コンフェッションブース 1
「いたたたたっ。お腹いたいー」
僕の目の前でギャルがうずくまる。なんかセリフ棒読みでわざとらしい。
僕は今、家の隣のレストラン、『みみずくの横ばい亭』で日替わりのランチをいただいてる。マイとアンは今日は王都で冬ものの服のお買い物だ。冬ものはアイテム数が多いから長丁場がさらに長くなるから逃げるに限る。
彼女の名前はシャリー。前に聖教国から拉致ってきた大神官だ。呪いを解くのが得意なはずだが、文明社会に毒されて、彼女自身が呪いの人形みたくなっている。極彩色の髪の毛にケバケバしいメイクにアクセサリージャラジャラ。最近はどこでも格好の自由度があがってるからな。前までは食いもん屋のウェイトレスさんとかは清楚っぽい格好が規則だったらしいけど、今は派手派手をよく見る。世の中変わったもんだ。けどここはレストランだからシャリーは一応メイド服を着ている。
「シャリーちゃん大丈夫っ?」
すぐにラパンが駆けつける。うずくまったシャリーの背中をさすってる。
「おい、大丈夫か?」
嘘っぽいけど、一応声はかけてみる。
「じ、持病のしゃくが。これ、もうムリムリ。あたし、これから教会に行かないとなんだけど、居ないかなー誰か代わりに行ってくれる人ー」
チラッとチラッと僕の方を見てる。教会? 勘弁してくれ。あのしっとりとした静謐感は嫌いではないんだけど、長居は無理だ。なんかお尻らへんがムズムズして、無償に大声上げたくなる。それに、昔、神の使途らしい天使を大量にやっつけた事があるから、なんか場違いって言うか、拒絶されてる感もあって滅多に教会には足を運ばない。
「んー、僕が行ってあげたいとこだけど、これからまだ仕事あるもんなー」
おいおい、ラパン、まともに受け止めるな。多分シャリーは仮病だぞ。今どき「持病のしゃく」なんて聞いた事ない。その前に、そいつは神聖魔法のプロフェッショナルだろ。そんじゃそこらの病気なんか自分でなんとかできるだろ。ま、乗る気はしないが話だけでも聞いてやるか。
「おい、教会になんの用があるんだ?」
「毎週火曜日はボランティアで教会のコンフェッションブース担当なんですー。悩める子羊があたしを待ってる的な。けど、お腹いたいと役に立てない感じですー」
「ん、そのコンバットブースってなんだ?」
「コンバットじゃなくて、コンフェッションですよ。全くコンバットブースって言ったら傭兵の詰め所みたいじゃないですかー。コンフェッションって『告白』っていう意味ですー」
ん、お腹いたいんじゃないのかよ。じゃコンフェッションブースって、告白部屋って意味か?
「じゃ、シャリーに告白しにきた奴を追っ払えばいいのか?」
「なんで、すぐバイオレンスになるんですか? あたしじゃなくて、神に告白しにきた人たちにアドバイスを与えるんです」
告白部屋なんて言うから、お見合いみたいなのを想像したが違ったみたいだな。
「あ、わかった。懺悔室だな。なんで訳わかんない横文字使い捨てやがるんだよ。要は人生相談か?」
「そうですよ。ボランティアで、人の悩みを聞くんですよー。行きたかったですけど、イテテテッ。これじゃ親身に話聞けないですー」
なんかボランティアって言葉に力が入ってたな。要は無賃が嫌なんだろう。コイツ、金にがめついからな。まあ、けど、人の悩みを聞いてアドバイスくらいならできるだろう。今日は暇だし行ってみるか。
寒暖差が激しいと、やたら体力を消耗しますねー。皆様もしっかり休息をとってお体には気をつけてください。




