第197話 ハルトの正装
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「ど、どうかな?」
「うむ! よく似合っておるぞ主様!」
「似合ってるー」
「あ、ありがとう二人とも。でもちょっと恥ずかしいな」
朝食後、ハルトはイルに連れられて衣服室へとやってきていた。そしてランニング中の宣言通り服はリオンが選んだ。人前に出る正装として相応しく、かつ動きやすい服装だ。ハルトの髪型もリオンがセットした。意外な才能である。
「この恰好なら動きやすいじゃろう?」
「うん。ありがとう。問題なく動けそうだよ」
「ちなみにその服は防刃、防魔、そして衝撃吸収仕様になっておるものを選んだのじゃ。不意の一撃でも一発程度であれば守ってくれるじゃろう」
「へぇ、そうなんだ。それなのにこんなに軽いんだ。そういう服ってもっと重いと思ってた」
「魔物を使った特殊繊維で編んであるからの。じゃから軽いんじゃ。特にその服はの——」
意気揚々とハルトに選んだ服の詳細について語りだすリオン。しかし魔物の知識に明るくないハルトにはほとんど理解できない用語がツラツラと並ぶ。どう反応したものかと悩んでいると、クイッと服の袖が引かれる。
「リオンの話長いから、適当に聞き流しとけばいいよぉ。リオン、魔物マニアなところあるからさ。魔物使って作られた服とかすごい好きなんだよ~」
「そうなんだ。全然知らなかった……」
「リオンってあんまり自分のこと話さないでしょ?」
「うん。そうだね。あんまりリオンの話って聞いたことないかも」
「やっぱりそうだよね……まぁ、リオンは主様のこと相当好きみたいだから、きっとそのうち話してくれるよ。色々と……ね」
「? う、うん」
「主様よ、聞いておるのか? せっかく話しておるんじゃ。ちゃんと最後まで聞くのじゃ」
「あ、ごめんごめん。えっと、それでどこまで話してたっけ」
「じゃからな。防魔の部分に使われておるのはマジックフォックスと呼ばれる特殊な魔物で、こやつは主食が魔力なのじゃ。それだけでなく魔法まで喰えるという能力を持っておって——」
少し含みを持たせたロウの言い方に疑問を覚えたハルトだったが、そのことを聞く前にリオンが話を聞いていないハルトに気付き、無理やり話を聞かせる。結局リオンの話はそれから十分近く続き、いったいいつになったら終わるのかとハルトの顔にも疲れが見え始めた頃、部屋の扉がノックされる。
「っ! だ、誰か来たみたいだよ!」
「む、なんじゃ。これからがいい所じゃというのに」
「ま、まぁまぁ。その話しはまた後で聞くからさ」
それはハルトにとってはまさしく天の助けに等しく、そのチャンスを逃すまいとリオンの話を中断する。
訪ねて来た人はハルトの返事が無かったからか、再び扉をノックする。
「おいハルト? 着替え終わったのか?」
「イルさん? うん、もう大丈夫だよ!」
救世主はイルであった。イルはハルトが返事をするなり部屋のドアを開き部屋の中に入って来る。
「着替え終わってたならさっさと出て来いよ。ったくお前はホントに……って、なんだよ。人のことジロジロ見やがって」
ハルトの目はイルに釘付けになっていた。いつもはおしゃれな恰好というものからほど遠いイルだったのだが、今のイルは髪も整え、華美なドレスに身を包んでいた。うっすらと化粧をしていることも相まって、イルの美貌がいつも以上にはっきりと強調されていた。
思わず見とれてしまっていたハルトはハッとしてイルから目を逸らす。
「ご、ごめん。そ、その……綺麗だったからつい」
「は、はぁ!? 何言ってんだお前は! こんな恰好したくてしてるわけじゃねーからな!」
思いもよらぬハルトの言葉にイルは顔を真っ赤にして怒鳴りつける。そんなイルのことをリオンは面白くなさそうな目で見る。
「そういうわりには嬉しそうじゃがの。それよりも動きやすい恰好をするのではなかったのか? その恰好が動きやすいとはとても思えんのじゃが」
「え、あぁこれは実は——」
イルはドレスの腰の部分に手を当てると、パチンと何かを外す。するとドレスのスカート部分が落ちてイルの生足が露になる。しかしそれ脱げたわけではない。スカートの下はホットパンツスタイルになっており、動きやすい恰好になっていた。
「これ、着脱可能なんだ。有事の際はすぐ外せるようになってる。靴もできるだけ動きやすい奴を選んでる」
「む。しかしそんな薄着では防御力に欠けるのではないか? 妾が主様に選んだ服は——」
「あぁ、そっちも大丈夫だ。全く問題ないってわけじゃないけどな。この服には【防護魔法】がかけられてる。普通の服はもちろん、下手な鎧よりもずっと丈夫で頑丈にできてるよ」
「むむむ……」
完全に論破されてしまったイルは悔しそうな表情をするが、それ以上は何も言わない。
「これつけ直すの面倒なんだよな……よし、これで大丈夫か。いくぞハルト。もうそろそろ時間だ」
「う、うん。いよいよだね」
「あんまり緊張すんなよ。ってのは無理か。オレでも少し緊張してるくらいだしな。でも顔には出すなよ。できるだけ自然体でいろ」
「わ、わかった……」
「そう言いながらできてなかったら意味ねーだろうが。あぁもうほら、シャキッとしろ!」
イルはハルトの前にたつと、両手で軽くハルトの頬を叩く。
「色んな理由があって緊張すんのはわかるけど、ガチガチになってたら咄嗟の時に動けなくなるぞ」
「わかってるんだけど、やっぱりいざとなると……」
「はぁ、いいか? お前は一人じゃない。教会の人もサポートしてくれる。パールもそうだ。アウラもエクレアもいる。今ここにはいないけど、リリアだってお前に何かありゃすぐに駆け付ける。そういう奴だろ?」
「うん……」
「それにオレもいるんだ。なんかあったらすぐに言ってやる。だから安心しろ」
「イルさん……」
「あぁもうほら、行くぞ!」
赤くなった顔を隠すようにハルトに背を向けてイルは部屋を出て行く。そしてハルトもその後に続いて部屋を出るのだった。
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次回投稿は2月23日18時を予定しています。




