第81話 孤立した村37 契約の儀
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「リオン!? どうしてここにいるのさ!」
謎の空間にやって来てしまったハルトは、そこに突如現れたリオンの姿を見て驚きをあらわにする。
「どうしてもなにもないじゃろう。ここは妾の空間なのじゃからな」
「え、どういうこと?」
「どういうこともなにもない。そのままの意味じゃ。この場所は妾の……【カサルティリオ】の空間。そこにお主を連れてきたのじゃ」
「【カサルティリオ】のって……でも、ボク確かワーウルフに爪で貫かれて……死んだと思ったんだけど」
「死んでおるぞ」
「……え?」
当たり前のことのようにハルトが死んでいるということを告げるリオン。ハルトは言われていることが理解できずに思わず聞き返してしまう。
「だから、お主は死んでおる」
「二回も言わなくていいから!」
「お主が聞いたんじゃろうに。というか、わかっておるのじゃろう?」
「わかってるけど……でも、そっか、やっぱり死んじゃったんだ」
さっきまでの場所では死んだということを受け入れることができたハルトだったが、一度時間を置いてしまったからかそれともこの空間にいるせいなのか、死んだという事実がハルトのことを打ちのめす。
「なんじゃお主、落ち込んでおるのか?」
「そりゃそうだよ。だって死んじゃったんだし……それに、もうみんなに会うことができないんだから」
「あぁ、なんじゃそんなことか」
「そんなことって……そんなことなんかじゃ——」
「そうではない。お主は確かに死んでおる。しかしただ死んだだけじゃ」
「よくわかんないんだけど。死んじゃったら終わりでしょ?」
「ふん、それはただのヒトであればの話じゃ。しかしハルトよ、お主はそうでないだろう?」
「いや、普通のヒトだけど……」
「あぁもう! そうではない、お主は! この妾の、【カサルティリオ】の契約者じゃろうが!」
「そ、そうだけど。それが?」
「……もういい。端的に教えてやろう。【カサルティリオ】の力をもってすれば、お主を生き返らせることなど容易いのじゃ」
「ホントに!」
「こんなことで嘘は言わんのじゃ」
「それなら早く生き返らせてよ! 早く戻らないと。イルさんがどうなってるかわからないし」
「慌てるな。生き返らせるのもタダではないのじゃ」
「タダじゃないって……でもボクお金なんて持ってないよ?」
「ふん、ヒトの定めた通貨などに興味はないわ。それよりも相応しいものがここにはあるじゃろう?」
そう言ってリオンは酷薄な笑みを浮かべる。ハルトのことを品定めするような、見極めようとするような目線。まさに悪魔のような笑みだった。
「相応しいもの?」
「魂じゃ。お主は生き返るために、妾に魂を差し出す勇気があるか?」
「え、そんなことでいいの?」
「……は?」
「いいよ。それで生き返れるなら、ボクの魂をリオンにあげる」
「いやいやいやいや! お主、魂じゃぞ? わかっておるのか? それを差し出すということがどういう意味か。お昼ご飯のおかずを一品あげるのとはわけが違うんじゃぞ!」
「わかってるよ。でも……でも、リオンは悪いヒトじゃないでしょ?」
「まだ出会って短い妾の事を信用すると言うのか?」
「これでも信用できるヒトとそうじゃないヒトの見極めには自信があるって思ってるんだけど」
「……妾は厳密にはヒトではない……のじゃが。はぁ、もういい興が削がれたのじゃ。生き返る方法を簡単に説明してやるのじゃ」
「ホントに!?」
「お主、いつか誰かに騙されるぞ」
「? どういうこと?」
「今はどうでもいいのじゃ。それでは始めるぞ」
「始めるって何をさ」
「決まっておるじゃろう。契約じゃ」
「え、でもボクと君ってもう契約してるんじゃないの?」
「あれは仮契約じゃ。今から行うのは本契約。ここにおるやつらも、多少はお主のことを認めたようじゃからな。のう、赤き竜よ」
リオンの後ろで、大きな何かが蠢く。それは言葉を発することはなかったが、同意を示しているようにハルトは感じた。
「相も変わらず無口な奴じゃのう。まぁよい。では始める」
リオンがパン、と音を立てて手を合わせ目を閉じる。その表情は打って変わって真剣だ。
「これより契約の儀を始める」
「うわっ」
リオンを中心として、大きな赤い陣が形成されていく。複雑な形を成すそれが何を意味するのかハルトにはわからなかったが、ただただ大きな力だけは感じていた。陣の広がりに合わせて、ハルトとリオンを囲むように多くの何かが蠢き始める。
「ケイヤクヲ……」
「アラタナルケイヤク……」
「アレガアルジカ……」
ボソボソと何かを呟きながら、しかし決して近づいて来ることは無く。ハルトの様子をジッとうかがっている。やがてリオンが目を開ける。その瞳は真紅に輝いていた。
「汝、ハルト・オーネスに問う。我らが与えるは大いなる力。その力で汝は何を成す」
リオンの瞳に射すくめられるハルト。その瞳は嘘や偽りを言えば一瞬で見抜いてしまうであろうだけの迫力があった。求められているのは真実の言葉だ。
「ボクは……ボクは、守る力が欲しい。大切な人を、大事な誰か。ボクはいままで守られてばかりだったから……だから、今度はボクがみんなを、姉さんを守りたいんだ!」
「その言葉に偽りはないな」
「ない」
「……よかろう。【カサルティリオ】が主が命ず。第一罪、第四罪よここに」
『グルァアアアアアアッ!!』
『ルォオオオオン!』
暗闇から姿を現したのは、見上げるほどに巨大な赤い竜、そして同じほどに巨大な赤い鳥。それはやがて形を変え、大きな炎へと変化する。そして炎はハルトに向かって飛んでくる。
「うわぁあああああああっ! あつ、熱い!」
燃え上がるハルトの体。ハルトの感じるその熱さは本物だった。あまりの苦痛に思わずハルトは叫んでしまう。
「拒絶するな! 受け入れろハルト! それこそがお主に必要な力なのじゃ!」
「うけ……入れる……?」
熱さで意識が朦朧としはじめるなか、リオンの言葉だけがハルトの耳に届く。依然として炎はハルトの中で暴れまわっている。
(うけ……入れる……この、炎を)
拒絶すればするほど炎は熱さを増していった。しかし逆に受け入れようとした途端に、その熱さが和らぐ。二つの炎がゆっくりと、ハルトの中で混ざり合う。いつしか炎の熱さは感じなくなり、穏やかな炎だけがハルトの体を包みこんでいた。
「それがお主の力となる。使い方は……言わずともわかるな」
「……うん」
炎が完全にハルトの中に吸い込まれる。完全に吸収し終わった時、ハルトは己のなかに二つの大きな力があるのを感じていた。
「最後に、外の様子を少しだけ見せてやろう」
「外?」
リオンがパチリと指を鳴らすと、突然炎が円を形作り外の様子が映し出される。そして見たのは、リリアとシアが激しく戦う様子だった。
「姉さん!」
「ふむ、どうやらハルトを殺されたことが相当頭に来ておるらしいのぅ。ククク、すごい力じゃ」
「笑ってる場合じゃないよ! 早く戻らないと!」
「そのための力は、すでに渡したはずじゃ。使い方は……わかるじゃろう?」
「……うん」
ハルトの中に今ある二つの力。そのうちの一つ。その名をハルトは口にする。
「第四罪——『怠惰なる不死鳥』」
そしてハルトの体が、赤い炎に包まれた。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!
それではまた次回もよろしくお願いします!
次回投稿は5月13日21時を予定しています。




