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第十五話 三日目も終わり……


 スマッシュさんと一緒に拠点へと戻った俺は、ディープボアというまたしても巨大な獲物を狩ってきたアーメッドさんにすぐ捕まってしまった。

 それからは良いように言えば食事をご馳走、悪いように言えば強要され、再び満腹の末その場から起きることができずに一夜を過ごし、俺はコルネロ山植物採取の二日目を終える。

 

 三日目も二日目とはほぼ動きは変わらず、植物採取を行ってからアーメッドさんに食事をご馳走してもらい、また植物採取と言うハードスケジュールをこなしていった。

 自分でも、アーメッドさんからのお肉の誘いを断るべきだとは分かってはいるんだが、決して悪意を持ってやっている訳ではないからな。

 それ故に質が悪い部分でもあるのだが、今までの俺の身の回りの環境を思い返すと、人からの好意はどうしても無下にはできない。

 食事も頂け、それがお肉となったら尚更だ。

 

 そんな考えの下で残りの時間も過ごしたのだが、なんとか体調も崩さずに三日目も終えることが出来た。

 いよいよ明日でこのコルネロ山での植物採取も終わる。

 想定の倍以上の植物は採取出来ているし、なによりも護衛をしてくれた【青の同盟】の皆さんが優しかった。


 ディオンさんとスマッシュさんは初日から気にかけ、良くしてくれたからもちろんのこと、アーメッドさんも色々と過剰な部分はあるが、決して悪い人ではないということは分かっている。

 恐らく、常人とアーメッドさんとでは測る物差しが違いすぎて、素行が悪く見えているだけなのだと、俺はこの三日間一緒に過ごして感じた。

 

「おい、ルイン。まだ起きているか?」


 俺は恒例のようにお腹がパンパンで起き上がることすら出来なかったため、透き通るような綺麗な星空を見上げながら、一人で勝手にこの三日間の総括していたのだが、横からアーメッドさんが話しかけてきた。

 この時間はいつもなら既に酔っているはずなのだが、アーメッドさんの声はクリアに聞こえる。


「はい。起きてます」

「そうか、良かった。……それでどうだった? この三日間は」

「それはもちろん【青の同盟】さん達のお陰で、充実した三日間を過ごせました。本当にありがとうざいました」


 いつもよりもトーンが2つくらい落ち着いていたため、この場でアーメッドさんにもお礼を伝えておく。

 今、丁度考えていたことだしな。


「それなら良かった。俺は結構長いこと冒険者やってるが、ルインみたいな依頼人は初めてだったからこっちも楽しかったぜ」


 アーメッドさんから思わぬ言葉を貰った。

 どんな表情をしているのか凄く気になったが、この寝転んだ状態では暗くて表情が見えない。


「そうなんですか? 普段の依頼人がどんな人たちかは分かりませんが、楽しかったと言って貰えて嬉しいです」

「嬉しい? 本当にお前の感性が訳が分からねぇよ」


 少し笑いながらそう言ってきたアーメッドさん。

 俺からしたらよっぽどアーメッドさんの方が分からないのだが、これは本当にお互い様と言った感じなのだろう。


 当たり前のことだが、アーメッドさんにとっての普通は俺にとって普通じゃないし、俺にとっての普通はアーメッドさんにとって普通ではない。

 そもそも‟普通”な人間なんていないのかもしれないな。


「俺も楽しかったので、この感情が一方的な気持ちじゃなかったんだなぁって嬉しさですね」

「あっはっは! 理由を聞いても分からねぇな!」

「そうですかね? ……あの、こんなこと言ったら失礼になるかもしれませんが、また護衛の依頼を頼んでもよろしいでしょうか?」


 なんとなく感じた恥ずかしさを押し殺し、俺がそうお願いすると何故か変な間が開いた。

 返答が来ないことを疑問に思い、こちらから再び問いかけようと思った時、アーメッドさんの口が開いた。


「すまん。それは恐らく出来ない相談だ」

「それは……報酬の額が低いからですかね? それでしたら少しは増やせると思います」


 昨日の段階で金貨4枚分は稼げていたため、金貨6枚分くらいまでなら払えそうな気がする。

 【青の同盟】さんに護衛依頼を出せるなら、高くはない金額だしな。


「いや、額の問題じゃねぇよ。実は俺達、もうそろそろこのグレゼスタを離れるんだ」

「グレゼスタを離れる? 拠点を変えるってことですか? それは一体どうして……」

「俺が【蒼の宝玉】ってパーティにいたことはディオンから聞いてんだろ? そいつらとちょいちょい俺がいざこざを起こしていてな。今まではランクの格下げって対応だったんだが、とうとう追い出し命令を食らっちまったんだよ」


 素行不良でランクの格下げをされていると受付嬢さんから聞いていたが、元パーティの人たちと揉めてのことだったんだ。

 パーティランクの格下げを行っても、いざこざが収まる気配がないから追い出し。


 まあ、十分に考えられることだとは思う。

 普通なら両方にペナルティだろうが、冒険者ギルドからしたらEランクの【青の同盟】とAランクの【蒼の宝玉】ならば、Aランクの【蒼の宝玉】を優先するはず。

 そのため、【青の同盟】が出て行くことになってしまったのだろう。

 理屈が分かっていても悲しいことには変わりがない。

 せっかく仲良くなれたと俺は思えたのに。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] ついて行けばいいのでは?別にこの街に愛着がある訳でもないだろうし……
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