ちゃれんじゃー さん
「ザップ・グッドフェロー! 勝負だっ! 先に街の入り口から出て戻って来た方が勝ちだっ!」
男はいうなり兜をつけ、ジェニファーにまたがって、ウィリーしながら群衆を飛び越えて大通りを疾走していく……
ちょっと格好よかった。乗ってるのが女の人じゃなかったら。
よし。帰るか。
「おい、ザップ、何してる走れ!」
リナが背中を叩く。いてーよ。
「なんで?」
「勝負だろ!」
「いや、普通この流れはバトルだろ。なんでレースしないといかんのだよ」
「そりゃ、お前、バイクで勝負って言ったら競走だろう。四の五の言わずにさっさと走れ」
何言ってる。今までのチャレンジャーでかけっこを仕掛けてきた奴いねーし。
「俺は今そんな気分じゃないの。なんであんな変態とレースせにゃあかんのだ。さらし者だ。わざわざ街全体にあの変態の知り合いって告知する気はねーよ。いーよ負けで」
狭い街だ。レースなんかしたら、明日には美女に乗った男と僕が仲良く走ってたって噂が回るだろう。噂って捻れるから、多分、僕が美女にまたがって街を練り歩いたとかに変わっちまうだろう。そして、街の女性は僕に近づかなくなるだろう。ヤダ。
「お前は良くても妾は良くないんだ。負けたら型取りって言ってただろ」
「別に今も裸のようなものだろ。気にすんな。お前そっくりなバイクを大量生産すればいいんじゃないか?」
リナに乗った大勢の男たちが荒野を駆け抜ける。うん、騎士団出撃だな。
「ほう、そんなに妾と戦いたいのか? いいだろう。まずはお前をぶちのめす。そして、戻ってきたあいつもぶちのめす」
リナは金色のパンツからズルリと巨大な剣を出し構える。あいかわらず品が無いな。違うものに収納スキルを付与すればいいのに。とは言っても違うものってブラジャーしか無いか。どっちもどっちだ。服を着れ!
「わかったわかった。レースすればいいんだろ。絶対勝つから大人しく待っててくれ」
僕は一目散に駆け出す。リナと戦うくらいならかけっこの方がマシだ。ギャラリーを飛び越え駆け出す。全力だ。目の前の空気を収納に入れて後ろから出す、空気抵抗ゼロの荷物持ち走りだ。
上に金色の円盤が浮いてる。収納ポータルだ。なんか真ん中にキラキラしたものがのぞいている。ん、レンズか。あれはあれだな、最近魔道都市で開発された撮影の魔道具。あのレンズに映ったものを遠くに映し出すやつだ。て言うことはみんながギャラリーが走る僕を見てる?
あいつが向かったのは西門の方。時間が早いから馬車が多い。少しイライラする。渋滞かよ。馬を驚かせないように気をつけながら、馬車の間をぬって走る。今のうちに追い着かないと勝負にならない。
道路は左側通行で、下り、街から離れる側、は混んでるが、上りは空いている。今は朝だから街から離れようとする馬車のお蔭で下りが混むが、夕方は逆になる。
さすがにバイク男は逆走はしてないと思うから、今は進むのに難儀してるはずだ。折り返して上りになると加速し放題だから追い着けないかもしれない。僕の方が小回りが効くから今なら追い着ける。なんかいい方法は無いのか? 渋滞の中でダッシュは初体験だから思うように進めない。
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