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最強のキョウダイ  作者: ジータ
第一章
45/309

第44話 孤立した村 2

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 ウォルへと向かう道が落石で閉じられた。それはつまり、リリア達がダミナの村から出られなくなったということと同義である。ダミナの村は山に囲まれて場所に位置しているのだから。

 もちろん、遠回りすればウォルへ行くことはできる。しかし、それには険しい山々を超えなければいけないのだ。山に慣れていないリリア達がそれを超えるのは自殺行為にも等しい。落石がどけられ、通れるようになるまでリリア達はこの村にいるしかないのだ。


「落石がどけられるのに二、三日はかかるだろうね」


 落石の状況を確認してきたローワはリリア達に状況を伝える。


「村の若い衆が明日の朝から退ける作業にかかる。今日はもう夜だからね。それに、今この村は安全とは言えないかもしれないからね」

「殺人犯がいるから……ですか」

「端的に言ってしまえばね。君達には悪いけれど、しばらくは村で大人しくしておいてくれ。あと、ハルト君達はあまり家から出ないほうがいいかもしれない」


 今の村人達は先日からいる帝国の騎士達のことに加えて、殺人まで起きてしまって精神的に不安定になっている者が増えている。ローワとしては複雑だが、ハルト達のことを考えるならできる限り村人と関わらないのが安全だと思ったのだ。


「……わかりました」

「はぁ、まさか殺人まで起きるとはなー」


 リリアから何が起きたのか聞いたハルト達は浮かない表情だ。それもしょうがないだろう。聖剣を探しに来ただけのはずだったのに、気付けば孤立し、しかも村の中に殺人犯までいるかもしれないのだから。

 ハルトが不安を感じるのも無理はないことだ。そんなハルトの頭をリリアは優しく撫でる。リリアはハルトに自分が殺人犯だと疑われているということは伝えていない。もし伝えれば優しいハルトは傷つくだろうし、そんなことでハルトの心に負担を与えたくなかったのだ。


「大丈夫よ。ハル君のことは私が守るから。でも、危ないから絶対に一人では行動しないで。約束できる?」

「……姉さんはどうするの?」

「私はローワさんに頼まれていることがあるから、明日からはそれをするわ。ハル君達はシアさんと家に……って、そういえばシアさんは?」

「そういえば、さっき出て行ってから姿見てないですね」

「私がどうかしましたか?」

「あ、シアさん。姿が見えないからどうしたのかなって」

「あぁ、すいません。その……人の死体を見たのは初めてってわけじゃないんですけど。どうしても慣れなくて」

「もう大丈夫なの?」


 シアの母親であるヤスナがシアのことを気遣って言う。


「うん、外の空気すったら落ち着いたよ」

「そう、ならいいんだけど。あなたも危ないからしばらくは一人で外出しちゃだめよ」

「あの人のことがあったから?」

「そうよ」

「まぁしょうがないか。わかったよ」

「それじゃあ私は帰りますね。また明日来ます」

「あ、ローワさん。一人で大丈夫ですか?」

「近いから大丈夫だよ。君達も、十分に気を付けてね。戸締りはしっかりと」

「わかりました。ローワさんもお気をつけて」

「ありがとう。それじゃあ」


 それからリリア達は食事を済ませ、各自の部屋へと戻る。することもないのでまだまだ早いが就寝する運びとなった。明日からどうなるかわからない不安を胸に、ハルト達は眠りにつくのだった。





□■□■□■□■□■□■□□■□■□


 その日の深夜、目を覚ましたリリアは音を立てずにベットから抜け出す。誰も起きていないことを確認すると、リリアはサルドの死体がある場所へと向かう。


(明日の朝になればウェルズ達が死体を回収しに来る。その前に確認できることはしておかないと)


 ハルト達の手前、死体を見せてくれとは言えなかったリリアはこうして全員が寝静まるのを待っていたのだ。そしてリリアは死体の安置されている部屋のドアをそっと開ける。


「リリア? 何してんだ?」

「~~~~~っ!?」


 急に背後から声を掛けられてリリアは驚きのあまり声を上げそうになる。とっさに手で口を押えてなんとか声は出さなかったが。バッと後ろを振り向けばそこにはイルが立っていた。眠たげに目をこすりながら欠伸をしている。


「イル。驚かせないで」

「驚いたのはこっちだっつーの。なんか怪しい奴がいるって思っちまった。まぁすぐにリリアだってわかったけどよ。それで、何してるんだ?」

「……あの人の死体を見ようと思ってるの」

「はぁ!?」

「しっ、静かに」

「あ、わ、悪い。でもなんでそんなことを?」

「明日の朝になればサルドの死体は持っていかれるわ。そうなったら私達はまったくの手掛かりゼロで犯人を捜さないといけない。情報が少しでも欲しいのよ」

「なんでお前らが犯人捜しなんかするんだ?」

「……ハル君には言わないでね」

「? あぁ、わかった」

「実は……私とタマナさんが犯人だと疑われてるの」

「はぁ? なんでそんなことに」

「あの人とひと悶着あったのよ。それを見られてたってだけ。もちろん、私とタマナさんは殺してなんかいないわ……殴りはしたけど」

「え、なんて?」

「とにかく、私達の疑いを晴らすためにも犯人を見つけないといけないの」

「なるほどな……手伝ってやろうか?」

「え……」

「なんだよ」

「どういう風の吹きまわし? あなたがそんなこと言うなんて」

「んだよ! オレが手伝っちゃ悪いのかよ」

「そういうわけじゃないけど……でも大丈夫なの?」


 リリアが言うことではないが、これから見ようとしているのは死体なのだ。普通ならばシアのように気分が悪くなってしまうだろう。殺された死体となればなおさらだ。


「は、死体なんかでどうこう言うほど子供じゃねーよ」

「そうならいいんだけど。じゃあ手伝ってもらえる?」


 リリアとしても見る目が少しでも多い方が助かるのは事実だ。そしてリリアはイルと共に部屋の中へと入る。


「【ライト】」


 リリアの指先に光が灯る。これも生活魔法の一種だ。流石に深夜に部屋の明かりをつけるわけにもいかないのだ。


「……あった。先に謝っておくわ、ごめんなさい」


 目的の物はすぐに見つかった。部屋の中央に寝かされた姿でそこにいる。

 リリアは小さく謝ると、サルドにつけられた布を遠慮なく剥ぎ取る。


「うわ、ひでぇなこりゃ」

「えぇ、確かに」


 サルドの体には大量の刺し傷、切り傷があった。腹から胸を中心に大量に傷がある。とても平常な人間にできるものではない傷跡だ。


「っていうか、お前も死体は平気なのか?」

「えぇ、見るのは初めてじゃないわ」

「そうなのか」


 リリアはこれまで、ルーラの街で何度も魔物と戦ってきた。それは決して上手くいったものばかりではない。一緒に戦っていたヒトの死体を目にしたことは一度や二度ではないのだ。


「あとさ、こんな状況で言うのもなんだけど、一応男の裸なわけだし恥ずかしかったりしないわけ?」


 サルドの布の下は何もつけていない。つまり全裸である。男性の象徴ももろ出しになっているのだが、リリアがそれを見ても一切表情を変えないことがイルには不思議だったようだ。


「えぇ、見慣れてるもの」

「ふーん……って、え?」


 なんでもないことのように答えたリリアだが、イルは思いもよらぬ返答に目を丸くする。そしてリリアはイルの反応を見て、自分がとんでもないことを口走ったことに気付く。


「あ、ちが、ハル君! ハル君が小さい頃にお風呂に入れてあげたりしてたから、それでね」

「へ、へぇ……」

「ホントだから、私まだ処女だから!」

「いや、そんなことまで聞いてねぇよ! っていうか、あんまり騒ぐなよ。バレるだろ」

「あ、ごめんなさい」


 先ほどイルにした注意を今度は自分がされてしまうリリア。何度か深呼吸をして落ち着きを取り戻し、改めてサルドの死体を観察する。


「ゴホン、それじゃあ、確認していきましょう」

「あぁそうだな。つっても、ここからわかることなんてあるのか?」

「そうね……はっきり言ってしまえばないわ。人体の知識なんてほとんどないし」

「じゃあ見る意味ねーじゃねーか」

「でも、それ以外の視点でなら見れる」

「それ以外の視点?」

「サルドを殺すとして、私ならどうやって殺すか。どんな思考なら、この傷をつけるのか」


 サルドの体の傷を見ながら、リリアは殺人犯の思考を考える。


「あなたならどうする? どうしたらこれだけ刺すことができる?」

「あぁ? そうだな……恨んでた……とか?」

「なるほど、その可能性もあるわね」

「お前は違うのか?」

「私がこの傷をつけるとするなら……快楽のため」

「快楽?」

「足を見て」


 リリアに言われてサルドの足を見れば、両足に傷がついているのを見つけた。


「なんだこれ」

「たぶん、足の腱を切ってるの。逃げれないように」

 

 サルドの足の腱を切って逃げれないようにする。そして、動けなくなったサルドをじわじわといたぶりながら命を削っていく。逃げようともがくサルドを一刺し、また一刺しと笑いながら傷を増やしていくのだ。


「サルドの傷、腹から胸に集中してるけど全部急所を外してある」

「そうなのか?」

「うん、殺すだけなら胸を一刺しするだけでいい。でもこれはそうじゃない。ゆっくりと、長い時間をかけて苦しめようとしている。そして……」


 サルドについている傷の中で一番大きな傷。それは首にあった。


「反応が無くなって面白くなくなったら、首を切って殺す」

「……ホントにお前がやったんじゃねーよな」

「やってないわよ」


 まるで見て来たかのように語るリリアをイルは怪訝な目で見つめる。


「全部想像よ。むしろ、あなたの恨みの方が可能性としては高いわ。ろくでもない奴だったし」

「わかるのはそれくらいか?」

「そうね。快楽殺人犯か、恨みの犯行か……少なくとも、相当強い意志を持って殺してるのは確かでしょう。もっと情報が欲しいけど……」

「これ以上は無理か」

「これ以上となると……」


 言いかけたリリアは言葉を止める。自分の考えが最低なものであるということに気付いたから。


(誰かがもう一人殺されれば詳しいことがわかるかもしれない……なんて思ったけど……あぁ、自分で自分が嫌になる)


「どうしたんだ?」

「なんでもないよ。これ以上殺人が起こらないことを祈るばかりね」

「まぁそうだな。ここの奴らとかどうでもいいけど」

「どうでもいいとか言わない」

「だってそうだろ。意味わかんねぇ理由でオレらのこと敵視しやがって」

「それでもよ。彼らは今少し不安になってるだけなんだから」


 たとえ本心でイルと同じことを思っていたとしても、リリアはそれを表に出すわけにはいかない。リリアはハルトの姉なのだから。


(《勇者》の姉はそれらしくってね。ハル君の名に泥を塗るようなことはできない)


 ひと通り見終わったリリアは、サルドにかけられてた布を元に戻し、部屋を後にする。


「このことはハル君達には秘密だからね」

「わかってるよ。あいつこういうの嫌いだろうしな」

「わかってるならいいわ。それじゃあ、お休み」

「ん」


 そして部屋に戻ったリリアはスヤスヤと眠るハルトの顔を眺める。この穏やかな寝顔を、リリアは守りたいと思う。それこそが、リリアの存在意義なのだから。


「必ず犯人は見つけるわ」


 


 そして次の日の朝、再び死体が見つかった。

 

『私はこの村の中にいる』


 というメッセージと共に。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は3月23日18時を予定しています。

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