裏切り者 5
それからの探索は順調に進んでいた。
ゴブリンの現れ方も分かったし、武器を構えたまま、いつでも攻撃出来るように周囲を警戒していれば、直ぐに反応出来るし、ゴブリンもそれほど脅威ではなかった。
ただ、問題なのは僕がゴブリンを倒そうと向かう前に遥が先に倒してしまう事だった。
『また…』
その所為で、僕は攻撃出来ずに、まるで木偶の坊のように突っ立ったまま…、このままでは僕の出番が…。
それにクランメンバーの印象も悪くなるだろう。
心なしか後ろから付いてくるクランメンバーの顔も険しく見える。
「お~い、遥。僕にもゴブリン倒させてくれよ」
「何言ってるのよ。ハルトが早く倒さないから私が代わりに倒してあげてるんじゃない」
「いや、だから僕が倒そうとしているコブリンまで倒すから、僕の出番がないんですが…」
「それなら私より早く攻撃すれば良いんじゃないの?」
それはそうなんだが、遥の方が明らかに攻撃速度が早い。
だから、どうしても同じ間合いから攻撃しても、遥の方が先にコブリンを攻撃している。
それに、僕の攻撃速度が遅いからという理由もあるけど、どうしても攻撃が躊躇して1歩遅くなってしまう。
だってコブリンと言ってもヒト型だよ。
不気味な目や肌色をしているが、シルエットは人間の子供のように見える。
モンスターとは言え人間の子供のように見えてしまう僕には、コブリンを攻撃しようとすると人殺しのように思えて、どうしても手が止まってしまう。
だから、ここは全て遥に任せ、言い訳をしながら現実から逃げようとしていたのだが、
「じゃあ、次、ゴブリンが現れても私は攻撃しないからハルトが1人で戦って」
『え~~~~~~っ』
と心の中で叫んでいた。
不味い、非常に不味い。
戦ってもいないのに、身体中の汗が一気に溢れてくる。
冷や汗という物だろうか?
何とか戦わなくても済む方法を考えなければならない。
「僕1人で戦うには、まだ無理かなぁ~と思うんですけど」
「さっき何て言ったのか覚えてる?
私が先に倒してしまうから、自分が倒せないと言っていなかった?」
「それはそうなんだけど、初めて倒す敵を1人でとは、どうかと思うんです」
「大丈夫、大丈夫。
ゴブリンなんて雑魚よ。
ハルト、あんたでも楽に倒せるって」
「そう言われましても…」
「つべこべ言わずに、ほら行きなさい」
そう言って、背中を叩かれ押し出されてしまった。
そこに運悪くゴブリンが現れた。
目の前に現れたからには戦うしかない。
『嫌だな~』とそう思いながらも手に持つナイフをゴブリンに向ける。
ゴブリンもこちらを威嚇するように、
「ギャギャギャッ」
と不気味な奇声をあげていた。
するとゴブリンは手に持つ木の棒を振り上げて、僕に向かってくる。
動きはそんなに早くない。
本当に人間の子供くらいの走る早さしかない。
それを見ると木の棒で叩かれても、そんなに痛くないのではないのかと考えてしまう。
今も僕なら一方的に攻撃出来るのでは…。
でも、人間の子供に見えてしまう僕には攻撃する事が出来ない。
そんな事を考えていると、
「ハルト、何しているの!
早く攻撃しなさい!」
突然の遥の声に『ビクッ』と反応し、僕の右手に持つナイフがゴブリンの胸を貫いていた。
僕の右手に嫌な感覚が伝わる。
手応え自体は普通に動物を刺した感じと変わらないはずなのに、罪悪感からだろうか?
感覚が敏感になり、いつもより大きく刺した感覚がナイフから伝わり、右手が震えてくる。
ナイフから滴り落ちる青い血。
急所をとらえたのか、ゴブリンは既に力を無くし、向かってきた勢いのまま僕に向かって項垂れてくる。
僕はナイフをゴブリンから抜き、横へと交わす。
ゴブリンはそのまま地面へ倒れ動かなかった。
ナイフで刺した感覚がまだ手に残っている。
ゴブリンを倒した。だけどそれと同時に人殺しをしたように思え、身体中に震えがくる。
そして吐き気も、
「ウッ」
「やれば出来るじゃないの。
どうしたの大丈夫?」
遥が心配そうに覗き込んでくるが、それどころではない。
罪悪感が身体中を巡って、この場から逃げ出したかった。
モンスター退治なんて簡単な事を言っていたが、こんなに大変な事だと思わなかった。
僕には冒険者なんて無理だったんだと思えるほど塞ぎ込み、そしてマイナス思考が働き気力が奪われていた。
応援メッセージありがとうございますm(._.)m
仕事が忙しく書く暇がないのと、途中途中の物語は出来ているのですが、それをどう繋げようかと考えながら、思い浮かばず遅くなってます。
気長に待っていただけると幸いです。




