第33話 ハルトとイル
もしかしたらそのうち投稿時間を変更するかもしれないです。具体的には投稿時間を朝にするかもしれないです。あくまで予定ですが。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「ん……」
ハルトが目を覚ましたのは、夕方が近くなってからだった。
「お、やっと起きやがったか」
「……イルさん?」
「そうだよ。なんだ? まだ寝ぼけてんのか?」
「ここは……」
「街の診療所だよ。なんも覚えてないのか?」
「何もって……あ!」
そこでようやく自分の身になにが起きたのか思い出したハルト。慌てて起き上がってしまったせいで痛みが走る。痛みに顔をしかめるハルトのことをイルは小突いてもう一度寝かせる。
「あほ、いきなり起きてんじゃねーよ。ちゃんと寝とけ」
「…………」
「なんだよ」
「いや、珍しく優しいなって」
「お前の姉貴に頼まれたんだよ。ハル君のことをお願いねーって、オレだってまだ体調悪いってのに」
「そうなんだ……それでその、姉さんは? タマナさんは無事だったの?」
「お前の姉貴はピンピンしてるよ。今は街の方に行ってお前とタマナに食べさせるもの買いに行ってる。タマナの方も無事だよ。まだ寝てるけどな。お前が庇ったんだって?」
「えーと、そうなのかな? あんまり覚えてないや」
「はぁ……それにしても、初めての実戦がこんな形で終わるなんてお前もついてねーな。ま、でもゴブリンキングとゴブリンメイジがいたんだろ? 命あるだけマシってもんか」
「そんなに危険なの?」
「なんの準備も無しに会ったなら、俺は速攻で逃げるな」
「そんなに危ないんだ……良かった……でも」
「ん? どうしたんだよ」
ハルトの表情が陰ったことに気付いたイルが問いかける。ハルトはジッと自分の手を見たまま答える。
「初めて……初めて、生き物を殺したんだ」
みんなが無事であるということを聞いて安堵した途端にハルトに襲い掛かって来たのは、生き物の命を奪ったという事実であった。ゴブリンと戦っている途中は努めて気にしないようにしていたハルトだったが、いざ終わればその事実がハルトの心を蝕んでいた。
「わかってるんだ。これからもっともっと多くの魔物と戦わないといけないって。慣れないといけないんだって。でも……やっぱりちょっとキツイなって」
少しだけ自分の手が震えているのを見て自嘲気味に笑うハルト。戦うと決めたのにこの様かと自分が情けなくなる。
「はぁ……バッカじゃねーの」
「え?」
「殺すのに慣れる必要なんてあるわけねーだろ。命を奪うのが平気なやつなんてそうはいねーよ。それでも戦うのはやらなきゃ自分が殺されるからだ。そうやって割り切ってやってくしかねーんだよ。だから、戦い終わったら吐こうがわめこうが自由だ。生きてたもん勝ちなんだよ」
「イルさんは……イルさんもそうなの?」
「はん! オレは特別だからな。お前みたいに悩んだりしてねぇよ。初めての実戦もずっと小さい頃だったしな」
「そうなんだ……すごいね」
「そうだよ。オレはすごいんだ。わかったらもっと崇めやがれ」
「それはちょっと」
「なんでだよ!」
イルの言葉で少しだけ心が楽になるハルト。気付けば手の震えも止まっていた。
一方のイルは、思わずちゃんと話してしまった自分が急に恥ずかしくなり、誤魔化すようにハルトに向かって怒鳴る。
「あぁもう! ってか、なんでオレお前とこんな話しないといけねーんだよ! 別に俺はお前と仲良くする気はねーからな!」
「ボクはイルさんと仲良くなりたいと思ってるけど」
「お前なー。《神宣》でのこと忘れてねーだろうな。何度でも言うが、オレはあの時のこと納得したわけじゃねーからな」
「じゃあボクも何度でも言うけど、ボクだって間違ったことをしたとは思ってないよ」
そう言ったハルトだが、そこでふと一つ気になったことがあった。ハルトはイルのなかにある本質的な優しさに気付いた。そんなイルがなぜ《神宣》の時にあのようなことをしたのか。それがわからなかった。
「どうしてイルさんは《神宣》の時にあんなことしたの? 何度か話してて思ったけど、イルさんのことそんなに酷い人だと思えないんだ」
「そりゃおめでたい思考だな。まだあって間もないのにオレがどんな奴か判断するなんてよ」
「これでも結構自信あるよ。イルさんはそんなに悪い人じゃないって」
「……ふん、勝手に言ってろ」
そう言ってイルはハルトから顔を背けてしまう。
「ふふふ……」
「「っ!?」」
不意に隣のベットから小さな笑い声が聞こえてくる。それに驚いたハルトとイルはバッと目を向ける。その声の主は隣で寝ていたタマナだった。
「おま、起きてたのかよ」
「タマナさん! 大丈夫ですか?」
「はい。ハルト君が庇ってくれましたから。ありがとうございました。本当なら私が守らないといけなかったのに」
「そんな、タマナさんのおかげでボクは戦えたんです。こっちこそありがとうございます」
「そんなことより、お前いつから起きてたんだよ」
「え? そうですねー。『はぁ、バッカじゃねーの』ってところから起きてました」
「結構前じゃねーか!」
「ごめんなさい。なんだか真剣に話してたんで邪魔するのも悪いなーって思って。いい話だったと思いますよ。お姉さんもイルさんの意見に賛成ですし」
「~~~~~~っ!」
ニコニコと笑うタマナ。しかしイルは自分の話を思いがけず聞かれていたことが急に恥ずかしくなり顔を真っ赤にしてしまう。
「あぁもうお前ら寝てろ!」
「えー、そんなこと言わないでくださいよ。もっとイルさんのお話聞きたいよ私」
「うるせぇ!」
わいわいがやがやと騒がしくなる病室。その騒ぎはリリアが戻ってるまで続いたのだった。
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次回投稿は3月7日21時を予定しています。




