森人の国 16
「頼むザップさん、やっぱり出場してくれ」
デルの家で風呂入って飯食って、客間でまったりしていたら、デル父が来るなり土下座した。ちなみに僕は本戦には出ない事になり、エルフ代表は優勝してたイケメンエルフが出る事になった。
「おいおい、俺は人間じゃないから参加出来ないんじゃなかったのかよ」
「ザップさん、私からもお願いするわ」
デルもやって来る。どうしたんだ?
「なんだよ。化け物でも出て来るのか? 本戦にドラゴンでも出るって言うのかよ」
ま、さすがにドラゴンは相撲なんかとらないか。まず、土俵に入んないし。
「さすがザップさん。よく分かりましたね」
「え?」
デル父またふざけてるのか?
「帝国代表で、黄金竜の加護をもつ、現皇帝がやって来るんですよ」
「えー、まじか!」
金色の神竜王ゴルドランの加護を持つ男。帝国皇帝……あ、名前忘れちまった。がやって来るのか? あいつ皇帝なのに何やってんだよ。暗殺してやろうか。
けど、それは大事だ。あいつは強い。ただ単に固くて力が強くなる権能をもってるんだけど、元々の自力が強いから、手に負えなくなる。
「おい、当然、魔法やスキルは無しの勝負だよな?」
デルが首を横に振り答える。
「ザップさんも知ってるでしょ。ルールは単純。まわしのみを身につける事と、パンチ噛み付き金的無し。あと故意にまわしを剥ぎ取ろうとするのも反則。あと、まわしが取れても負け」
と言う事は、皇帝の使う古竜魔法はオッケーって事か?
僕が使える魔法は1つだけ。自分の回りの無生物を分解するというもの。使うと即負けだ。しかも公衆の面前で赤っ恥だ。
「良かったじゃない。楽しくなりそうじゃない」
マイが他人事のように言う。
「じゃ、マイがでるか?」
「いいの? あたしがまわしだけで人前に出て」
「…………」
むぅ、何とも言えない。それはやだ。
「正直まずいわ」
デルにしては焦ってるような。
「もし皇帝が優勝したら、私はあいつを倒せる自信がない」
デル父が口を開く。
「そしたら、この村と帝国は血縁関係を結ぶ事になる。そうなると、多分、ここは帝国の植民地みたいなものになるかもしれん」
「それってデメリットあるのか?」
「いや、わからん。けど、なんか下につくみたいで嫌だ」
「それなら、あんたが出ろよ」
「勝てる訳ないでしょ。伝説のドラゴンの化身ですよ。そんな事言わずに、皇帝をやっつけてくださいよ」
前に一度皇帝はぶっ倒した。けど、その前にグダグダにやられた訳でなんかまだ消化不良気味だ。奴に思いっきり土をつけるのも悪くない。
「分かった。勝てるかどうかは分からんが、その勝負受ける!」
「ありがとうございます。。そこまでデルの事を思ってくれるなんて」
マイが冷たい目で僕を見る。違うって。
「いや、そういう訳じゃない。俺が勝ってももうデルには負けてるから婚約は無しって事で」
しつこくデルを僕の嫁にしようとするデル父をなんとか納得して、報酬は考えさせて貰うという事にした。
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