表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/46

裏切り者 4

扉を過ぎると、目の前には壁に埋め込まれた地下への階段があった。

この狭い空間には地下への階段しかない。階段は大人4人が横1列並べるくらいの広さ、地下鉄への入り口と言った方が分かりやすいかも。


回りは、崩れないようになのか、天井、壁、階段がコンクリートで補強され、壁の足元付近には、光る魔石が埋め込まれ暗い階段を照らしている。これのお陰でまず階段で足を踏み外す事は無いだろう。

下に向かう階段の先は暗くて良く見えない。何処まで続いているのか。


「さあ、行くわよ」


遥が声を掛け先頭切って階段を降り始める。


「はい」


僕も返事を返して、遥の後ろを付いて階段を降り始めたが、ふと、返事をしたものの立場としては逆ではないか?


女性を先に行かせるなんて紳士的ではない。

僕が先に行くべきではないのか?


だが遥の後ろ姿を見ると頼りたい気持ちもある。

レベルも遥が上だし、モンスターを狩るのも上手いし、何より冒険者として先輩だ。


でもそれでも男としてダメだろう。

良い所を見せたいと言う気持ちもあるし。

そう思って前に出ようとしたが、時はすでに遅し、周りが明るくなってきたと思ったら、あっという間に地下一階に着いてしまった。

そこまで長い階段ではなかった。

段数は30段くらい、上から見た時は真っ暗闇で、僅かに階段を照らしていた光しか見えなかったのに、今、目の前には明るい景色が広がっていた。


狐にでも騙されている気分だ。


そこは広い草原だった。

所々、木が生えている所もあるが、見える範囲、低い草に覆われ遥か遠くまで続いているようだった。


ダンジョンとは不思議な物だ。

地下なのに、回りは明るいし昼間のようだ。風が吹いているし、空気が濁っている訳でもない。

密閉された空間なのに、どうなっているのか、改めて不思議と感じてしまう。


階段から降りて草原へ何歩か歩くと、360度見渡す限り草原が続いている。

後ろを振り向くと、先程、降りてきた階段の出口が、草原に突如出来た異空間の扉のように見える。


この草原は何処まで続いているのだろうか?


そう思っていた所に、後ろからやって来た団長達が姿を現した。


「ハヤトくん、そんなにキョロキョロしなくても、ダンジョンなんてどこも変わらないだろう」


確かに団長の言う通りなのだが、ここまで広いのは初めてだ。

だってダンジョンの壁が見渡す限り見えないんだから。


「こんなに広いダンジョンって、初めてで、想像していた物より凄いです」


「ハヤトくん、見た目に騙されちゃダメだよ」


「それはどういう事ですか?」


「ほら、ここを触ってごらん」


団長は、降りてきた階段の出口、草原の入り口の横の空間を指差ししていた。

僕は言われた通り、恐る恐る何もない空間に手を差し伸べると、


「え!」


何もない空間なのに、何か壁のような物がある。

景色は先まで続いているのに、見えない壁の所為でそれ以上先へは進めない。


「これは、いったい?」


「分かったかい、ハヤトくん」


「これはどういう事なのですか?」


「もう、分かんないの?

ハヤトはダメね~、もう少し臨機応変に対応しないと」


笑いながら遥が肩を叩いてくる。


「そこまで言うこと無いだろう。

分からない物は分からないんだから」


「ハヤトくん、見た目に騙されちゃダメだと言うこと。

遠くまで続いているように見えて、実はそこはダンジョンの端、そこは壁だからそれ以上は行けない。

壁もそうだけど、空も何処までも続いているように見えて天井があるから、気付かずに突っ込んだら、怪我では済まされないかもしれないから注意が必要だよ。

まあ、地面との境目を良く見てごらん。

分かりやすいから」


団長に言われた通り地面と見えない壁の境目を見てみると、そこだけ僅かに草が生えていなかった。

小さな獣道のように横に丸みを帯ながら左右に続いている。


それから考えるとこのフロアもドーム状の形をしているのだと推測される。


「なるほど」


「分かったかい?」


「はい、何となくですが」


「本当かな?」


遥が、いたずらっぽく割り込んでくる。


「本当だよ」


「まあ、まあ、そのくらいにして、いよいよ二人でゴブリンを倒してもらうけど、ここは遠くから見えなくても、近づくとゴブリンが突然、現れるというか見えるようになるから気をつけて、フォローはするから頑張ってくれ。

まずはゴブリンを倒しながら地下2階への入り口探しだ」


「分かりました~」

「はい」


僕と遥は、早速、草原を歩き始めた。

少し離れて団長達が付いて来てくれている。

見渡す限り何も無い草原。

隠れる所も無いのに、ゴブリンの姿は見ない。


本当にゴブリンはいるのだろうか?


まずこんな所でゴブリンに奇襲されることは無い。ゴブリンが見えたら武器を構え迎撃体勢をとれば良いと考え、少し警戒が緩くなっていたのかも知れない。


突然、目の前の空間が歪み、ゴブリンが襲ってきた。


突然の出来事に僕は慌てふためいた。

初めてのヒト型。

あの大きな目、薄気味の悪い顔、あの肌の色、手には丸い棒が握られている。


テレビで見た時とは違い、目の前のゴブリンは不気味で恐怖さえ感じる。


突然現れたゴブリンに対して、僕は頭が真っ白になり呆然となっていた。


それに対して遥は、ナイフを2本懐から取り出し、素早くゴブリンに投げ、頭と胸に命中させ、ゴブリンを倒した。


『流石、遥、凄いな』と言いたい反面、僕は何やっているんだという感情が浮かんでくる。


「何、呆然としているのよ。

このくらい、ちゃんと対処してよね」


遥が少し怒り気味で話かけてくる。

ごもっともだから、返す言葉もない。


「まさか突然、出てくるとは分からなかったから」


「は~あ、団長の言葉、聞いてなかったの?」


「聞いていたけど、あんな風に出てくるなんて想像もしてなかったんだよ。

遥は慣れているかも知れないけど」


「私だって、ゴブリンがあんな風に出てくるなんて分からなかったわよ。

それでも警戒していれば、対処できるでしょ」


「警戒はしてたけど、突然の事で何も出来なかったんだよ」


「そんな事言っていてどうするの?

ゴブリンを倒さないと、私達が殺られるのよ。

緊張感が足りないんじゃない?」


確かにそうかも知れない。

遥の言うことに間違いはない。

僕はそれ以上、反論する事は出来なかった。


「まあ、分かったなら、いつでも攻撃出来るように武器くらい構えておきなさい。

次、同じ事、やったらお尻を蹴っ飛ばすからね」


「ああ、分かった」


冒険者は荒くれ者が多いと言われるが、そんな中でやってきた遥も女性の割に少し怖いと思ってきた。

今度は失敗しないように、そして尻を蹴られないように、武器を構え、もう一度、気を引き締め直した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 私は最初から現在の章まですべての章を読みました。私はこの小説が好きです。最後まで書き続けてください。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ