヤンママの手を引いて出ていった。ヤンママ、ビビってたよ。まあ、人間関係のゴタゴタならマイがなんとかしてくれるだろう。僕と違って社交的だし、その手の機微にも長じてるはずだ。これにて一件落着だろう。
けど、王都からどうやってこんなに早く帰って来たんだろう? リナがなんちゃらとか言ってたから今度聞いてみよう。
コンコンッ。
ドアがノックされる。えー、まだあんのかよ。やれやれだ。
「どうぞ」
入って来たのは、オドオドした少年。
「あのー。聞いて欲しい事はですねー」
なんか、気になる女の子がいて、影でコソコソみてるらしい。クドクドなげーよ。
「わかりました。告白しろ。以上」
「えーっ。そんな勇気ないです。もし、もし、振られた……」
「そんなの知るか。振られたら次に行け。以上っ。行け」
少年はゆらゆらと出ていく。
なんか、昔の自分を見てるみたいでやだ。今のやり取りは冷たく見えるかもしれないが、優柔不断な人間に必要な事は決めて動く事だ。僕は今でも、昔の事で、あの時やっとけば良かったと思う事が多々ある。けど、やらなかった後悔より、やって失敗した後悔の方が引きずらない気がする。
少年は多分振られる事だろう。けど、陰から見てて彼女に彼氏ができて諦めるよりも、告白すればチャンスはある。頑張れ少年。もっとも、好きな女の子に告白するなんて、小心者の僕には無理だけど……
コンコンッ。
まだあんのかよ。せっかく甘酸っぱい気分に浸ってるのに。
「どうぞー」
いかん、だれるよ。
「神父様っ」
入って来たのは女の子。しかも可愛いい。座って僕を祈るように手を組む。首下は空いていて、胸の谷間がガッツリ見えてる。見ちゃダメだ。けど、あっちからは見えない訳で。
「お願いがあるんです。私、卒業したいんです。周りのみんなはもう卒業したのに、私だけ……」
えっ、なんだこの展開。こんな事がこの世に起こりうるのか?!
今、新作も書いてます。ある程度ストックが溜まったら、行きます! よろしくお願いします。




