一人きりのダンジョン 8
どうする?
普通に考えれば、外からの攻撃が効かないなら、内側からと考えるが、僕の武器と言ったら、このナイフしかない。
大トカゲが口を開けた所へ、ナイフを突き刺せば攻撃が通用するか?
でも、その時は口の中に入れた僕の腕も、大トカゲに噛まれて失くなりそうだ。
腕を犠牲にしてまで、倒す価値はない。
それなら、まずは目を攻撃するか?
視界を奪えば何とかなるはず。
よし、目を狙おう。
目だ!目だ!目だ!
僕はナイフを構え、大トカゲの目の一点だけを見つめていた。
「おい、おまえ!
そんなトカゲの目ばかり見ていたら、狙っている所、まる分かりだって~の
バカじゃね~のか?」
「えっ!?」
そんなに目を狙っていた事が、傍≪はた≫から見てもバレバレだったのだろうか?
健吾さんの位置から距離が離れているが、それでも僕が目を狙っていると分かったのだから、そう言う事だろう。
「もっと考えて攻撃しろ!
もし知能の高いモンスター、もしくは人間だったら攻撃を逆手に取られて、おまえが殺られるんだぞ!
一点だけを見るな!全体を見るんだ!」
「はい!」
モンスターはともかく人間が攻撃してくる事など有るのだろうか?
いや、何を言っている。
忘れたのか?最初のダンジョンで置き去りにされたことを…。
直接、手をくだしていないから違うと?
戦えない僕は、あのままモンスターの餌食になるところだったんだ。
弱い奴から金品、レア物を奪って殺す。
ダンジョン内では何が起きてもおかしくない。
それなら誰も信用するなということか?
いや、信頼出来る人を探さなければならない。
それが遥なのか?
今はまだ分からない。
もっとお互いの事を知らなければ、信頼出来るのかどうか分からない。
パートナーなんだから、もっと信頼しなければならない事は分かっているが、人との付き合いが苦手な僕は、最初のクランで裏切られたし、ちゃんと見極めなければという心理が働いているのかも知れない。
「何してる!トカゲは目の前だぞ!」
健吾さんの言葉で我にかえった僕は、目の前まで迫っているトカゲにビックリしてしまった。
「うわぁわわわわわ」
自分でもどこから声を出したのか分からないくらい動転していた。
トカゲとの距離、1メートル。
猛突進してきたトカゲは、そこで高くジャンプして僕に向かって襲いかかってくる。
『トカゲって飛べるんだ』
などと、呑気に考えている場合じゃない。
空から僕めがけてトカゲが降ってくる。
突然の事で、どうしたら良いのか分からない。
どうする?
逃げるのか?戦うのか?
余裕のない選択にどうしようもなく、恐怖のあまり目を閉じ、トカゲののし掛かる重さに耐えられず、その場で蹲≪うずくま≫ってしまった。
重い…。
トカゲの重量がのし掛かり、動く事が出来ない。
トカゲは動こうとしないし、もしかして僕は食べられたのか?
しかし、痛みはないし、トカゲの重さだけが僕の身体にのし掛かる。
『ポタッ、ポタッ、ポタッ」
僕の身体を通り、何かが流れていく。
ベタベタするし、この匂いは血の匂いか?
トカゲの身体に押し潰され、回りが見えない。
真っ暗闇。
これはトカゲの身体の中なのか?
その割にはトカゲの重量が僕の身体にのし掛かっているし、まさか、この血は僕の血なのか?
まさか、致命傷を受けたから、痛みを感じないだけで、僕の身体はトカゲによって引き裂かれたのか?
だけど、その割にはトカゲが重い。
「お~い、ハルト~。大丈夫か?」
まるで遠くの方から聞こえてくるような健吾さんの声だった。
「動けないんです。助けてください。
まだ死にたくないんです」
大きな声で叫びたかったが、トカゲが重すぎて僕の身体は圧迫され声が出ない。
もうすぐ死ぬからかも知れない。
僕の囁く声は健吾さんには届いていないだろう。
「待っていろ、すぐ助けるから」
そう言うと、圧迫されていた僕の身体は、トカゲが退かされたお陰で解放された。
太陽の光が眩しい!
迷宮だから太陽はないけど、暗闇から明るい場所に出てきて、ホワイトアウト。
眩し過ぎて、回りが確認出ない。
「まあ、危なっかしいけど一匹倒したな」
えっ、倒した?
僕が殺られた訳じゃないの?
「襲われた所を健吾さんが助けてくれた訳じゃないの?」
「何言ってる。トカゲを見てみろ」
僕は回りの光に慣れない目を一度擦り、トカゲを見てみると、舌を出し、仰向けになって死んでいるトカゲを見つけた。
そして、そのトカゲの腹には一本のナイフが刺さっている。
間違いなく僕が持っていたナイフだ。
そこから大量の血液が流れ出ている。
僕は自分の身体を見ると血まみれだった。
僕が殺られて僕の血が流れた訳ではなく、どうやらトカゲの血液だったようだ。
「よくやった」
珍しく健吾さんが誉めてくれる。
「よく気づいたじゃないか、トカゲの弱点が腹だと言うことに。
トカゲの外皮は固くて刃物は通りにくいが、ひっくり返して腹を刺せば、簡単だぜ。
おまけに心臓に1突きで倒すとは、よく考えたじゃないか」
健吾さんが誉めまくってくれるから、『いや、いや、たまたまですよ』とは言えず、僕は笑って誤魔化していた。
だけど次からトカゲを倒す時どうしようかと思っていた。
ひっくり返せば簡単だというけど、どうやってひっくり返す?
僕には無理だろう。
遥と二人なら出来るか?
でも今は1人だし…。
そんな事を考えていると健吾さんが、
「おまえの身体も血まみれだし、時間も時間だし戻るとするか?」
なんというタイミング。
自分のPC携帯を見ると3時を過ぎていた。
ほんの1時間くらいかと思っていたが、時間の過ぎるのは早かった。
道理でお腹が空いているはずだ。
団長達ももうすぐ帰ってくる頃という事なので、今日の狩りを終わり地上へと戻った。
そして、一本の電話がかかってきた。
簡単と




