野蛮隊の冒険 勝負飯 おわり
「熱いでござる。こんなの脱ぐでござるっ!」
女戦士はパチンパチンと留め金を外すと、ジャラリと鎧を脱いで地面に置く。
「「おおっ!」」
ギャラリーからどよめき。僕も声をあげそうになった。
女戦士が下に着てるのは和装、前合わせの服。そのはだけかけたとこからのぞいてるのは、さらしに押し上げられた胸の谷間。けど、彼女はそんな事気にせずに一心不乱に鉄火丼を食べている。
「負けてたまるかっ!」
男戦士も負けじと鎧を脱ぐ。帝国式は蝶番で一人で脱ぎ着できるようになっている。
「「ブーブー」」
当然のギャラリーの反応。男戦士はシャツ一枚になり、そのだらしなく伸びた首のとこにはフッサーと胸毛がそよいでいる。地獄だ。
鎧が無くなって身軽になった二人は一気に食べ上げる。
「「おかわりっ!」」
二人同時にパムに丼を、差し出す。一瞬パムが嫌そうな顔したような。多分この丼はかなり高額なんだろう。
二人の目の前に現れる丼。
「なあ、それってそんなに美味いのか?」
男戦士が目を逸らしながら言う。なんか変な空気だな。
「うん、美味しいよ。なんか私ももっとどっかりしたもの食べたいような」
女戦士もそっぽ向きながら言う。また拙者ムーブが解けてる。なんだこのお見合いみたいな雰囲気は?
「嫌じゃなかったら交換しねーか?」
「いいわよ」
そして二人は丼を交換すると食べ始める。
「うめーなこれ。これならどんだけでも食べられそうだ」
「本当においしい。こんなカツ丼初めて。カツは分厚いのにジューシーで、玉子もトロットロ」
二人はなんかさっきより上品に丼を平らげた。
ゴーン。ゴーン。ゴーン。
チャイムが鳴る。一時か。これで訓練所の決闘場も使えるな。
「なあ、悪かった。別に刀の悪口言うつもりはなかったんだ。ハラ減ってたからイライラしててよ。いい討伐も無いし」
「ごめんなさい。私もお腹へっててイライラしてたのよ。本当はパーティー探してたのよ」
「これから、腹ごなしに体動かしながら、薬草でも採りに行こうと思ってるんだが、暇ならこねーか」
「そうね、運動もしたいし悪くないかも」
二人は立ち上がると、鎧を取って入口へと向かおうとする。
「おいっ、お前たち、決闘はどうしたんだよ」
パムが絡む。
「なんか、お腹いっぱいになったらとうでも良くなったわ」
「ほらほら、賭けてる人もいるんだよ」
「わかった。決闘だなジャンケンでいいな。ジャン、ケン、ポン」
男戦士はグー。女戦士はパー。
「あーあ、負けちまった。姉さんつええなー」
「何言ってんのよ。次やったら多分私が負けるわ。実力はあなたの方が上よ」
なんか二人は甘ーい空気を醸しながら出ていった。女戦士、可愛かったのに、あんな胸毛フッサーな冴えない男戦士についてくなんて。なんかやるせない気持ちだ。男戦士の仲間もトボトボついていく。
ギルド内には生暖かい空気。みんな考えてる事は一緒だろう。
「オイラ、しくじっちゃったなー。いい料理出し過ぎちゃったや。お腹いっぱいになって幸せになって決闘したいって思う人居ないよね。あと、オイラが悪い訳じゃないよ。吊り橋効果ってやつだよね?」
吊り橋効果? 確か吊り橋の上のような恐怖を感じてる時に、出会った人に対して恋愛感情を抱きやすくなるとかそんなやつだよな。レリーフ、僕の気配に恐怖を感じてそれを乗り越えたせいなのか?
賭けてた人たちはゾンビのように無気力に配当の処理をしてる。
あとで風の便りで聞いたけど、勝負飯はギルドの食堂のメニューだけになったそうだ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
アマゾンを見たら評価をいただいてて有難かったのですが、星5と星1の二つで、平均2.5になってて複雑な気分です。こっちのなろうでは星1でもめっちゃいただけたら嬉しいのに^_^;




