アルバイト探し 〜麗華視点〜
彼が自分の部屋へと向かった後、私は先程の会話を思い返していた。
家に帰ってくると侑士と2人きりだったため、昨日の話題に上がったアルバイトのことについて尋ねることにした。
彼にアルバイトのことについて色々質問していくと、もうアルバイト先が決まったのだという。どこなのか聞くと、お嬢様である九条さんの家で執事のアルバイトをするのだという。
その時点で何かあるのではないかと感じた私は更に詳しく話を聞き出していった。条件なども詳しく聞いていくと、一高校生とは思えないほどの高待遇だった。
ますます不信感が募るが、それは雇い主である九条さんに聞こうと思い、彼に聞けることについて質問していく。
そうして聞いていき、そもそもなぜアルバイトをしようと思ったのかについて尋ねると、
「社会勉強のため」
というごく普通の回答だった。だが私は見逃しなかった。ごく一瞬だけ彼の視線が泳いだのだ。彼は人が良すぎるせいで、嘘をつくのが下手である。かなり顔に出やすいのだ。私はそういう優しく、実直なところを好ましく思っているが、何もそれがいいことばかりではない。
彼は騙されやすい性格をしているのだ。だから彼が騙されないように私も高校では細心の注意を払っているし、生徒会に呼び出したりして本人から様子を聞いているし、彼のクラスの子を生徒会に入れて彼の周辺の様子を聞き出している。今は誰とでも距離を置いているようだが、彼の土台は変わっていない。だから私がずっと彼を守っていかなければならないのだ。何故かそう強く感じる。
そのことを再確認したときの晩には決まって怖い夢を見る。
その夢の中では侑士が私のことをお姉ちゃんと呼んでいるのだ。そして、写真でしか見たことはないが母の再婚相手である義父も一緒にいる。楽しいということがわかる。けれどその夢は唐突に暗くなる。何か闇の濁流に飲み込まれるような。
そしていつも目が覚めた時に残るのは怖かったという感情だけなのである。内容は何か楽しい夢だったとも感じるが、すぐに暗い闇に侵食されて思い出せなくなる。彼のことを考えた時の夜は決まって同じ感情を抱く。
今日も起きると、朝早く学校に向かう。文化祭が近づいてきている事もあり、やることは山積みだ。
それとは別に侑士のアルバイトについても調べなければならない。九条さんに雇った真意を問いただし、侑士のアルバイトがしたい本当の理由も考えなければならない。
そんな風にやることを確認しながら私は学校へと向かった。
お読みいただきありがとうございます。競馬で初っ端からメンタル逝かれました。




