2 G組メンバー集合
とりあえず、各自剣道具は道場へ先に持って行き、他の荷物は自分の部屋に置きに行くことになった。僕の泊まる部屋は二人部屋で、槇村先輩との相部屋になる。しかしきちんとベッドもふたつあり、バス、トイレまでついている。狭いということもなかった。部屋の中も小綺麗で、アメニティ関係も充実していた。やはりこのあたりはさすが秋庭学園だ。少しの休憩を挟んでから、僕たちは剣道場に行くことになっていた。
それまでの休憩時間、僕たちG組のメンバーは食堂に集まっていた。これからの行動について、確認をしておくためだ。
まだ昼食には早いので、食堂内はがらんとしている。厨房のほうではすでに合宿所のスタッフの人が忙しそうに立ち働いているが、それ以外は静かなものだ。そんな食堂の端のほうの一角に、僕たちG組のメンバーは集まっていた。
「なんかちょっと修学旅行っぽくて楽しいじゃん」
一番角の席に座っていた相田が、そう口を開いた。
「あ、それは言えてるかも」
沙耶ちゃんまでそんなことを言っている。
「おい。ここってビュッフェなんだよな。それって食べ放題ってことだよな」
幸彦は、もう昼食のことで頭がいっぱいのようだ。
「お前、バスの中で寝てただけだろ。食う寝る遊ぶ、しか頭にないのか」
僕はそう言ったが、幸彦はまるで気にしていない様子だった。美周はというと、そんな幸彦にちらりと冷たい一瞥をくれただけで、すぐに視線を背けていた。
小林も、急遽この集まりに参加することになった。事情をかいつまんで説明すると、小林は目を大きくして驚いていた。
「さて、諸君」相田が漂い始めた緩い雰囲気を打ち消すように、ぴしりとそう言った。
「一応、このあとのそれぞれの行動を確認しておくんだったな。ずっと行動を共にするわけにもいかないから」
「わたしと小太郎ちゃんは、これから剣道部の活動に行くことになってるよ」
「俺もバレー部にかかりっきりになる予定。予知夢のことについては知らなかったとはいえ、ほとんど協力できそうになくてごめん」
小林がそう言うと、沙耶ちゃんは首を横に振った。
「全然いいよ。というか、こっちこそごめんね。小林くんも忙しいのに、いきなりこんなことに巻き込んで」
「それは別にいいよ。逆に俺としても、なんでG組がみんなして集まってるのか気になってたからさ。それに、ちょっとでもなにか手伝えるようなことがあったら手伝うし」
「ありがとう小林くん」
沙耶ちゃんは嬉しそうに頷いた。そのやりとりが終わったことを見て、相田が口を開く。
「あたしもこのあとは写真部の活動してるよ。といっても、写真部は割と自由がきくから剣道部のほうもちょくちょく見てるつもりだけど」
美周はちらりと僕に目配せをしてからこう言った。
「僕と幸彦は、例の沢を中心に周辺を見て回る。幸彦が役に立つかは微妙だが、まあ、いないよりはましだということにしておこう」
美周のその言葉に一瞬幸彦の目つきが変わったが、美周が有無を言わせぬ迫力で睨み返すと、すぐに目を逸らした。幸彦がこんなにおとなしいとは、どうやら美周は幸彦の弱みを固く握っているようだ。
「みんな、本当にありがとう。わたしのためにいろいろ協力してくれて」
沙耶ちゃんが申し訳なさげにそう言った。
「なに言ってんの。友達なんだから当たり前でしょ」
「そうだよ。そんなこと気にしなくていいよ」
「沙耶くんのためなら、僕はどんな協力も惜しまないよ」
相田と僕と美周がそう次々に口にする間、小林は微笑しながら頷き、幸彦はじっと厨房のほうを見つめていた。




