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一人きりのダンジョン 3

「ヨシッと」


準備という準備はないのだが、ナイフを腰に巻いたナイフホルダーに直し、気合いを入れて部屋を出た。

そしてリビングに向かって歩き始めた。


「お待たせしました」


そこに待っていたのは、僕と一緒にダンジョンに入ることになっていた健吾くん。

しかし、その格好はいつもと違っていた。

いつもダンジョンに潜る時は、装備に身を固めていたはずなのに、今日は普段着に片手に剣を握り、剣の手入れを行っていた。


「お、来たか」


「あの~、その格好」


「あ~あ、今日はただの付き添いだからな」


「それでもダンジョンというは、何があるか分からないし、その格好で行くのは危険なのでは?」


僕がそう言うと、健吾は手で僕を指差し、


「その格好で人の事、言えるのかよ」


それは、ごもっとも僕も普段着にナイフしか持っていないが、


「これはお金が無くてナイフしか買えないからです」


「分かってるよ。

俺らも最初は金が無くて、ちょっとずつ貯めたお金で装備を買って揃えたもんだしな」


やはりほとんどの人はお金が無くて装備も買えないのか。

家が金持ちじゃないとまず最初から装備を整える事は難しいだろう。

だって最初から全部揃えて冒険するとなると、装備に小物やスキル、携帯食料など買えば最低でも100万はかかるだろう。

普通なら、よほど裕福な家庭か、冒険する為に一度就職するか、もしくはバイトをしながら資金を貯めるしかない。

その為、まともな装備が買えない初心者がダンジョンに挑み、死亡率が上がってる一因だと言える。

死なない為にも、大人数でダンジョンに挑むクランに入れば、自分が弱くても周りが強ければ、周りがモンスターを倒したり、僕達、初心者を庇ってくれるので、死ぬ確率はグッと減りレベルも上がりやすくなるはず、だから早くクランに入ってレベルを上げたいのだが、なかなか良いクランに巡り会わなかい。

このオロチクランも、最初は良いクランだと思っていたのだが、段々、居心地が悪くなってきたし、僕の求める組織ではないといえる。

だからといって、途中で逃げ出すつもりはない。

だって中途半端に終わると僕の冒険者生活も中途半端になってしまいそうに思え、あと少しだけ、お試し期間が終わるまでは、いつものように愛想笑いしながら、最後まで過ごすつもりでいた。


「本当に良いんですね、その格好で」


「大丈夫だよ。それに兎くらいは一人で狩れるだろ」


「それはもちろん」


「なら問題ないだろう。

それじゃ、早速、行きますか」


そのまま聞き流したが、後々会話を思い出すと、兎狩りは僕一人でやらせるつもりなのか?

一人で狩らせるなら、なんで付いて来るのか?

やはり僕を監視する為か。

監視役なら、戦いに参加せずに見ているだけなんだろうし、パーティを組んでいる訳でもない。

隠れて見張るよりかは、ダンジョンで何かあった場合に助けると言って付いて行った方が、監視役として堂々と居れるし隠れる必要もない。

まあ、僕としてどっちでも良いんだけど、一人で狩った方が気が楽だし、それに元々一人でダンジョンに入るつもりだったしね。


僕達は、いつものように地下にあるダンジョンに入る。

いつもなら遥が隣にいるはずなのに、今日は健吾くん。

なんだか、やる気が半減していた。

その理由は分かっていた。

僕なりに遥に良いところを見せようと張り切って兎を狩っていたのに、今日、遥は団長達と街へと出掛けて行った。


ちょっと裏切られた感じがする。


「はぁ~」


ついついタメ息が出てしまう。

なんと言っても今日は遥じゃなく健吾くんだし、その健吾くんはダンジョンの入り口に座り込み、何かごそごそとやっているし…。


「はぁ~」


二度目のタメ息が出た。

遥というか女性が居ないと全く張り合いがないし、やる気が出ない。

男なら女性にモテようとして良い所を見せたいものだが、今いるのは野郎だ。

このまま帰ろうかともおもったが折角、ダンジョンに来たのだし、兎を狩るしかない。


僕はいつものように兎の穴の前に隠れて待ち、兎が出てくるのを待っていた。


10分程、時間が経過した頃、やっと兎が穴から出てきた。

僕は、すかさず一気に兎に近付き、ナイフで一突き。

兎は逃げる暇もなく、一撃で死に絶えた。


『よし、順調。

遥がいなくても兎くらい僕一人で狩れるさ』


そう思っていたら、遠くから声が聞こえてくる。


「ハルト~。お前いつもそんな兎の狩り方やってんのか?」


「はい、これなら一撃で倒せるし、反撃される事もないんで」


僕が編み出した最良の方法だと確信していた。

だから、この方法が正しいと誉めてくれるのかと思ったが、健吾くんから出た言葉は全く違っていた。


「穴の前で隠れて兎を待つなんて、時間のかかりすぎだろう。

いつ兎が出てくるのか分からないのに、それに穴は一ヶ所だけじゃないだろう。

他の所から出てきたらどうするんだ?」


「それは…」


そう言われるとそうだ。

いつもなら、違う穴から出てきた兎は遥が仕留めてくれていた。

だが、今日は遥が居ないから一人で兎を相手にしなければならなかった。

他の穴から出てくる兎に対する対処が、頭からすっかり抜け落ちていた。

健吾くんに言われなければ、僕は無様に穴の前に隠れているつもりが、他の穴から出てきた兎の攻撃を受けていたかも知れない。


まだ兎なら攻撃力がそれほど高くないので死ぬことはないと思うが、もしこれが僕を一撃で殺せるようなモンスターだったら…。

そう思うと僕は、今まで兎だからと過信してしまっていた自分に、隙をつかれないように、もう一度、危険なモンスターだということを認識した。


「俺ならこうするぞ」


そう言うと健吾くんは、直径3センチ程の煙玉に火を付けて僕の方に投げた。

煙玉は煙を出しながら地面を転がり、僕の足元まで転がってきた。


「えっと、これは何ですか?」


「それか?それは呼び玉と言って近くのモンスターを呼び寄せるんだ」


「えっ」


という事は、近くのモンスター、兎しか居ないけど、この煙に群がって来ると言うことなのか?


何て言う事する!

一体一なら勝てるけど、多数になるとどうなるか分からない。

一人で、そんなバカな真似はしないだろう。

まだ死にたくないし、いきなり団体さんを相手に出きるか!


勿論、健吾くんも手伝ってくれるよね…、と思って健吾くんの方を向くと横に寝そべり、本を読んでいた。


全く手伝うつもりがないのか!


こんな時、遥がいれば…。

相棒が居ないと、こんなに寂しく不安になるとは思わなかった。

かなり頼りにしていたと、居ないから分かる。その存在感が大きな物となっていた。



そして振り返ると、煙に釣られて兎達が集まり始めていた。

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