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過去を振り返る

僕は1人列車の中に座っていた。


冒険者としての殺伐とした戦いを忘れ、今はのんびりと外の風景を眺めていた。


『ゴトンゴトン、ゴトッン。ゴトンゴトン、ゴトン』


線路を走る音しか聞こえない。

冒険者なんてしなくても、普通の生活をし、今のように列車に揺られながら、自由気ままに旅をするのも悪くない。

そう思えてくる。


だが、国からの支給だけじゃ暮らすのに精一杯だし、旅行に行くなら生活費を切り詰めるか、働くしかない。


その結果、結局は働かなければならない。

今更、僕なんかが入れる会社があるだろうか?

職種を選ばなければ、入れる所は有るかも知れない。

だけど、給料が安かったり、自分に合わない職場だったり、職場環境が悪かったり、嫌な上司に胡麻すりながらペコペコ。


そんな事、僕はやりたくない。

だから、1人でもやっていける冒険者の道を選んだんだ。

まあ、最初は駆け出しの下っ端だから、先輩達にはペコペコしないといけないかも知れないが、今にそんな先輩達より強くなって、日本中に、いや世界に名を轟かせる冒険者になるつもりだ。


その時までは我慢の時だ。

今に僕の名を忘れられないようにしてやる。


という野望は有るが、まだまだ先は長そうだ。

死んでしまったら終わりなので、焦らず行こうと思う。


さて、僕がなんで列車に乗ってるのかって?

それは僕のPC携帯にかかってきた一本の電話の所為なんだ。


それは父からの電話だった。

父の父さん、僕の祖父。

おじいちゃんが亡くなったという訃報の連絡だった。


父さんは仕事の関係で、度々、転勤がよくあった。

その為、今の家に落ち着くまで、長野県にあるおじいちゃん家にお世話になっていた。


おじいちゃんの家は人里離れた山奥の集落にあり、車が無いと何処にも行けないような場所で、その頃は父さんだけ職場近くの安いビジネスホテルを借り、週に一度、帰ってくるという生活を行っていた。

だから当時、家に住んで居たのは祖父、母、僕だけだった。


祖母は、僕が物心つくまえに早くに亡くなったらしい。

だから、僕の母が祖父の介護の世話をする為に住んで居たんだろうと思うが、あの頃の祖父に対する記憶といえば、介護の必要は無く、とても元気で毎日近くにある畑に出掛けていたというイメージしかない。


その記憶も小学6年生までで、中学に上がると同時に今の家に引っ越して来た。

祖父も一緒に連れて行こうと親がしていたみたいだが、祖父は頑固として住んでいた土地を離れたくないといい、それから離ればなれになった。


思えば、その時から祖父には会っていなかった。

父さんの話では、同じ長野県に住んでいる父さんの兄弟が、ちょくちょく様子を見に行っていたらしいが、おじいちゃんが亡くなった時は、近所の人が報せてくれたらしい。


亡くなる前に一度くらい顔を見せれば良かったと僕は思ったが、それ以上に父さんは自分の親だから、いろいろ後悔しているのではないのか?

そう感じている。


父さんと母さん、妹は家から車で直接向かって、僕とは長野駅で待ち合わせすることになっていた。


大阪から長野の向かう方法は、巨大な原初の穴を避けて、北側と南側のコースに別れる。

今、汽車が通っているのは北側のコース。

穴の周りには高い壁が設置され、比較的安全に真っ直ぐ行ける道が出来ていた。

巨大な穴の北側は、充分な土地が残っていたから、道も作りやすいけど、南側は巨大な穴が海まで到達していた。

その為、駿河湾に巨大な橋を掛け、通行出るようにしている。


そして不思議な事に、穴の南側は海の水が大量に滝のように流れ込んでいるのに、穴が海の水で溢れる事もなければ、海の水が減ったという記録もない。

研究者の見解は流れ込んだ水が、何処かでまた海に戻っているのではないかという憶測もあったが、誰も穴の最深部まで行っていないので謎に包まれたままだ。


なので南側の海は穴の中に一緒に吸い込まれる可能性があるので、船の通行は禁止になっている。

ただ、巨大な橋から見る景色は、陸地には高い壁が連なっているが、海の部分は、流れが速すぎて壁を作ることが出来ず、唯一、外から穴を覗けるスポットとなっていた。


政府も水の流れが速すぎてモンスターもそこから這い出て来ることは出来ないということで、そのまま放置されていた。


あと通行出来ないのは、穴の上。

飛行機は上空を通る事が出来ない。

これは万が一の為。見えないバリヤがある為、穴の上空は飛行出来ず、避け通る航路になっている。


なので、汽車で景色を見ている僕は穴を見る事は出来ない。

ただ遠くの方に見える高い壁だけが見えるだけだった。

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