一人きりのダンジョン 2
リビングに向かうと、オロチメンバー達が勢揃いし、街へと出掛ける者達は出発準備を、そして、ここに残る者達はのんびりとソファーに座り、寛ぎながらメンバー同士で、お喋りしていた。
盗人呼ばわりした手前、僕にとって、ここはすごく居心地の悪い場所となっていたが、お試し期間は一週間ある。
中途半端に逃げ出すことも出来ず、残り僅かの日数を我慢して耐え抜かねばならない。
この気持ちがバレたら更に関係を悪化させてしまうかも知れない。そうならないように気持ちを切り替え、僕は挨拶をした。
「おはようございます」
それに続いて遥も挨拶をした。
「おはようございます」
そしてオロチメンバー達がそれぞれ返事を返す。
「おはよう」
「おはよう、昨日の疲れは残ってないかい」
「はい、大丈夫ですよ」
遥が返事を返してくれた。
「うん、遥ちゃんは朝から元気がいいね。
それと逆にハルト君はもう少し元気を出した方が良いかな」
それは嫌みですか?
これが元々ですが、文句があるのですか?
内心は少し腹立たしかったが、こんな事で怒る僕ではない。
気持ちを押さえつけ、
「昨日の疲れが残っていて、ちょっとダルい所為かも知れないですね」
言い訳しか聞こえないが、実際言い訳であるが、何か言っておかないと気がすまなかった。
「それは気を付けないとな。
冒険者なら体調管理もキチンとしないと、優れた冒険者でも万が一と言う事があるからな。
幸い、今日はダンジョン行きは休みだから、ゆっくりと休んでくれ」
「はい、分かりました」
話が一段落ついたのを見計らって、花音が声をかけてきた。
「貴方達、朝食、食べるでしょう?
パンと目玉焼きしかないけど、どうぞ」
「ありがとうございます」
「飲み物はどうする?
コーヒー、紅茶、牛乳、選んで」
「んじゃ、僕はえ~っとコーヒーで」
「私は牛乳でお願いします」
食事を出され、僕は遥と今日の事を話し合おうと思っていたのだが、遥が突然、
「団長達は街へ行くんですよね」
「ああ、そうだけど」
「私も付いて行って良いですか?」
はぁ~?
何を言っているんだ遥くん。
団長達と街へ行くなんて…、僕は遥と二人っきりで過ごそうと考えていたのに、僕なんかより団長達の方が良いのか?
僕の考えていた計画は音を崩れて崩れ去ったような気がした。
「遥くん、別に構わないが、ハルトくんも一緒に来るかい」
「僕は…」
街に出掛けたとしても、お金に余裕が有るわけでないし、だけど、それは遥も同じはず、街に何しに行くつもりだろうか?
まさか、この中に好きな男性が出来たのか?
まあ、それは仕方のない事か。
なんの取り柄もないし、自分を魅力のある男性と思った事もない。
なぜ遥が僕をパートナーとして選んだのか不思議でならなかった。
だから突然パートナーを解約されても可笑しく無いこと、ましてやお金も持たない。冒険者としても弱い。
ダメダメだ。
その点、団長とかなら、皆を引っ張る力もあり、皆に慕われ、憧れを抱くだろう。
僕と比べても、比べられないほど出来た人間だ。
でも、僕はまだ遥のパートナー。
街まで一緒に行くか?
でも、あの山道を降りて、また登らないといけないと考えただけで、ちょっと躊躇してしまう。
「ハルトは留守番でも構わないよ」
遥の一言が僕の心を決めた。
僕に来て欲しくないと言うことか、分かったよ遥。
「僕は残ります。そしてレベルを上げたいので、一人でダンジョンに入ります」
「おいおい、さっき言ったばかりだけど、疲れが残ったままダンジョンに行くのは危険なんだぞ!」
「このくらいの疲れなら大丈夫です。
それに兎くらいに負けるわけないです」
「それでも万が一と言う事があるしな…」
「それなら俺が一緒に付いていこうか?」
そこで声を出したのは、居残り組の健吾だった。
「良いのか健吾、お前だってゆっくり休んだ方が良いんじゃないのか?」
「大丈夫さ、万が一の時は助けるけど、ただ見てるだけだし部屋でのんびりするのも、ダンジョン内でのんびりするのも変わらないからな」
「それじゃ、すまないが健吾に頼むか」
「あいよ」
万が一というが、ようは監視役と言う事か。
目を光らせておかないと、何をするか分からないから…、そう考えるだろう。
僕は別に悪い事はしてないけど、監視役と思うと要らないと言いたいが、それじゃ僕の潔白は晴れないだろう。
同行してもらうしかない。
「すいません。お休みの所を健吾さん」
「なんの、なんの、問題ないよ」
僕は健吾さんに同行してもらうのにお礼を伝えた。
「それじや遥くん、僕達は車で街まで行くから、直ぐに準備してくれ」
「は~い、分かりました」
そう遥は言うと、急いで食事を掻き込み部屋へ駆けて行った。
今、車と言う単語が聞こえたのですが気の所為でしょうか?
「それじゃ、僕達は車の準備をしようか」
そう言うと団長と花音、湊が部屋を出て行った。
車なら車と先に言って欲しかった。
それなら僕も一緒に街へ…、今更、言ってもカッコ悪いし、少し後悔しながら朝食を取っていた。




