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最強のキョウダイ  作者: ジータ
第一章
90/309

第89話 孤立した村45 【紫電】のエクレア

六月は私的用事でいつもより更新頻度が落ちるかもしれないです。ごめんなさい。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。


 エクレア・マルキス。《聖女》アウラの相棒にして、雷の聖剣を操るシスティリア王国最強の《勇者》だ。その武勇は国内のみならず、諸外国にまで轟いている。曰く、剣の一振りで数千の魔物を焼き払った。最強種であるドラゴンを一人で討伐した。人間ではなく、半竜人であるなどなど、嘘か真かわからないものまで様々だ。

 その二つ名は【紫電】。元は青かった彼女の髪が魔物の返り血を浴び過ぎたことで紫になったという噂と、彼女の操る能力が雷であったということがその理由だと言われている。

 しかし、彼女自身が表に出てくることはほとんどなく、彼女がどんな人であるのかということを知る人は少ない。

 そんな彼女が、突如としてリリア達の前に現れたのだ。驚くなという方が無理だろう。


「エクレアさん、どうしてここに!」


 タマナが声を掛けると、エクレアは振り向き誰だっけ? という顔でタマナのことを見る。


「タマナです! 王都の神殿で《巫女》をしてます。何度かお会いしたことあると思うんですけど」

「あー、ごめんね。アタシ人の顔と名前覚えるの苦手でさ。うん、でも確かにどっかで見たことある……気がするかも」


 ヘラヘラとした表情で言うエクレア。はたから見れば何でもない自然体だろう。タマナは気付いていないが、リリアやウェルズ達は全身から冷や汗が出るのを感じていた。それは道を歩いていたら突然ドラゴンが目の前に現れたような。突如として現れた圧倒的力を持つ存在を前に言葉すら発することができないでいた。

 そんなリリア達に気付いたのか、エクレアがしまったという顔をする。


「あ、ごめんねー。さっきまで魔物の討伐してたからさ。まだちょっと力漏れてたみたい。久しぶりに楽しい相手だったしね。クラーケンは。あんまり美味しくはなかったけど」

「お、美味しい?」

「そうそう。食べれそうな魔物なら食べてみることにしてるの。クラーケンって見た目はイカみたいだからいけるかなーって思って。体が大きいと味も大味になるんだなーってわかったよ」


 なんでもないことのように言うエクレアだが、クラーケンはSランクの魔物。国が軍隊を出動させて対処しなければいけないような魔物なのだ。それをエクレアは一人で狩ったのだというのだからその実力がわかるというものだ。


「それでその……エクレアさんはどうしてこちらに?」

「んー、いやね、アウラがこの村に送った人たちと連絡が取れないっていうからさー。なんだっけ? 《勇者》? 新しく生まれたんでしょ。何かあったら問題だから見に行って欲しいって言われたの。まぁ正直新しい《勇者》どうこうってのはどうでもよかったんだけどさ、アウラからのお願いじゃ断れないから」


 そしてエクレアは目の前に居並ぶウェルズ達のことを睥睨する。


「そしたらなんかめんどくさそーなことになってるじゃない。なんで帝国の騎士が王国にいるのかな」


 じろりとウェルズ達のことを睨むエクレア。それはまさに蛇に睨まれた蛙のようで、ウェルズ達は金縛りにあったかのように動けなくなる。


「これでも一応王国の《勇者》だからさー。状況によっては対処しないといけないんだよね。だからさ……消えてくんない? アタシ面倒なこと嫌いなんだ」

「ふ、ふざけるな! 我らはこの村で仲間を殺されているのだぞ! はいそうですかと帰ることなどできるわけがなかろう!」


 帝国への忠誠心か、エクレアという圧倒的存在に自らの自尊心を傷つけられたことによる対抗心からか、ウェルズが言い返す。


「帝国の騎士は国に帰る途中に不幸な事故にあって全員死んでしまいました」

「? 何を言っている」

「わかんない? これ以上面倒かけるならそうなるよって話」

「なっ!?」


 言外に殺すと、エクレアはそう言っているのだ。そして、エクレアにはそれが容易くできるだけの実力があることはウェルズにもわかっている。

 リリアに命か聖剣か、という二択を迫っていたはずだったウェルズ。しかし、エクレアがこの場に現れただけでその状況は一変してしまった。今度はウェルズが命か国からの命令かという二択を迫られることになってしまったのだ。


「ぐ……」


 どちらを選んでも待っているのは絶望的な未来だけだ。仲間を殺され、聖剣すら手にすることなく国に帰ればウェルズの降格処分は確定的なものになるだろう。

 しかし少なくとも死ぬことはない。この場でエクレアに逆らえば待っているのは死だ。エクレアが本気で言っていることは間違いないのだから。

 やがてウェルズは苦渋の滲んだ声音で言う。


「……引くぞ」

「しかしウェルズ様!」

「黙れ! 貴様にも状況がわからんわけではないだろう!」

「それは……」

「良いか貴様ら、覚えておけ。今この場は引く。しかしこれで終わると思うなよ。この屈辱は、いつか必ず返す」

「はいはい、わかったからさっさと帰って」


 憎しみに満ちた目でウェルズに睨まれてもエクレアは素知らぬ顔だ。普段殺気丸出しの凶悪な魔物を相手にしているエクレアにとって、この程度はへでもなかった。


「……行くぞ」


 やがてウェルズは他の騎士達を連れて去っていった。残されたのはエクレアと、急な展開についていけてないリリアとタマナだけだった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は6月4日21時を予定しています。

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