第53話 孤立した村 11 聖剣の在り処
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家を出ようとしたハルト達の前に現れたのは、帝国騎士であるウェルズだった。ウェルズは目の前に立つハルトの事を見て何か引っかかったような顔をする。
「ん、お前……どこかで……」
それを見て不味いと思ったイルは、とっさにハルトとウェルズの間に割って入る。
「な、何か用……ですか」
「お前達……この村の人間ではないな」
「そうですけど。それが何か?」
「ここにいるということはあの女共の仲間か?」
「あの女……リリアとタマナのことですか?」
「王国の女の名前などいちいち覚えておらん。ましてや殺人犯の名前などな」
「姉さんは殺人犯なんかじゃない!」
リリア達のことを殺人犯呼ばわりされたことにハルトは思わず大声を出してしまう。
「おいバカ!」
「なんだお前、あいつの弟なのか? 大変だなぁ。殺人犯の姉を持つというのは」
「だから姉さんは殺してなんかない! 犯人は別にいる!」
「そんなことはどうでもよいのだ」
「え?」
「問題は、帝国の騎士が王国の人間に殺されたという所にある。このことが本国に知れれば、我らが皇帝は民を愛されるお方だ。けして黙ってはいないだろう。報復を……この村を焼けとの命令を下すかもしれない。そしてそうなれば王国も黙っているわけにはいかないだろう……もしかしたら、戦争になるかもしれないな」
ウェルズは脅すように、ハルト達に向けて言う。いや、それは事実脅しているのだろう。これをきっかけに戦争を仕掛けることもできるのだぞ、と。ただ一人の帝国騎士が殺されただけ。しかし、事実として殺されている。ならば理由などいくらでもつけることができるのだ。
「それが嫌なら、この場で王国の誠意を見せてもらわねばならぬ。例えば犯人を見せしめとして殺す。もしくは……聖剣の場所を教えるとかな」
そのウェルズの話を聞いてイルは思わず内心で舌打ちをする。つまり、聖剣の在り処を知ることこそがウェルズの目的なのだと理解したからだ。
「この話はすでに村長には伝えてある。明日までに犯人を見つけられればよいなぁ。ま、無理だろうがな」
そう言ってウェルズは見ている側の神経を逆なでするような笑みを浮かべ、高笑いしながら家を出て行く。
ウェルズが家を出て行った瞬間にイルは舌打ちをする。
「あぁもう! ムカつく野郎だな!」
「イルさん……」
「だいたいお前もお前だ! リリアのことを言われて腹立つのはわかるが、耐えろよ! じゃねぇとお前隠した意味がないだろ! お前が《勇者》だってことがあいつにバレたら聖剣がここにあることを教えるだけじゃねぇ。最悪あいつらはお前の命を狙ってくるぞ。だからリリアはお前のこと隠したんだろうが!」
「ご、ごめん……」
「ちっ……もう見られちまったもんはしょうがねぇ。こうなったらあいつらより先に聖剣を見つけるしか……」
「あ、あのー」
「あ? なんだよ……って、あ」
そこで口を挟んできたのはそれまでずっと黙っていたシアだ。そして、シアの存在をすっかり忘れていたイルはしまったという顔をする。シアにはハルト達がこの村に来た理由を話していない。隠していたわけなのだが、仕方のないこととはいえ、イルは勢いで全て話してしまったのだ。
「詳しいことはわからないけど……その、聖剣? っていうのがハルト君達がこの村に来た理由なの?」
「あー……まぁな。一応、そういうことになる」
「ごめんねシアさん。黙ってて」
「あ、いいの別に。しょうがないことだとは思うし。でも、聖剣の場所わからないの?」
「ん、あぁ。村長の奴がウェルズ達がいる間は教えられないって……できればというか、あいつらよりも先に見つけたいんだが、場所がわからないんじゃどうしようもねぇからな」
「…………」
「どうしたのシアさん?」
「あの……ね。実は、その、花畑の近くに洞窟があるの。花畑からさらにもう少し奥に歩いた場所なんだけど……村長からそこには入らないようにって言われてたんだけど、もしかしたらそこに……」
「聖剣があるかもしれないってこと?」
「た、たぶんだよ。絶対じゃないけど、もしかしたらって話」
「……いや、ありえるかもしれねぇ」
そこでイルは思い出す、昨日自分が【聖言】で見た洞窟の光景を。そして、剣を見たことを。あれはまさにその洞窟の中にあるのではないかとイルは考えていた。
「よし、今日やることは決まりだな」
「犯人捜しと聖剣探し?」
「あぁ、一挙両得といこうじゃねぇか」
そう言ってイルはニヤリと笑った。
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次回投稿は4月4日21時を予定しています。




