ささやかな疑問
「なんで、最近のポスターとかの絵の女の子は、ち、乳がクソデカいんだ……」
僕は勇気を振り絞って聞いてみた。この質問は恥ずかしい。間違いなく公で口にするのは変態だろう。だが、疑問に思った事はしょうがない。気になって夜も眠れない。いや、眠れるけど、夢の中にも紛れ込んでくる。
今朝の夢なんて最悪だった。登場する女性はみんな激しいを通り越した巨乳。その女性たちに所構わず「なんでおっぱいがそんなに大っきいのですか?」と無垢に尋ね続ける僕。まずい。現実でそんな事をしたら変質者だ多分捕まる。
ただでさえ僕の世間でのイメージは巨乳好きだ。決してそういう訳では無いと思うんだが、ルル(後輩の女の子四人冒険者パーティーの魔法使い。件の絵のような女性が実在してる事を証明してる人物)が書いた僕を主人公にした小説では、そういう設定になっている。挿絵のマイなんて明らかに巨乳に盛られてる。けど、マイは全く文句を言わない。なんでだ?
なぜルルが僕を巨乳好き認定してるかと言うと、僕が彼女のブツをチラ見するからだそうだ。けど、僕だけじゃない。マイだってよく見てるし、アンなんかいつもガン見してる。それに、視界に動くものが入るとつい見てしまうだろ? いついかなる時も、奇襲を警戒して動くものに気を張ってる冒険者の性だ。
ここは野郎しか来ない定食屋。いたるとこでオッサンたちが下品な話をしてるのが漏れ聞こえてくる。ここならどんな話をしても問題ない。
対面に座ってるのはパム。見た目は十才前後の子供で美少女と間違われるくらいの天使の様なオッサンだ。本職は吟遊詩人で、そのボーイソプラノは聞いた者すべてを魅力する。だが、変態のエキスパートだ。痴漢のプロ。ありとあらゆる下ネタと性的な変態行為に精通している。大手を振ってお天道様の下を歩いてるのが不思議な生き物だ。王都でも有名で、見た女性が老いも若きも逃げ出すから最近は留置場暮らしが減ってるらしい。
「なんだい。ザップさんが聞きたい事があるって言うから、オイラ、ヤバい話かもって思って武装してきたよ」
シャツと短パンでどこが武装してるんだと思ったが言わない。吟遊詩人なのに楽器すら手にしてない。それより、答えを聞きたい。
「で、どうなんだ。わかるのか? あと、この話はみんなには内緒だ」
「うん、内緒だね。マイさんに聞かれたらしばかれそうだもんね」
「まあ、そんなとこだ」
「そうだね。けど、簡単な事だよ。みんな大っきいのが好きなんだよ」
「にしてはデカすぎだろ。あんな絵のどこがいいんだ?」
「はぁー」
ため息つくなよ。
「ザップさんって、見てるようで何も見てないんだね。思い出してみて、子供の時の事を」
急に何言ってんだ?
「その頃と比べて大きく変わったのに気付かない?」
「わかんねーな?」
「大っきくなったんだよ。女の子たちのおっぱいが平均的に」
なんだと……
確かにそういう気がする。いや、そうだ。ここ数年、やたらおっぱいが大っきな女の子を見かける。
それより、コイツ、幼少のみぎりから女子の胸を観察してたのか? その感性は天性のものだったのか。もう敬意すら覚える。パムさんって呼ぶか?
「だから、ザップさんの全盛期の絵はその当時の大っきいを大っきくしたのがうけて、今はその大っきいの基準が大っきくなったから、さらに大っきく書かないと大っきいって伝わらなくなったからだよ」
「俺をじじいみたくいうな。今でも全盛期だ。それで、なんか複雑だけど、大っきいの基準が大っきくなったって事か?」
「そういう事。感覚をアップデートしないと時代に取り残されるよ。じゃ、街に出て女の子見て、オイラの言葉を検証しないとね」
僕らは食堂を後にしたが、街の女の子は僕らを避けていくから、検証はできなかった。けどよかったと思う。まあ、流されてはいるが女の子の胸を見に行くなんて最低の行為だもんな。それに、僕自身は女の子の胸の大きさは関係ないって思ってるし。女の子自体が尊いものだから。
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