一人きりのダンジョン 6
1階層入り口の反対側にある下の階層に降りる通路。
初めて足を踏み入れるが、緩やかな下り坂となっていた。
不思議と明かりもないから真っ暗だと思っていたが、ダンジョン自体がほんのりと明るくなっている為、足を踏み外す事も壁にぶつかる事もなく、ゆっくりと下りて行く。
これじゃ、辺りを照らす魔法も懐中電灯もいらない訳だ。
最初に入った初心者用のダンジョンも、ここと同じようにダンジョン自体が光っていれば、暗闇に怯える事も舞香さんを傷付けずに済んだのかも知れないが、今となってはあとの祭りだ。
今は、出来る事をやって、もう二度と同じ過ちを起こさないように強くならなければならない。
その為に僕はダンジョンでモンスターを倒して強くならなければならない。
だから、何が来ようとも怖じ気付いたりしない。
そう、自分に言い聞かせたのは良いが、初めての2階層。
健吾くんは、トカゲが出ると言っていたが、トカゲ、トカゲと言って思い浮かべるのは10センチ程の足元をちょこちょこと動く爬虫類を思い出す。
どうやって倒すか、歩きながら考えていた。
すばしっこいからナイフで刺そうとしても当たるだろうか?
岩の隙間に入られたら、倒しようがない。
隙間に入られる前に倒さなければ…。
それか穴に入られたら、エサを出しておびき寄せるか?
しかし、トカゲって何食べるんだろうか?
昆虫?小さな虫?
しかしここはダンジョンの中、周りを見渡してもモンスター以外、生き物の存在は確認出来なかった。
あとは携帯の食料が幾つか持ってきたが、こんな物、食べるだろうか?
そんな事を考えている内に2階層へ着いた。
2階層は1階層とは違って、草木も生えてない岩石地帯。
大小の茶色の岩が見渡す限り、至る所に転がっていた。
その中をノッソ、ノッソとゆっくり歩く物体に目がいく。
「ちょ、ちょっと健吾さん。あの生き物は何ですか?」
「見てわからないのか?あれがトカゲだよ」
「あ、あれがトカゲ!?
大きすぎるでしょう」
のんびりと歩いているトカゲは、形はトカゲみたいだけど、大きさがかなり大きい。
大トカゲとでも言うのだろうか?
体長は3メートル程、褐色、鋭い爪に身体は尖った鱗がビッシリ。初めはワニではないかと思ったが、顔はワニではなく、トカゲその物だった。
大トカゲは、こちらに気付いたのか、顔をこちらに向けると先程までの動きが嘘のように、凄い勢いで向かってくる。
それも健吾さんの方ではなく僕の方へ。
僕が弱い獲物だと瞬時に感じたのか?
僕のナイフでは、大トカゲを覆っている鱗には通用しないだろう。
ここは健吾さんに助けを求めるしかない。
「健吾さん!トカゲが来ました!」
「おっ、ラッキーだな。いつもなら俺達を見つけた瞬間、逃げた出すのにな」
そんな事、言っている間にも大トカゲが迫ってくる。
「健吾さん!早く戦闘準備を!」
「何言ってるんだ。あのトカゲを倒すのはお前だろう」
「いや、無理でしょう。
身体は鱗で覆われて固そうだし、あの鋭い爪。
あんなの戦ったら死んじゃいますよ」
「死にはしないだろう。
ただのトカゲだ。
それに1階層の兎狩りで、あれだけの動きを見せたんだし、トカゲなんか楽勝だろう」
「無理、無理、無理、いきなりあのでかさのトカゲなんてどうやって倒すんですか?」
「そんな事聞くな!
お前はダンジョンで一人で戦わなければならない時どうするんだ?
突然現れたモンスターの事なんて誰に聞くつもりだ?
誰も教えてくれないだろう。
自分で戦って見て、経験を積んでいくしかないんだぞう!」
そんな事は分かっているが、自分の身長よりもデカイモンスターをとうやって倒せというのだ。
ちょっとくらいは攻略ヒントを教えても良いんじゃないか?
愚痴をこぼしたくもなる。
まあ、監視役として付いてきているだけだし、手伝う気はサラサラないのだろう。
でも何だか今までと違って、横になって勝手にやっとけみたいな雰囲気ではなく、立ったままでこちらをずっと見つめていた。
監視をしているのかとも取れるが、いつでも飛び出せる体勢を取っているようだ。
もし万が一が起きたら助けてくれるのか?
というか、そういう体勢を取っているということは、この大トカゲはかなり危険なのではないのか。
「健吾さん、ちょっとくらいはヒントを貰えませんか?」
「甘えるな!
冒険者というのは、誰にも教えて貰う事などないのだ。
戦って経験を積んで強くなるのだ!
自分で判断し、勝てるのか勝てないのか?戦うのか逃げるのか?自分の命は1つしかないんだ。
ゲームのようにやり直しなど、きかないんだからな!
今の内、経験を積んどけ」
「分かりました」
と返事をしたものの。
おや、意外と僕の事を思っているのか?
そういう印象を初めて持った。
ただの監視役ではなく、本当に冒険者として育てているのだろうか?
いや、今は考えるのはよそう。
戦いに集中しないと…。
大トカゲがもう目の前にまで迫っていた。




