裏切り者 9
階段を一歩、また一歩と降りて行く。降りる度に少しずつ寒くなって来ているような気がする。もしかすると凶悪なモンスターが待ち構えているから、その危険を察知して僕の身体が拒否反応を示しているのかも知れない。
まあ、僕にそんなスキルなんて持って無いから気の所為だと思う。
だいたい、そんな危険な場所にオロチクランが僕達を連れてくる訳ないし、万が一があったとしても勿論、助けてくれるよね。そう思いたい。
そして3階層に降りると、そこは辺り一面、霧の世界だった。
見える範囲は、よくて5メートルくらいか。
目の前は霧に包まれ、辺りがどうなっているのかさえ分からない。
寒くなって来ているような気がしたのは霧の所為か!
霧の所為で辺りは冷たく、体感的にも体温が何度も下がっているような感覚がする。
これでは身体が動かしにくくなり、戦闘にも支障が出るのでは?
こんな状態でゴブリンが襲いかかってきたら…、身体も動かしにくいし、視界も悪い。不意を突かれたら最悪殺られてしまうのではないかと頭の中をよぎる。
取り敢えず、身体を動かして咄嗟に動けるようにしないと。
僕はその場で準備運動していると前に出るのを躊躇っていると思われたのか、
「何してるのよ。早く行くわよ」
と遥が僕の背中を叩いてくる。この状況が分かっていないのだろうか?
それとも無鉄砲なのではないのかと思ってしまう。
「遥、前が見えないのにもう少し慎重になったらどうなんだ?」
「なに言っているのよ、前の階層と変わらないじゃないの」
「お前、なに言っているんだ。見てみろよ!
他の階層と違って前が見えないんだぞ」
「あら、見える見えないじゃないでしょ。
前の階層の時も突然、ゴブリンが現れたんだから、霧だから見えないとか関係ないでしょう。
前回と同じように警戒して進めば同じ事でしょう」
視界が悪いだけではなく、身体を暖めていただけなのだが、確かに遥の言う通りだ。
ゴブリンは目の前に突然出現するから、見通しの良い草原だろうが、目の前が霧だろうが関係ない。
ただ何が有るのかは進んでみないと視界が5メートル程しかないため、下へ降りる階段を探すのにも苦労しそうだし、見えない分、突然、断崖絶壁が現れたりとか、道が塞がれていたりとか、穴があって落ちるとか、罠が仕掛けられてたりとか考えてしまう。
そんな悪い事ばかり考えてしまう。自分がネガティブ思考なのかと自分自身に突っ込みたくなる。
たからと言って、オロチクランのメンバー達も後ろにいるし、ここに留まる訳にもいかない。進むしかない。
単純に考えれば、ゴブリンの出現は1体ずつ増えているから、この階段では3体のゴブリンが出てくるはず。
1体ずつ仕留めるとして残り1体をどうするか、遥が狩りが早いから遥が倒してくれるのを期待したいが、自分もここまでに戦闘は上手くなってきているはず、遥に取られないように2体倒すつもりでかからないと、遥に情けない姿を見せられない。遥に早く追い付き追い越したいんだ。そんな気持ちで遥の横を一緒に歩きだした。
「来たわよ」
遥が声をかけるが、僕には見えない。
何処にいるんだ?
僕には全く見えない。
暫くするとうっすらと影が見え始めた。
ゴブリンだ!
僕が見える前から、遥には見えているなんてスキルだろうか?
聞きたい所だけど、そんな余裕はなかった。
ゴブリンが襲いかかってきた。
コブリンが2体、3体じゃないのか?
遥がゴブリンに向かって走り始めたので、僕もワンテンポ遅れてゴブリンへ向かって走り始めた。
すると『ヒュン』僕の顔の側を何かが通り過ぎていった。
「ハルト、ぼ~っとしない!前をちゃんと確認しなさい!」
遥の叫び声が聞こえた。
さっきのはなんだったんだ?と思っていたら、後ろからゴブリンが2体も現れた。
それも弓を構えながら。
さっきのは弓矢だったんだ。
矢が外れて良かったが、万が一、頭に命中していたら、僕は即死していただろう。
そして今回は合計4体のゴブリンがいきなり現れた事になる。
それも弓ゴブリン、難易度がさらに上がる。
剣を持ったゴブリンもこちらへと向かって来ていたが、弓ゴブリンも次の矢を放とうと準備をしていた。
弓に気を配りながら、まずは目の前の剣ゴブリンを対処しなければならない。




