ちゃれんじゃー いち
「ザップ・グッドフェロー! お前を倒してやるっ!」
乗り物? いや、ビキニの女性にまたがった男が僕に人差し指を突きつけている。ササーッと僕の隣で素振りをしてた女の子たちが離れていく。一人を残して。うん、僕も離れたい。
僕は朝の日課の素振りをしてたとこだ。なぜかそれがこの街の朝の名物になり、人が集まり、食べ物の露店のみならず、最近は雑貨店やフリーマーケットみたいなのもやってる。特に今日はギャラリーが多い。あと、公営のブックメーカーの屋台すらある。何に賭けてるかと言うと、朝、素振りをしてると腕自慢がたまに勝負をふっかけてくるから、その挑戦者がどれだけ耐えられるかの時間にオッズが割り振られている。ちなみに僕は未だ挑戦者に土をつけられた事は無い。
男を観察する。程よい筋肉がついた体にピタリと貼り付いた黒い全身タイツみたいなツナギ。体の正面にファスナーがあり開閉できるようだ。空いた胸元から胸毛が覗いている。茶色い癖っ毛に彫りが深い顔にはサングラス、葉巻を咥えている。片手はまたがった女性の肩に置かれており、もう片方の手には透明なバイザーがついたツルンとした兜を手にしている。
乗られている女性を見る。お馬さんのポーズで、手と足で二つの車輪から出た軸を掴んでいる。つややかな金髪で大きな目に高い鼻。西方系の美人さんだ。服は申し訳程度のビキニで、胸もお尻も大きい。目が合ってウィンクしてくれた。
この人、女の人に乗って僕の前まで来ると、兜を外してサングラスをつけて葉巻を咥えて火をつけた。サングラスも葉巻も手から出したからどうやら収納スキル持ちみたいだ。
なんか、濃ゆすぎて言葉が出ない。奴は口から葉巻を外すと煙を吹き出す。なんか煙の色がおかしい。ピンク色してる。大丈夫か? ご禁制のものなんじゃないか?
「俺の名前はネビュラ。遙か西の国からやって来た。噂ではお前が最強らしいな。その最強の名前、貰い受けに来た」
「何を言っておる。最強は妾だ!」
唯一逃げなかった女の子、自称北の魔王リナ・アシュガルドが僕の前に立つ。その手には巨大な大剣。最近朝は寒いのに安定の金色のビキニスタイルだ。
「お嬢ちゃんは引っ込んでな」
男は降り立つとリナの前に立つ。頭二つ以上は背が高い。
「引っ込まんぞ。妾とザップは今の所妾の方が勝ち越してる。最近は戦ってはくれないが」
リナは強い。戦うと痛いからヤダ。
「お前の様な変態、女の敵は妾が成敗する!」
「おいおい、俺のどこが女の敵だ? 国では現代のドンファンって呼ばれてたんだぞ」
確かドンファンって伝説の女ったらしだよな。悪口じゃないのか? 女の敵確定だよな?
「女性にまたがって移動する奴がどの口で言うのだ!」
「女性? ああ、嬢ちゃん勘違いしてるな。あれはバイクだ。あ、ここらではバイクは流行ってないんだな。そう、ゴーレムだ。二つの車輪で移動するゴーレムだよ。名前はジェニファーだ」
僕はバイクと呼ばれた女の人を見る。目が合ってまたパチンとウィンクしてくれる。まじかよ。ゴーレムなのか?
「本当みたいだな。生命の力が見えない。もしかして、死体を継ぎ合わせて作ったのか?」
「そんなフランケンシュタインみてーな事しねーよ。あれは、金属の骨格の上に国で一番のセクシー女優から取った型を使って人肌に似た触感の素材で作ったんだよ。ちゃーんと水着の下も精巧に出来てるぜぇ」
まじか? ラブドールなのか? 死体で作るよりヤバいように思えるのは気のせいだろうか? 名前もつけてるみたいだし。
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