一人きりのダンジョン 5
「えっ、下の階層に!?」
思わず、その言葉に嬉しくて顔がニヤケそうになるが、『いや、待てよ』とその言葉を否定した考えが頭を過る。
僕を嫌っていた健吾くんがそんな甘い話を言うだろうか?
監視役としているだけの人間にそんな権限があるだうか?
疑問はまだまだある。
まさか罠なのか…。
そんな事するなら、初めから無駄に監視などせずに、僕をこのダンジョン内で消す事など造作もないだろう。
…本当だろうか。
「本当に下の階層に行くんですか?」
「疑ってるのか?」
「いえ、でも、だって団長からは、この階層の兎狩りしか言われてないし、勝手に下の階層に行くなんて命令違反じゃないのかと」
「そんな事、気にする必要はないぜ。
何の為に俺がついていると思ってるんだ!」
僕の監視の為でしょうと咄嗟に言いたくなったが、そこは堪えて、
「僕がモンスターに殺られそうになったら助ける為ですか?」
「兎じゃ、襲われても死にはしないから、ほっとくが」
僕はやっぱり見てるだけかと心の中で呟いていた。
「もし十分、下の階層でも行けそうなら行っても良いとちゃんと許可はとっている」
「本当ですか!」
「ああ、だから下の階層に行くか?
それはお前次第だ」
今日はもう兎10匹狩り尽くしたから、これ以上、この階層では狩りが出来ない。
下の階層に行けば、兎狩りで、まだ熱くなった身体を維持したまま狩りの続きが出来る。
今の感覚を忘れない為にも、もっともっとモンスターを倒したかった。
下の階層に行けば、もっと強いモンスターが出てくるかも知れない。
だけどその分、経験値は多く手に入るだろう。
今、居ない遥に追い付く為にも、モンスターを沢山倒さなくてはならない。
ふと自分のレベルを確認すると、漸く2にレベルアップしていた。
思わず笑みを浮かべそうになるが、遥と比べるとまだまだ。
少しでも差を縮めなければ…。
「健吾さん、僕は下の階層に進みたいです」
「おっし、良く言った。それじゃ下の階層に行くか」
そう言うと健吾くんは、直ぐに立ち上がり一人で先へ進もうとする。
「ちょっと待ってください」
「なんだ?」
「下の階層の情報を知りたいんですが」
「下の階層に出るモンスターはトカゲだ」
それだけ言うと、とっとと歩き始めた。
「ちょっと他に情報はないんですか?
ねえ、ちょっと…」
僕の声は聞こえないのか、聞こえない振りをしているのか、そそくさと進んで行く。
僕は、ただ健吾くんについていくしかなかった。




