第168話 イルの兄達
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一緒に遅めの昼食をとることになったハルトとイル。ハルトはご飯を食べながらなぜ昼食が遅くなったのかの理由についてイルに話した。
その理由を聞いたイルは大きくため息をついて呆れたように言った。
「そんで、リリアにボコボコにされてへこんでがむしゃらに修行してたってのか?」
「ま、まぁ……そういうことになる……のかな? たぶん」
「たぶんじゃなくてそうなんだろ。ったく、情けねぇなぁお前」
「おい貴様、主様のことを馬鹿にするなよ」
「馬鹿にしてるわけじゃねぇよ。ただ事実を言っただけだ」
「それはそれで辛い気がする……」
「お前、本気でリリアに勝てるとか思ってたのか?」
「勝ちたいとは思ったし、前より力はつけたから可能性はあるかなぁ……なんて。まぁ、結果は話した通り手も足もでなかったわけだけど……」
「そう思うところが馬鹿だって言うんだよ。あいつとお前じゃ戦ってきた年期が違うだろ。お前が剣を持って戦い始めたのは今年に入ってから。あいつはずっと昔から戦い続けてたんだろ。その差をこんな短期間で埋めれるわけないだろーが」
「う、そうだよね……やっぱり考えが甘いかぁ」
「《勇者》だからってすぐに強くなれるわけじゃない。確かにお前の成長速度は速いけどな。まだあいつを超えれるほどじゃない。それに……」
「それに?」
「リリアにも姉としての矜持があるだろうからな。そう簡単に負けたくはないだろうさ」
「なるほどの。それは言えておる。あやつ、負けず嫌いな感じが滲み出ておるしの」
「強くなりたい。そう思うのは悪いことじゃない。いつ何があるかわからないから早く強くなりたい気持ちもわかる。でもその焦りはお前の成長を妨げるだけだ。まぁ、お前の周りには強い奴が多いからな、焦る気持ちもわかるけどな。いったん落ち着いて、足元見ろって話だ」
「「…………」」
「な、なんだよお前ら。ジッとのオレのこと見やがって。なんかついてんのか?」
「そういうわけじゃないよ。ただ、その……」
「イル、お主……お人好しじゃの」
「ぶっ、は、はぁ!?」
「主様を想ってのその言葉。なかなか良き言葉じゃったぞ」
「ちが、違うからな! ハルトの野郎があんまりに馬鹿だから……お前もニコニコしてんじゃねぇ!」
「ご、ごめん。でもそういう風に言ってくれるのが嬉しかったから。そうだよね。イルさんの言う通りだ。焦っても良いことなんてないよね」
「ふん、わかりゃいいんだよ」
照れたように顔を赤くしてそっぽを向くイル。そんな様子を見て、頬を緩めるハルトは不意にあることを思い出す。
「そういえば……イルさんにもお兄さんがいるんだっけ?」
「ん……あぁ、いるぞ。二人な」
「どんな人なの?」
「…………」
「あ、言いにくいんだったら別にいいんだけど。ごめん、変なこと聞いちゃって」
ハルトがイルに兄の話を振った瞬間、イルの表情が曇る。それを見たハルトは慌てて取り繕う。
「はっ、別に言いたくないわけじゃねーよ。隠してるわけでもないしな。っていうか、オレの兄さんはそれなりに有名人なんだが、全く知らないのか?」
「ごめん……知らないや」
「はは、そういうの疎そうだしな。別に話してやってもいいけど、そんなに面白い話はないぞ」
「いいではないか。妾もお主の兄君がどういった人なのか興味はあるぞ」
「……まぁいいか。もしかしたら今後会うこともあるかもしれないからな。知っといて損はないだろ」
リオンからも話を聞きたいと言われたイルは、軽くため息をついて自身の兄のことについて話しだす。
「オレの一番上の兄さんの名前はグレル・マースキン。簡単に言うと……完璧主義者だな。頭は良いし、剣の腕は一流。子供の時からもう大人を圧倒してたって話だ。自分がなんでもできるからなのか、できないってことを許さない人だよ。オレも子供の時はかなり怒られた。次男のドレッド兄さんは……グレル兄さんとは違って適当な人だったな。女にもだらしなくて……そんなんだからか、グレル兄さんとドレッド兄さんはめちゃくちゃ仲が悪くてさ。ドレッド兄さんはなまじ優秀なだけに余計に腹が立ったんだろうな」
「イルさんは?」
「え?」
「イルさんは……お兄さん達と仲が悪かったの?」
「……仲が悪いと言うか……興味を持たれてないって感じだな。オレは……落ちこぼれだったから。何しても兄さん達に及ばない。剣も、勉強も、人を率いる能力も。グレン兄さんはオレのことが嫌いだっただろうな。ドレッド兄さんは……わかんねぇな。会えば話すけど、オレから声を掛けるようなこともしなかったし。そもそもドレッド兄さんは家にいることの方が少なかったから」
「イルさん……」
「あ、別に同情して欲しいわけじゃねぇぞ。別にだからどうってわけでもねーし。今は……もう関係の無い話だからな。ただ、兄弟ってのはそんなもんなんだ。むしろお前とリリアみたいに仲が良い方が不思議だよ」
「関係が無いってどうして?」
「オレは……マースキン家から絶縁されたからな。ただそれだけだ」
「え!?」
「絶縁とは穏やかではないのう。なぜそんなことになったのじゃ?」
「オレが《聖女》に選ばれたから……だろうな。まぁ色々あるってことだよ」
「そんな……」
「あぁもう、この話は終わりだ、終わり。もういいだろ。とにかく、今後兄さん達と会うようなことがあったら気をつけろって話だ。ドレッド兄さんはともかく、グレル兄さんは気難しい人だからな。何して機嫌損ねるかわかったもんじゃない。それにグレル兄さんは……第一王子派だ」
無理やり話を切ろうとするイル。ハルトはなおも言い募ろうとするが、それよりも先にイルが立ち上がる。
「ごちそうさまでした。それじゃあオレはもう戻る。この後も仕事が残ってるからな。そのうちお前にも声がかかるだろうから、準備だけはしとけよ。街の方に行くときは誰かに声を掛けてからにしろ。急にいなくなられても困るからな」
一方的に言いきって、イルは席を離れていく。その背に声をかけようとするハルトだが、なんと言えばいいのかわからずただ見送るだけになってしまうのだった。
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次回投稿は12月10日21時を予定しています。




