第181話 怠惰の『煉獄道』 1
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暗い空間に突如現れた炎の道を辿るように進むハルト。しかし歩いても歩いてもどこかにたどり着くという気配があるわけでもない。
「なんなんだろう……ここ」
足元の炎しか光源はなく、それ以外は一切の暗闇。そんな状況がハルトの心に少しずつ負担を与える。誰にも頼れないという状況も、ハルトの心に負担を与える要因の一つになっていた。
「そう言えば……本当に一人になったのって久しぶりかも。いつもは大体リオンは姉さんが一緒にいたし……はは、ダメだなボク。こんなんだからガル君に立ち向かうこともできなかったんだ。よし! 先に進もう!」
気合いを入れ直すように自分の頬を三度叩いたハルトは思い切って走ることに決めた。このままずっと歩いていても何もわからないと思ったからだ。
「走ればどこかに着くかもしれないしね」
軽く準備運動したハルトは炎の照らす道を思い切って走り出す。その直後のことだった。ハルトの目の前の足場がフッと無くなったのだ。
「へ——うわぁあああああああっっ!!」
走っていたハルトが急に止まることなどできるはずもなく、ハルトはそのままの勢いで穴へと落ちてしまう。落下している時特有の浮遊感に襲われたハルトは情けない叫び後を上げながら落ち続ける。
「あぁあああああああっ——って、え?」
不意に落下速度が緩まる。しかし、別に地面にたどり着いたというわけではない。ハルトはいまだに落ち続けている。
「どういうこと?」
わけのわからない状況に疑問を浮かべるしかないハルトだが、落下し続けているハルトはただ身を任せるしかない。しかし落下速度が緩まったことで周囲を観察する余裕ができた。ゆっくりと周囲を見回したハルトは誰かが自分のことを見ているということに気付く。
「……誰?」
しかもその視線は一つではなく、どんどんと増えて行く。気付けばハルトは全方位からの視線を感じるようになっていた。しかし辺りが暗いせいでその視線の正体がわからない。
「別に敵意は感じないし……大丈夫……なのかな?」
正体がわからないことは不安だったが、ハルトから何ができるということもなく相手も何もしてこない。だからこそハルトは大丈夫だと思うしかなかった。ハルトに向けられる視線はそれからもずっと増えていき、居心地の悪さが頂点に達しようとしたその時ハルトは地面へとたどり着いた。
「ここが一番下なのかな。今度は急に地面抜けたり……しないよね?」
ゆっくりと立ち上がり、周囲を警戒するハルト。先ほどのように急に地面が抜けられたら困るとハルトは周囲を丁寧に確認する。そして気付いた。ハルトの周囲に魔法陣のようなものが描かれているということに。
「なんだろうこれ——ってうわっ!」
何気なく地面に手を触れるハルト。すると変化は訪れた。魔法陣が眩い光を放ち始めたのだ。あまりの眩しさに目を覆うハルト。やがて光が収まった頃にゆっくりと目を開けると、そこには先ほどまでと全く違う光景が広がっていた。
「……扉?」
ハルトの目の前に現れたのは七つの扉だった。しかし七つあるうちの六つは鎖で固く閉じられていて、押しても引いてもビクともしなかった。
そしてハルトは残った一つ『怠惰』と書かれた扉の前に立つ。
「ここに入ればいいのかな?」
恐る恐る扉に手をかけ、ゆっくりと開く。重厚な扉は錆びついてしまっているようで、相当力を入れなければ動かすこともできなかった。ふぬぬ、と気合いを入れながら一生懸命扉を開くハルト。
「い、よい、しょっ!!」
なんとか扉を開いたハルトはその中へと入る。ハルトが中に入ると同時に扉が独りでにガシャンと音を立てて閉まる。慌てて振り返り、扉を開こうとするハルトだが今度は全く開く様子はない。
「閉じ込められた!?」
押しても引いても、殴っても蹴っても扉には傷一つつかない。むしろ扉を開こうと躍起になるハルトの方にダメージが蓄積していた。それでも扉を開こうと手段を模索していると、不意にハルトは肩をトントンと叩かれる。
「え……うわぁっ!?」
振り返ったハルトの目の前にいたのは見上げるほどに巨大な熊だった。思わず逃げようとするハルトだが、後ろの扉は固く閉ざされ目の前には熊。左右は壁になっているため、逃げることもできない。
「っ!」
やられる! と防御の姿勢をとって思わず目を瞑るハルトだが、しばらく経っても攻撃されることは無かった。いなくなったのかと思ってゆっくり目を開けるハルト。しかし熊は依然としてハルトの前に仁王立ちしたままだった。
「?」
「…………」
熊はハルトのことをジッと見つめているだけで何をしてくるというわけでもない。
「えっと……君は?」
「…………クマ」
「クマ?」
思い切って話しかけたハルトだったが、明確な答えを期待できるはずもなく。熊は小さく鳴いただけだった。ハルトにはなんと言っているか理解することもできない。訳が分からず困っていると、熊はのそりのそりと歩き始める。そして数歩先で振り返ると、ハルトにチラリと視線を送る。
「ついて来いってことかな」
「…………」
しかし熊が返事をするはずもなく、またのっそりと歩き始める。少しの間悩んだハルトだったが、思い切って熊の後についていくことに決める。どこにたどり着くのかわからないことを若干不安に思いながらハルトは熊の後を歩き続ける。
熊の後について行った結果、ハルトは今度は別の扉の前にたどり着く。
「…………クマ」
「えっと、開けろってことでいいのかな?」
「……マ」
「うーん……わかった。いくよ」
熊に促されるままに扉を開くハルト。その先に広がっていた光景に、ハルトは思わず目を見開く。
「こ、これは……ここは……ルー……ラ?」
扉の先にあったのは、ハルトの生まれ故郷であるルーラだった。
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次回投稿は1月16日21時を予定しています。




