野蛮隊の冒険 勝負飯 4
「おい、わらし、これおかしくないか?」
女戦士がメニューから顔を上げパムに話しかける。女戦士も男戦士も大人しくメニューを見てる。さっきのレリーフの乱入で、パムはその知り合いだと思い少しビビってるんだろう。呼び方が小僧からわらしに変わってるし。
「別におかしいとこないでしょ?」
「おかしいだろ。ここのギルドの食堂では寿司やしゃぶしゃぶを作れるのか?」
「ああね。それ全部オイラの収納にはいってるから直ぐ出せるんだよ」
そう言えば、パムの収納エリアにはおびただしい種類の料理が入っている。冒険生活に潤いを与えるためかと思ってたけど、こんな遊びもやってたのか。
「おいおい、それは勘弁してくれよ。収納に入れてるって事は、冷めたものしか無いって事だろ」
コトン。
パムはテーブルの上に唐揚げを一皿出す。熱々の湯気がたってて、辺り一面に美味そうな匂いが広がる。それを一つ爪楊枝で刺すと口に運ぶ。
「はふはふはふ、唐揚げサイコー。で、なんか言ったかい?」
二人は唐揚げを凝視する。
「あ、これはあげないよ。お二人は好きなもの頼んでよ。唐揚げ食べたいって言うならもう一皿出すけど」
「ザップ……」
女戦士が呟く。違うって。
「最強の荷物持ち……」
男戦士も呟く。違うって。
「はぁ、ザップさんがオイラみたく可愛い訳ないでしょ」
パムがこっちを向くけど、両手でバッテンする。
「オイラはザップさんのスキルを借りてるだけだよ。ほらほら、結構時間すぎちゃったよ。ちゃっちゃと料理を頼みなよ」
「俺、俺はサンドイッチをたのむっ」
男戦士が何かをかみ殺したような声を出す。
「サンドイッチだとー、ガラじゃねーだろ」
外野からヤジが飛ぶ。
「黙れ! サンドイッチはなー。食べやすいし消化にいいんだよ!」
「ヘタレー! ビビって、芋引くなー!」
「遠慮なんかしてないッ! 俺は俺はサンドイッチを食べてーんだよ」
男戦士の目はグルグル回っている。レリーフ、そして僕の影、パムがもしかしたら格上かもって思い始めてるのだろう。そうか、男戦士は遠慮してるのか。
「わっ、私は、うどん、うどん食べたいッ」
女戦士、さっきまで、自分の事を拙者って言ってたよね。なんか声も可愛いらしくなってるし。色々と驚きの連続でロールプレイが剥げたみたいだ。
「だっせーぞ」
「うどんってガラじゃねーだろ」
「全部脱げー!」
「うるさいなッ! わたし、拙者はうどん大好きな人でござるッ!」
顔がまっ赤だ。言葉が暴れてる。いっぱいいっぱいっぽいな。
けど、おかしい。どこからヤジが飛んできてるか探してみるが、ギャラリーはこっちを観察してるだけだ。それにパムが仕切ってるのにヤジ飛ばす剛の者がいるようにも見えない。
「カマトトぶるなー!」
「うどん食べたいッ。うどんは、食べやすいし、消化がいいのッ!」
ん、今、パムの口の端が少し動いた。もしかして、腹話術? ヤジは全部パムが声色を変えてたのか。なんかパムが吟遊詩人っぽい事してるの久しぶりにみたような。昔はよく歌ってたのに、最近はリュートすら手にしてないし。
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