裏切り者 10
1体のゴブリンが剣を振り上げたまま僕に向かって突進してくる。
後ろにいる弓コブリンは2体とも、次の矢を放つ準備をしている途中で、直ぐに矢が飛んで来ると言う心配はなさそうだ。
矢は1本しか飛んで来なかったから、多分1本は遥の方を狙ったのだろう。
これなら剣ゴブリンと弓ゴブリンの1体ずつで丁度いいか。
「遥、ゴブリン2体、任せていいか?」
と言って遥を見たら、既に剣コブリンを倒した後だった。
「ん?何か言った?」
「…、何でもない」
僕が言うまでもなく、剣ゴブリンを速やかに処理し、弓ゴブリンへと走っていた。
負けてはいられない。
僕も剣ゴブリンを処理し…、と途中まで考えながら、視線を僕に向かって来ていた剣ゴブリンに向けると、既に目の前まで来ていた。
『アヮヮヮヮヮヮ』
僕は驚き動揺を隠せない。
剣ゴブリンは振り上げた剣を、そのまま僕に向かって振り下ろす。
剣がスローモーションのようにゆっくりと僕に向かって落ちて行く。
終わった。僕の人生はここまでか。
僕は死を悟った。
だが、動揺した所為で、足に力が入らず、ゴブリンに驚いた為、思わず後退りしてしまい、小石につまずき尻もちをついてしまった。
ゴブリンの剣は狙っていた僕の身体がなくなり、空を切るようように剣が振り下ろされ地面に突き刺さった。
それも僕の顔の直ぐ横の地面に。
そしてゴブリンも僕の上へと倒れ込んできた。
危なかった。
偶然とはいえ1歩間違えれば確実に死んでいたな。
『神様ありがとう』
僕は心の中で感謝した。
だが、まだ終わっていない。
ゴブリンは、僕の上で突き刺さった剣を引き抜こうと踠いていた。
抜けないのか突き刺さった剣はびくともしなかった。
僕は握っていたナイフで、目の前のゴブリンの心臓辺りを突き刺した。
刺した部分から流れ出る液体。
この感覚は慣れてきたとはいえ、嫌な物に間違いなかった。
でも自分が生き残る為には仕方のないことかも知れない。
敵を殺さなければ自分が死ぬのだから…。
暫くゴブリンは呻き声を発しながら震えていたが、生き絶えたのか、力なく僕に倒れてきた。
まだ終わりではない。
弓ゴブリンが残っている。
僕は剣ゴブリンを横に退かし、顔に付いたゴブリンの液体を拭い立ち上がり弓ゴブリンを見ると遥が2体の弓ゴブリンを切り裂き倒した所だった。
なんと頼りなる奴だろうか。
いやいや、本来なら立場が逆だろう。
せめて僕が弓ゴブリンまで倒して2体ずつで丁度良いだろう。
これではパートナーにもなれてない。
ただのお荷物、役立たず、そう思われても仕方ないことではないか。
遥に追い付きたい。
だが、差は全くといって良いほど縮まらない。
何か遥に恩返し出来る事があれば良いのだが…。
遠くから遥が手招きしている。
早く来いと言っているようだ。
そうまだ先は長いんだ。
地道に進んで行くしかないさ。




