ザップ・グッドフェローの憂鬱 中中
「いやー、しっかり磨いてたよ」
「ご主人様、砂利、砂利を噛むのがいいですよ」
ん、ジャリを噛む? 小石の事か? ジャリって子供の事もだよな。あ、そう言えばコイツ、ドラゴンスタイルの時は岩を噛んで歯磨きするって言ってたな。
「アンちゃん、もしかして庭に敷いてた小石が減ってるのって。ダメ。それ禁止。子供が見て真似したらどうするのよ」
駄目だ。マイにポンコツがまだ残ってる。最近の子供は賢いから、アンが砂利を噛んでるのを見ても誰も真似しないと思うぞ。そもそも最近は、落ちてるものや、そこらに生えてるものを口に入れるようなワイルドな子供は絶滅してしまってるからな。王国は豊かになったからな。
「もしかして、歯磨きの話してるの?」
うちの働き頭の幼女導師が帰って来た。わいのわいのと騒いでたから気付かなかった。
「途中から聞いてたけど、しっかり歯磨きしても歯石ってつくものなのよ。あ、歯石っていうのは歯垢とかが唾液で石灰化して硬くなったものね。歯石は歯磨きでは取れなくて、虫歯や歯周病のもとになるものよ」
ジブルは、バックを置き座りながら語り始める。先生してるだけあるな。言葉がスラスラ出てきてる。
「マイも三カ月に一回はスケーリングしてるでしょ。多分、ザップってその事知らないのよ」
「あ、そうねー。今までザップとそういう話はしてないかも」
「なんだそれ?」
スケーリング? 初耳だ。ジブルを見ると話し始める。
「スケーリングって歯石除去の事よ。歯にこびりついた歯石を取る事よ」
「あ、それなら知ってる。俺の知り合いの冒険者はたまに鉄ヤスリで歯を磨くって言ってたが、お前たちもヤスリで磨いてるのか?」
なんかやだなぁ。マイやジブルが鉄ヤスリを口に入れてゴシゴシしてるのって。ついマイの顔を見ると眉をひそめる。
「そんな訳ないでしょ。歯医者に行ってやってもらってるわよ」
「え、まじか、歯医者って病院だろ。よくわざわざ行くなー」
僕は病院が嫌いと言うか、駄目だ。あの薬品臭、注射、白衣を着た先生。なんていうが根源的な恐怖を感じる。特に注射は嫌だ。
「ザップがねー。虫歯をペンチで抜いてエリクサーで治すとか、訳が分かんない事言ってるのよ」
マイがペンチをカチカチ鳴らす。
「それは、いいアイデアじゃあるけど、歯石は取れないわね。一時しのぎにしかならないわ。多分、また次々と虫歯になるから何回も抜かないといけなくなるわよ。しょうがないわねー。王都の歯医者に予約とっとくから、明日行きなさい。絶対よ。絶対に行くのよ。歯石って放っとくと口が臭くなるのよ。臭いと女の子に嫌われるわよ」
「俺は別に女の子に嫌われても構わない」
「ザップ、行きなさい。行かないなら、ご飯は肉抜きで、甘いもの禁止ね! アンちゃんも」
かくして、僕とアンは歯医者へと行く事になった。
あと四日で発売!
今日はクタクタで遅くなってしまいました(>_<)
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