表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/377

第九十話 二つの採取地


 冒険者ギルドで【鉄の歯車】さん宛てに依頼をし、採取のための買い出しを行った――その次の日。


 今日は採取へ向かう日のため、いつもよりも早く起床。

 集合時間が早いため、日課となっている朝のトレーニングは行わずに、ダンベル草カレーだけを出発前にしっかりと食べる。


 朝のトレーニングを行わない――で思い出したのだが……この一ヵ月間、毎日庭で剣を振っていたからか、ランニングしている王国騎士団の鎧を身に着けたお姉さんからの視線を、ここ最近強く感じるようになった。

 今までは俺が一方的に視線を向けていたのだけど、最近は向こうが見てくるため、俺から視線を向けれなくなってしまったんだよな。

 まあでも一ヵ月もの間、ランニングコースで剣を振っている奴がいたら、流石に目にも止まるか。


 ……と、そんなどうでもいいこと考えていないで、早く準備をして集合場所である冒険者ギルドへと向かおう。


 ライトメタルのプレートを身に着け、しっかりと振れるようになった鋼の剣を左側の腰に差す。

 それから【断鉄】で作成してもらった、アングリーウルフのナイフも腰のホルダーにセット。

 最後に昨日、買った物を詰め込んだ鞄を背負って準備完了だ。


 【鉄の歯車】さんたちは来るのが早いから、早めに出ないと待たせることになる。

 俺は急いで冒険者ギルドへと向かった。



 俺は予定の時間よりもかなり早くに辿り着いたのだが、冒険者ギルドの前には既に【鉄の歯車】さん達がいた。

 なんか毎回、俺が遅れている気がするな。


「おーいっ!ルインッ! こっちこっち!」


 やってきた俺を見つけたライラが、大きな声を出しながら笑顔で手を振っている。

 朝から元気だなぁと感心しつつも、俺は走って四人の下へと向かった。


「ごめんね。また遅れちゃった」

「全然遅れてないって! 予定の時間よりも大分早いでしょ?」

「そうですよ。僕たちが早く来すぎているだけですから」


 ライラと、錯乱していた昨日とは違って、俺の知っているいつものポルタが、気遣いの言葉を掛けてくれた。

 そんな二人に割って、真剣な表情で俺に声を掛けてきたバーン。


「ごめん。いきなりだがいいか? 今日の採取地がナバの森となっていたけど、なにか理由があったりするのか?」

「うん。昨日、受付嬢さんに聞いたんだけど、まだコルネロ山が元の状態に戻っていない可能性があるって聞いてさ。ナバの森には行ってみたかったし、今日はそっちで依頼を出してみたんだよ」


 俺がバーンの質問にそう答えると、なにやらバーンは難しそうな表情をした。

 その表情に対し、俺が不思議に思っているとニーナが話を始めた。


「……ナバの森は危険度で言えば、確かにコルネロ山よりも低いんですけど……一つ懸念点がありまして、ナバの森にはブルータルコングと言う魔物が生息しているんです」

「うーん? ……話の流れ的に、そのブルータルコングって言う魔物が危険……とかなのかな?」

「……ええ、そうですね。ブルータルコングはアングリーウルフよりも危険とされているBランクの魔物です。……矛盾しているように聞こえると思いますが、Bランクのブルータルコングが縄張りにしているからこそ、ナバの森は危険度が低いんですけど」


 なるほど。

 ニーナが言いたいのは、ナバの森はブルータルコングにさえ気をつけていれば危険度は低いけど、ブルータルコングに遭遇し襲われた場合は、アングリーウルフのいるコルネロ山よりも危険だと言うことだろう。


 ……俺はナバの森の方が危険度は少ないと言う受付嬢さんの言葉で、ナバの森に決めたのだが、これはかなり難しい問題だな。


「【鉄の歯車】さん的には、どっちの方が危険じゃないとかってあるの?」

「正直、難しいね! ルインも知っていると思うけど、アングリーウルフは基本的には群れで行動するから単体ではCランクかもしれないけど、群れに襲われたら危険度は跳ね上がるからね! ルインの行きたい方でいいと私は思うけどっ!」

「俺はライラと違って、コルネロ山をオススメしたい。アングリーウルフならまだなんとかできるビジョンが見えるからな」

「僕もバーンさんの意見に賛成ですね。ブルータルコングに遭遇したら、本当に逃げる以外の選択肢が取れませんから」


 ナバの森の方が安全だと思って依頼を出したのだが、バーンとポルタの二人がそう言うならコルネロ山でいいな。

 依頼内容の変更になるけど、両者合意なら大丈夫だろう。


「それじゃ、コルネロ山でお願いします! 俺はコルネロ山の方が危険だと思って、ナバの森にしただけで、コルネロ山の方が安定するなら俺もコルネロ山の方がいいからさ!」

「そう言って貰って助かります。それじゃ、早速コルネロ山に行きましょうか」


 こうして、今回も採取地はコルネロ山に決まった。

 ナバの森にも正直行ってみたかったが、コルネロ山の方が採取出来るものとかを知っているから、より効率良く採取は出来るだろうしな。


 久しぶりの植物採取、楽しみだな。

 高値で売れるグルタミン草を採取したいし、新種の香辛料も見つけたい。

 魔力草も大量に採取したいし、ダンベル草も見つかってくれれば魔力に余裕が出る。

 

 コルネロ山で採取したい植物のことを色々と考えながら、俺達はグレゼスタを発ったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、コミックウォーカーに飛びます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、コミックウォーカーに飛びます! ▲▲▲ 
― 新着の感想 ―
[気になる点] まぁ、ひょろひょろした少年が、ひと月で剣を振れるようになってたらガン見しますよね。 んー、ゴリラの方は縄張りに入らなければ大丈夫とかでオススメされたんじゃないのかな?ある程度ギルド…
[一言] 「ニーナが言いたいのは、ナバの森はブルータルコングにさえ気をつけていれば危険度は低いけど、ブルータルコングに遭遇し襲われた場合は、アングリーウルフのいるコルネロ山よりも危険だと言うことだろう…
[一言] 女の子みたいなヒョロっこい少年が毎日素振りしてて 見る度にだんだんムキムキになって素振りもサマになっていったら そりゃー見ますよね ましてやランニングとかしてるストイックな騎士さんならなおさ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ