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長野の実家

家族構成が分からなくなったので

父、泰一郎

母、恵美

妹、璃子

主人公、ハルト

の4人家族という設定にしました。

漸≪ようや≫く長野駅に着いた。

汽車と言っても、今は魔石を使った電動モーター。

昔の汽車に比べれば断然速い。

飛行機やリニアモーターカーに乗れば、更に速いのは分かっているが、そこまで急いで行く事もないし、なんと言っても貧乏人の僕にとって料金が高い。

なので、僕は汽車で長野駅まで行く事になった。


汽車に乗っても大阪から長野まで2時間で行けるんだから十分だろう。

2時間なんて僕に取っては、寝て起きたら着いていたくらいの感覚しかない。

ただ問題なのは一人なので、起こしてくれる人が居ない。

寝過ごすと長野駅の先まで行ってしまうから、長野駅の到着時間を確認し、それまでには起きるように目覚まし時計をセットしていた。


そして無事に目覚まし時計が鳴り、起きる事が出来た。

目覚まし時計をセットしていなかったら、間違いなく寝過ごす所だった。


それにしてもまだ眠い。

良い気分で寝ていた所を突然起こされたので、目覚めも最悪だ。

汽車を降り長野駅を出ると直ぐの所で、家族が待っていた。


「お兄ちゃん、遅い!」


と少し頬を膨らませながら文句をいう言う妹の璃子≪りこ≫


「遅いわけないだろう。汽車は時間通りだ」


「も~う!、30分は待ったわよ!」


せっかちな妹だ。


「早く乗れ、行くぞ」


「うん」


短い言葉に父親の泰一郎とは、まともな会話をしたことがないなと改めて思った。

僕の回りとの会話の無さ、協調性、引きこもりがちな所など父親ゆずりじゃないのかと考えてしまう。

もう少し会話や回りとのスキンシップがとれていれば、また違った人生を歩む事が出来たのではないかと思ってしまうが、自分の性格だから仕方ないと考えるしかなかった。

運転手は父の泰一郎、助手席には母の恵美、後ろに僕と妹の璃子が座った。

長野駅から更に1時間ちょっと、僕にとっては、まだ眠かったので車に乗ると直ぐ眠りにつき、起こされるまで眠っていた。


「お兄ちゃん、お兄ちゃんってば」


「んんん」


「もう直ぐ集落に着くよ」


「ああ、分かった」


まだ眠い、寝たりないが、もうすぐ到着するなら起きないと、それに寝すぎても夜寝られなくなるし…。

身体はシートに預けたままで、うっすらと目を開けて外の景色を眺めていた。


本当に何もない。

見えるのは木々、木々、木々、森の風景だけ。

自然豊かなのは良いけど、これといって良い所が見つからない。

路面は舗装されているので、そんなに揺れを感じないが、所々で舗装が割れたり傷んだりしている所で、少し車が跳ねるが特に問題ないくらい乗り心地は悪くなかった。


今、向かっているのは山奥にある集落でバスも来ないので、車がないと不便な所だ。

当時は約100世帯が住んでいたが過疎化が進み、今は僅か数軒のみしか住んでいないだろう。

あの頃は小学校に通うにも集落に小学校がなかったので麓の町まで行かなければならなかったがバスなど来るはずもなく、小学校に通うにも母親に車で送り迎えしてもらっていた。

歩くとなると小学生にとっては険しい山道。それにいろんな野生動物が出て、とても危険だった。

なので、車で送ってくれていたのだろう。

車でも30分ほどかかっていたので、小学生の足で歩けば1時間以上かかるだろう。

冬の時期になれば、まだ辺りが暗い朝早くから出掛けるし、帰りも日が落ち暗闇の中。

途中に電灯が有るわけないし、そんな中を小学生が歩ける訳なかった。

町から離れた森の中は、光もなくとても静かで暗闇の中、鳥や動物の鳴き声だけが響き渡っていた。

それを子供ながらに車の中で、怖いと感じながら耳をふさいでいた記憶が甦る。

まあ、冬はほとんど豪雪で家から出ることなんて出来なかったけど。


そういえば、その時から友達と遊ぶ事はなかったのかも知れない。

学校が終われば、母親が車で待っていたから、部活もしなかったし、放課後グランドで遊んだり、友達の家に遊びに行ったりしなかったから、友達と遊んだ記憶がなかった。


そんな中、通りすがりの神社を見て思い出す。


そうそう、遊ぶ所がないから、いつもここで遊んでいたな。

集落で唯一、何処にでも有るような神社で、道沿いから九段の階段を上ると大人二人が互いに行き来できるほどの朱色の鳥居をくぐると広い境内。

そこには阿吽の狛犬、狐、お坊様、閻魔様、その他色々な像が置かれ、一番奥に大人6人くらいしか座れない小さな本堂が立っていた。


神社の横の方には何故か墓地もあった。

子供の頃は気にならなかったが、今思えば何故、神社と墓地が隣り合わせなんだと疑問に思ってしまう。


小さい時は、妹と二人でよく遊んでいたな、いや、もう一人いたな。

名前は忘れたけど、妹と二人で遊んでいると必ずやってくる同じくらいの年の女の子。

集落の子だと思うけど、その子の家に遊びに行った記憶もないから、何処の家の子かも分からなかった。

その子は今どうしているだろうか?

集落を出る時、別れの挨拶も出来なかったし、僕達が居なくなった事を知らずに神社で待っていたのではと考えてしまうが、集落の子なら誰かが伝えてくれるだろう。


そんな思い出の神社を見ながら、今は誰も手入れをする人が居ないのか、綺麗な朱色をしていた鳥居は、色が剥げ落ち、本体の木がむき出し状態で少し腐りかけている。

境内も誰も来ないのか草が生い茂り、像や本堂が通り道から見えない状態だった。


そんな光景を僕は車の窓越しに妹と二人で見つめていた。


そして、暫く進むと懐かしい家が見えてきた。

平屋一軒家だったが、4人で住むには広すぎた。

昔の家だからなのか、襖≪ふすま≫で仕切られた部屋が何部屋も有り、その襖を開けると広い部屋に変わる。

今の家の4倍くらいの広さはあるか?

広い土間に広い縁側、家とは別に倉庫が二つもあった。

僕にとっては、掃除するのが大変な家としか記憶がない。


今は見える玄関周りの1面に、白黒の幕で覆われていた。

この辺りの風習なのか?

庭も広いので車も何処に止めても問題ない。

既に何台か止まっていたが、適当に空いているスペースに父は車を止めた。


僕達が来たことに気付いたのか、1人の男性が近寄ってきた。


「泰一郎兄さん、遅いよ」


見たことある男性、どうやら父の弟のようだ。


「悪い悪い、ちょっと寄り道したからな。

それでお坊さんは?」


「もう終わって帰ったよ」


「そうか…」


「まあ、中に入って線香でもあげてよ。

ちょっとうるさいかもしれないけど」


「分かった」


そう言うと父は中に進んでいった。

その後を母と僕、妹と続いていく。


「お兄ちゃんが遅かったから、間に合わなかったのよ」


「え~、俺の所為?」


遅れたのって僕を迎えに来た所為?

それなら迎えに来なくても、どうにかして来たのに…。

いや、無理だ。こんな山奥、バスはないし歩くには遠いし、タクシーだといくらかかるんだ?

そんなお金の余裕ないから、結局、迎えに来てもらうしかないか。


玄関を入ると無駄に広い土間があった。

ここでおじいさんがよく作業をしていた記憶が有るが、何をしていたかまでは記憶になかった。

土間から一段高い板張りの廊下に上がり、障子戸を開けると十人くらいの人達が宴会をひらき騒いでいた。


その奥はおじいさんの祭壇と柩が置かれていた。

普通、葬儀の場合、静かに悲しむものじゃないのかと少し騒がしさに苛立ちを覚えたが、後でこの地域の葬儀は悲しむのではなく、笑って送り出すものだと母から聞いた。

これも風習なんだろうけど、最初に言っておいて欲しかった。地域でそれぞれ違い過ぎて、怒鳴って注意しなくてよかった。

僕が逆に非難される所だった。


線香をあげ僕達は宴会に参加というか、一緒に夕食をとった。

名前は知らないが見たことのあるおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんばかり。

この集落の住人のようだ。


「また、集落の住人が居なくなったな」

「次は私の番かしら」

「そう言う奴が一番長生きするんだ」


冗談交じりの会話が進んでいた。


「こんな時にしか皆、顔合わせないからな」

「この顔ぶれも年々、少なくなってきたな」

「次も見ることができるかどうか」

「そんなつまらない話より、最近、身体の調子はどう?」


それから、たわいもない話で盛り上がっていた。どうやらここに集落の全員が集まっているようだ。

話の中でこの集落の事も少し分かった。

なんでもこの集落は武田信玄のゆかりのある人が作った集落らしく、祖先を辿ると武田信玄に繋がるとか繋がらないとか、僕にとっては実際会うことは出来ないので、繋がっていようがどうでも良いことで、ただこの集落、名字が武田ばかりだなと思っていたが、実際、遠い親戚だらけと言うことになる。

だけど集まっている人数を見る限り、集落に残っている人は僅かのようだ。

僕も話の流れで、神社で遊んだ女の子の事を聞こうかと思ったが、何処の子かも分からないし、家で留守番しているかも…、もしかすると僕達みたいに既に家族で集落を離れているかも知れないと思い聞くことはしなかった。


「それでハルトくんは冒険者になったんだって?」


話かけてきたのは、父の弟の義治さんだった。


「はい、まだなったばかりなので新米ですが」


「よくそんな危ない仕事を兄さんが許したね」


「許した訳じゃない。自分で決めて出ていったんだ」


父が口を挟んできた。

僕が冒険者になると言った時、何も言わなかったじゃないか。

元々、無口な父だから何も言わなかったのかもしれない。

本当は反対だったのかな?

聞きたかったが、今更聞けなかった。


「まだ、新米なら農家になるのはどうかな?」


「農家ですか?」


「そうそう、ほらこのじいさんの土地、腐らすには勿体ないじゃないか。

自然一杯だし、この家に住んで…」


「そう言うなら、義治。お前が住めば良いだろう。

今、借りアパートなんだろう。

丁度いいだろう」


「兄さん、町から何時間かかると思ってるんだ!?

通勤が大変だろう」


「仕事辞めて、農家になれば良いじゃないか」


「今の仕事は好きでやってるんだから辞める訳ないだろう」


「それならハルトにも、そんな事、言うんじゃない」


父は僕を庇ってくれたのか?

確かにここで農家として暮らすのも良いかも知れない。

だけど、ここで暮らした事のある僕は不便で有ることには違いない。


町までは遠いし、無駄に広い家、冬になれば家から出ることも出来ず、毎日、屋根の雪降ろしをしなければならない。

故郷だから離れたくないという心境が働いたのかは分からないが、よくおじいさんは、ここでやってこれたなと感心してしまう。

それにここに住むと出会いがない。


僕は彼女が欲しい。結婚もハーレムも作りたい。

ここに住んだら独り身のまま死んでしまうような気がする。

こんな不便な所に来たがる女性は少ないと思う。

だから、僕はここに住まない。


僕はここに住まないと言っておかなければと思ったが、既に父と弟の義治さんは酒の飲み合いになっており、酔っぱらっている状態。

多分、今、話してももう記憶がないだろうと思い、僕はそそくさと部屋を後にして、自分達に与えられた寝室に入って休んだ。


次の日は葬式、少ない人数だが、皆、眠そうな顔をしていた。

通常なら、いつ誰が来てもいいように、誰かが起きていればいいはずだが、多分、ほとんどの人が昨日から飲み続けて今に至っているのでは?と思う。


眠いのか、飲みすぎなのか、沈黙状態が続いたまま、お坊様のお経が終わり、町の火葬場へ。

そしてまた戻ってくるという無駄に長い距離、長い時間がかかってしまった。


葬儀も終わり、後片付けやおじいさんの物を遺品整理。武田家ゆかりの地なら何か骨董品が出てくるのではないかと期待しながら片付けていたが、金目の物はなく、あっという間に一週間が過ぎてしまった。

この家は勿体ないけど結局、誰も住まなくなり、周りの建物のように朽ち果てていくだけだろう。

自分が育った家だから、何だか寂しい気持ちになってしまうが、自分には今の生活がある。

仕方がないと割りきるしかない。

もし、冒険者として無理そうだったら、この家に戻って住む事もいいか。

それは最終手段だ。


僕は冒険者だ。一週間も過ぎてクランのお試し期間も終わってしまった。

どうするか決めないといけないが、遥に連絡をとると「決めるのは戻って来てからでいいよ」と簡単な返事だけ。


クランの人達には遥が伝えてくれているから問題ないとして、今後どうするか考えなければならない。

戻りながら、他のクランを探すか?オロチクランにするか?皆、人柄は良いんだけど盗人呼ばわりされたしな、居ずらいよな。ずっとその事が頭の中で繰り返し悩んでいた。

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