野蛮隊の冒険 勝負飯 5
「パム、ちょっといいかー」
僕はパムを呼ぶ。
「はーい」
余計な事言わずにパムがこっちに来る。僕に注意を向けないようにしてるんだろう。どうも戦士二人とも僕の事は知ってるみたいなので、隠してくれるのはありがたい。さらに二人とも萎縮しそうだしな。僕は二人には聞こえないように言う。
「なんかさー、戦士二人とも緊張しすぎてないか? プレッシャー与え過ぎだろ。趣旨がずれてる。二人が決闘する前の駆け引きが見たいのに、パムとの駆け引きになってる。これは良くない。せっかく冒険が流れての暇つぶしなのにつまんないだろ」
「そうですねー。なんとかしますよ」
あ、いかん。戦士二人がこっちを見てる。
「パムさん、すいません、ありがとうございます」
とりあえず下手に振る舞っとけばなんとかなるだろう。パムは手を振って戦士二人に話しかける。
「二人とも忘れてない? このあと決闘するんでしょ? さっきまでの勢いはどうしたんだよ。オイラたちは見てるだけ。気にしなくていいよ。それにご飯代は今からの掛け金から出すから、自分で稼いでるようなもんだよ。だからオイラたちの事は気にせず、好きなもの頼んでチャッチャと決闘するよ」
男戦士が手をあげる。
「あ、あの、やっぱ決闘なしってダメ……」
途中で、パムが割り込む
「ダメに決まってるでしょ。ほら、回りを見てよ。たくさんの人がお兄さんを応援してるんだから」
男戦士がぐるりと見渡すと、熱い眼差しの冒険者が何人も見てる。この掛けは単純だ。一口銀貨一枚で、集まったお金の七割を勝った方が分け合う。三割は胴元のもので、胴元は昔からの伝統でここのギルドの酒場だ。見たとこ人気は半々くらいだから、単純に考えると、勝ちを当てると掛け金が1.7倍くらいになる。ここに残ってる冒険者は勝った者は今日はもう仕事は止めて、負けた者は今からでも働く事だろう。だから結構みんな本気だ。決闘前までは掛ける相手を変えられるから、みんな必死に戦士たちのコンディション、立ち居振る舞いを見てる。
「鉄火丼! 拙者は鉄火丼を所望する」
なんとか女戦士は立ち直ったみたいだ。
「やってやるぜ! 俺はカツ丼だ! おい、その掛けって自分にも掛けられるんだよな」
「当然だよ。まあ、相手に掛けるのはなしだよ。わざと負ける人もいるからね。ちなみにパーティーメンバーも、相手に掛けるのは無しだよ」
パムが女戦士の前には鉄火丼、男戦士の前にはカツ丼を置く。
「カツ丼なんて、お前、戦の前に食べるものじゃないだろ」
まずは女戦士の口撃。
「鉄火丼? なんだそりゃ。乗ってるのは生の魚か? それこそ戦いの前に食べるもんじゃねーだろ。しかぶってもしらねーぞ」
『しかぶる』って粗相するって意味だよな。生物食べたくらいでお腹壊すようなヤワな奴は冒険者してないと思うが。もしかしたら男戦士、帝国の騎士だったのかもな。なんか上下関係に敏感だし、弱気と言うか、慎重と言うか。
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