舞台設営
「マイ、アンの上に行ってくれ」
「わかったわー」
魔法の絨毯がドラゴンのアンの上に来た瞬間飛び降りる。そして、ポータルを出して勢いを殺しながらふんわりとアンの頭の上に乗る。今僕たちが居るのはなんか邪悪そうな教会っぽい建物の前の広場だ。辺りには人の気配は無い。広場の回りにはケバケバしい統一感が無い建物が建っている。多分娼館的なものだと思われる。なんかエッチな絵とか書いてあるし。どうでもいいけど、そういう風俗街に建ってる神殿って何の神殿なんだろうか? よく見ると、神殿のシンボルがヤバい形している。うん、邪神だ。邪神に決まった。まあ、ここが更地になっても問題は無いだろう。
ここをバトルフィールドにする。建物を全部収納に入れたらすぐなんだけど、今回の目的の一つは威圧だ。派手にぶっ壊して貰おう。ピオンに指示を出してカプに乗って操縦してもらう。そして、ドラゴン二体には吠えながら暴れて貰い、瓦礫の山を作り出されていく。瓦礫は更に踏み固めて貰い、良い感じの広場が出来た。あとは敵がやって来るのを待つだけだ。
「ザップ! 不味いわよ。街の人たちが戻って来てる」
空飛ぶ絨毯で偵察に出てたマイが戻ってきた。
なぜ、なぜに住民が戻ってくる? ドラゴンが怖ろしく無いのか? あ、そうだ。相手は『言霊使い』。王都と同様に人々を操ってるのか。
「ザップ、どうするの?」
僕は高速思考で出来る事を考える。
① 大量虐殺
アンやカプにブレスして貰えば、住民はなかった事になると思うけど、多分、僕は他の全ての国から入国拒否される事になると思う。それに甘いと言われるかもしれないけど、例え犯罪者だとしても人を殺すのはやだ。
② 住民達の持ち物全てを収納に入れる
これはかつて帝国の騎士団を壊滅させた僕の常套技だけど、相手が正常な思考を持つ者だと成立しない。多分、僕目がけて裸の住民が押し寄せるだけだ。なんか、西方の国ではそういうイベントがありそうだな。裸で抗議デモとかあるらしいし。けど、少し面白そうだけど、マイが怒るだろうから却下だな。
③ 殺さないように手加減して、撃退していく。
まあ、面倒くさいけど、これしか方法は無いだろう。
しくったな。住民が街から出るのを確認してから襲撃すれば良かった。
まあ、元々、南から襲撃して北へは手を出さない予定だったから、住民が逃げてる最中に襲撃したんだが。完全に避難されるより、街の北に逃げ遅れの人がいて、ドラゴンたちの暴れる音を聞かせた方がより恐怖を煽り、今後僕らに手出ししようと思う人間が出ないようにと考えてた。ドバンでは南に富裕層、北に貧困層が住んでるって話だ。ドバンの富裕層とは、暗殺者ギルドの長とか、闇魔道士ギルドのギルドマスター、闇奴隷商人の元締めとかロクな奴は居ないって話だから、心おきなく破壊できるってもんだ。
げっ、何かいろんなものを手にしたどこにでも居るような一般市民たちが、ワーワー言いながら、棒とか、箒とか手にして瓦礫の上を走ってくる。多いな。
「アン、カプ。人間スタイルになれ。戦っていいけど加減しろよ。マイ、ピオンも出来るだけ殺さないように手加減しろよ」
「はーい」
「了解」
マイとピオンが横に並び、人間になったドラゴン娘二人もやってくる。
そして、乱戦が始まると思った瞬間、辺りが静寂に包まれた。
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