一人きりのダンジョン 7
戦うしかない。
それは分かっているが、実際、目の前に迫ってくる大トカゲを見ると、その迫力にどうしても腰が引けてしまう。
健吾さんは、「ただのトカゲだ」と言っていたが、僕にしてみれば猛獣。ライオンやチーターなどの狩る側の動物で、僕はただ狩られる側の動物だと認識してしまう。
あまりにも恐怖に逃げ出そうとした時、
「何やってる!
そんなんじゃ、冒険者になることなど出来ないぞ!」
そう叱咤してくる声が聞こえてくる。
勿論、健吾さんだ。
「モンスターだから、怖いのは当たり前だ。
ただ、倒せるモンスターなのに、恐怖のあまり逃げ出してしまったら、殺られてしまうだけだ!
だから逃げるな!戦えー!」
「そう言っても、あんな大トカゲ。どうやって戦うんですか?」
「俺に聞くな!」
「でも…」
「泣き言は言うな!
高がトカゲだ。倒せないモンスターと戦わせないから、安心して戦え」
「分かりました」
そう言うと僕は、たった1つのナイフを構えた。
先程と比べ、妙に気持ちが落ち着いたような気がする。
健吾さんが監視役と言うことではなく、言い方からして教育係としてきちんと僕を見ていてくれた事が、気持ちに余裕を持たせてくれたのかも知れない。
倒せないモンスターとは戦わせない。逆に言えば今の僕でも十分倒せると言うことだ。
気の所為かも知れないが迫ってくる大トカゲも、先程までの恐怖が薄れたような気がする。
だが、今更ながらに一人で戦う事がなんと言う孤独感、恐怖感を感じるんだろう。
狩りをする時はいつも近くに遥がいた。
遥が居ない狩りは寂しく、どんなに詰まらない狩りなのか、もしかしてこれが恋なのか?
いや、そんなはずはない。
ただのパートナーだ。
遥に頼っているだけだ。
何かあった時、助けてくれる。
例え健吾さんだとしても、もし万が一何かあったら、多分、助けてくれるはず…、その安心感が今は有る。その気持ちを恋と勘違いしているのかも知れない。
それに、いきなり好きだと遥に言ったら、喜ぶだろうか?
それとも飽きられるだろうか?
そんな事で今の関係を崩したくないし、当分はこのままの関係でいいと思う。
やはりパートナー、もしくはパーティーでモンスターを倒した方が楽しいし、達成感がある。
次からはなるべく一人で狩らずに誰かを誘った方が良さそうだ。
まずは目の前の大トカゲを倒さないと…。
迫ってくる大トカゲだが、何処を攻撃すれば良いのか?
身体の回りは鱗に覆われて、僕のナイフでは通りそうにないし、魔法でドカーンと一発といきたい所だけど、僕に魔法は使えないし…。
取り敢えず、大トカゲが真っ直ぐ突進して来たので、避けながら大トカゲの横にナイフ突きだし、大トカゲの突進を利用して横一線、切ってみたが固い鱗で傷1つもついてないようだ。
やはり鱗は固いな…。
「お前は、バカか!?
そんなナイフで鱗が傷付くか!」
少しバカにされて、ムッとするが、良く喋るようになったなと思ってしまう。
そう言うなら少しは手伝ってくれるか、何か攻略法を教えてくれれば良いのに。
そう思いながら、大トカゲが反転して、また向かって来ているので、ナイフを構え直した。




