裏切り者 2
車で二時間、かなり遠くまでやって来たようだ。
朝も暗いうちから、叩き起こされ、直ぐに着替え朝食も食べないまま、車に乗せられ出発。
僕は車の心地よい揺れに、直ぐに眠ってしまっていた。
というか、ベッドから起きて車に乗るまでの事を良く覚えていない。
僕の頭の中は、まだ眠ったままだったのかもしれない。
そして、目的地に着いた所で起こされた。
車から覗いて見ると、いつの間にか地面は舗装路では無くなり、荒れた山道となっていた。
よくこんなゴツゴツとした道で眠っていられたなと、自分自身で驚いてしまう。
ここは何処?
辺りは少しは明るくなって来ていたが、まだ周りは薄暗く何が有るのか良く分からない。だが、どうやら見える範囲で周りには大きな大木しかないので、森の中だということは分かる。
「さあ、着いたぞ。降りて降りて」
「ここは何処ですか?」
「それは秘密だよ」
まあ、携帯PCで地図が見られるから、自分で調べるけど…、そう思って自分のPC携帯を取り出すと、
「おっと、ハルトくん。
この場所は秘密の場所だから、ここの場所は調べたらダメだよ」
僕が操作するのを見て団長が声をかけてきた。
「えっ、そうなんですか、すいません」
「だから、秘密だって団長が言っているの聞いてないのかよ」
「すいません」
健吾くんが怒ってくる。
ダンジョンでは、打ち解けあってお互い信頼が生まれて、優しくなったのに、今日は何故か機嫌が悪いな。
「ここは、あるクランが管理しているダンジョンだけど、今日と明日と貸し切りにして貰ったから存分にダンジョン攻略が出来ると思うよ」
「貸し切りですか。でもどうしてここなんですか?」
「まあ、共有されているダンジョンは沢山あるけど、人が多くてなかなか狩りが楽しめないだろう。
君達にはこれからの冒険者生活の為に何か学んで欲しくて、だから今回はここのダンジョンを僕達だけに貸切りにして貰ったんだ。
と言っても、ドロップした品の5割は渡さないといけないけどな」
「半分もですか!?」
「何よりもまず経験する事が大事だけど、この人数だしいつもの倍以上狩れば元は取れるだろうから、そのつもりで覚悟するように」
「倍…」
倍といったら、何匹狩るつもりなんだろうか?
兎やトカゲとか狩っても高が知れているし、それとも何か元の取れるモンスターがいるのか?
「早速、ダンジョンに入ろうと思うけど準備はいいか?」
団長の掛け声が聞こえてきたが、いいかと言われても、何が必要な物か分からないし、自分の持ち物なんて、ほとんど何も持たないし、僕なら何時でもオッケー。
いや、いざダンジョンに入るとなると緊張の為なのか生理現象が…、トイレに行くか、ダンジョン内ではトイレに行きたくても行けないかもしれない。
トイレをするにも皆から離れないと恥ずかしいし、用を足している時にモンスターに襲われたら、どうしようもない。
団長に許可を受けて近くの山の中へ向かった。
あとで遥にダンジョン内でトイレはどうするのか?と聞いたら「美女はトイレなんか行く訳ないでしょう」と。
そんな訳あるか!と一人で心の中で突っ込んでいた。
「それじゃ、出発するよ」
団長の声で皆、荷物を抱えて出発する。
顔の表情も、先程までと違って凛々しく見える。
団長は、森に続く細い獣道を1人で進んでいく。
その後を団員達が。僕はその後を団長達の跡を追って付いていく。
太陽も昇り始め、周りの景色も分かるようになってきたが、周りには大きな大木しか見当たらない。鬱蒼とした森の中にいるということしか分からなかった。
ひんやりとした空気が流れ、ちょっと肌寒いような気がする。
もう1枚、何か羽織った方がいいかと思いつつも、皆はもう待ってくれないだろうし、歩けば身体も暖まるはず、そうおもいながら我慢する事にした。
「よし、着いたぞ」
団長の声に僕は少し安堵していた。
歩いた距離は約10分ほどだったが、団長達は何も言わず歩き始めたので、どのくらい歩くのかを聞いていなかった。
1時間?2時間?まさか半日も歩くということはないと思うけど…、でも朝早く出発したからな。
そんなことを考えながら歩いて来たので、心理的にかなりキツかった。
このまま歩いていたら、多分、心理面から体力を奪われダンジョンに着いた頃には歩けなくなったのではと想像してしまう。
だから、たった10分と言えども僕には大きな負担であって、着いた途端に座り込んでしまった。
「ふぅ~」
「ハヤト!何座り込んでるんだ!
今からダンジョンに入ると言う時にお前は!」
「はい、すいません」
怒鳴ってくる健吾さん。
直ぐに謝って立ち上がったが、暫くガミガミ言われた。
そんなに怒らなくてもいいだろう。
こっちはまだ見習いの冒険者だからさ、と言いたいけど、今日は特に機嫌が悪そうだから言わずに、ただ聞き流していた。
「もう、その辺りで良いだろう」
団長さんの優しい言葉で説教は終わった。
まだ耳がキンキン言っているようだ。
「ほら、あそこがダンジョン入り口だ」
団長から言われた方を見ると大きな岩と岩の重なった所に出来た人ひとり分通れるような狭い亀裂が出来ていた。
「あれはただの割れ目では?」
「ここは分かりにくいが、あれがダンジョン入り口なんだよ。
まあ、入って見れば分かるよ」
そう言うと団長は先頭きって入っていく。
他の人もその後を付いていくが、僕はまだ半信半疑だった。
だって見た目がダンジョンらしくないし、何処にでも有りそうな岩の割れ目だし、もしかして僕をからかっているのかと思ってしまう。
皆が入っていく中、ここに取り残されるのは嫌なので、仕方なく後を追って入る事にした。




