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15・ある意味正直でよろしい

( ・ω・)章が増す毎に話数が増えて

いきますが、話がうまくまとめられない

とかそういう事ですので(諦め)



日本・とある都心のマンションの一室―――


珍しく父親が、一人暮らしの娘のマンションを

訪れていた。


「あ、パパ! いらっしゃい」


女神は飛びつくように軍神に抱き着くと、

彼もそのまま娘の髪を撫でる。


「フィオナ、元気にしていたかい?

 たまには神殿じっかに戻っておいで。


 ナヴィ、お前も調子はどうだ?」


ユニシスはまずフィオナに言葉をかけ、続けて

お目付け役を気遣う。


「私は別段変わりなく。

 あちらも、いつも通りと言えばいつも通りで……


 そういえば、ユニシス様お一人ですか?」


「ん? いや、ママもすぐに来るよ。

 食材の買い出しに行っているから」


それを聞いて、娘は笑顔で喜びを表現する。


「やったー!

 ママの手料理は久しぶりです!」


そんな彼女の姿に父親は目を細めるが、

少し咳払いをしてフィオナと相対し、


「手料理といえばフィオナ、この前ママと一緒に

 『ばれんたいんちょこ』なる物を作ったとか

 聞いたが……」


「あ、アレですか……アハハ……

 ちょっと失敗しちゃってですねー」


「いやいや、娘の手料理というのは親に取っては

 特別で嬉しいものだ。

 何、どんな物でも味付けが愛情なら美味しいはずさ」


ナヴィはそのやり取りを聞いて冷蔵庫へ向かい、

人間の姿に戻って上の冷凍室を開け―――

お目当ての物を皿に乗せて、テーブルに座る

ユニシスの前に差し出した。


「ぐるるるるるるるるる……」


葉を放射状に鳥のクチバシのようにさせた

異形の植物のそれは―――

寒さで弱っているのか、そこから小さく

うなり声をあげる。


「えっと、何、これは?」


さすがに軍神ユニシスは動揺を隠せず問い質す。


「ユニシス様の所望された、フィオナ様の

 バレンタインチョコ(元原料)でしゅ」


「せつこ、これ娘の手作りお菓子やない。

 生物兵器や」


頭を抱える父親、気まずそうにする娘、冷静に

状況を見守る従僕の少年というカオス空間に、

一人の声が割って入ってきた。


「何してるのよみんな。

 あー、何出してるのよ、しまってしまって」


荷物を置くと、すぐにテーブルにある

異形が乗った皿を片付ける。


「ホラ、あんたも大人しくしないと

 豆食べさせるわよ?」


「くえぇええええええ……」


たしなめるように異形に注意し、また異形も

それに応えるように弱々しくうなる。

それを見て夫は首を傾げ、


「?? どゆこと、ママ?」


「あー、あの後いろいろと対応出来ないか

 試したんだけどね。

 どうも豆全般が苦手みたいなの、このコ」


「豆なのに!?

 元カカオ豆なのに!?」


娘も自分が生み出した物ながら驚いた体で―――

それをお目付け役(人間Ver)は慣れた目で

見ていた。


「しゃて、そろそろ本編スタートしましゅよ」




│ ■マービィ国農業特区・研究試験所内  │




無機質な一室で、男が3人―――

書類を交えながら話し合っていた。


「契約はどうなっている?」


「マービィ国とグレイン国との間で―――

 『相場通り』の値段で取り引き出来るように

 なっています。

 いずれにしろ、連合国内の相場を大きく

 超える事はありませんねぇ」


ファーバの軽口にも似た答えに、質問した

マイヤー伯爵は軽く息を吐く。


「これでこの国はグレイン国のヒモ付き……

 もとい、経済的支配下に置かれるわけですな」


「お互いにそれを望んでいるのだから仕方あるまい。

 付き合わされる国民には気の毒だが」


姿勢を変えず、淡々とラムキュールの言葉に

達観したような感想を伯爵は漏らす。

それを外部から聞かれているとは知らずに―――


「王族が絡んでいるとは聞いてましゅたが……

 どうやら、密約でも結んでいるような感じ

 でしゅねえ」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




温泉宿で留守番をしていた女神は、お目付け役からの

神託を受け取り、回答する。


「それはレンティルさんも言ってましたね。


 でも―――

 『付き合わされる国民』というのは?

 やはり、『奉公労働者』の大量発生を

 意味しているのかしら?」




│ ■農業特区・研究試験所内  │




「狙いはそうだと思われましゅけど―――

 こちらは、しょの手段を知りたいわけで……


 とにかく、このまま情報収集を続けるでしゅよ」


雨除けにぶら下がりながら―――

周囲を警戒しながら聞き耳を立てる事に

彼は集中する。


「では、くれぐれも慎重にな。

 情報は多かれ少なかれ表に出るだろうが―――

 『その時』までは最小限に」


『新貴族』の言葉に、『枠外の者』2人は頭を下げる。


おおせのままに」


「相場もジワジワいくんじゃなくて、一気に動いて

 くれた方が―――

 こちらとしてもやりやすいですからねぇ」


固いイメージのラムキュールとは対照的に、

軽口のような会話を続けるファーバ。

そんな彼にマイヤー伯爵は軽蔑する視線を向ける。


「ずいぶんと嬉しそうだな?

 祖国がとんでもない事になるというのに」


「いやいや、申し訳ない気持ちでいっぱいですよ。

 こうしている今もいたたまれない思いです。


 ですが、変革に犠牲はつきもの。

 これでグレイン国と縁続きになるのであれば

 安い買い物―――

 そうじゃありませんかぁ?」


マイヤー伯爵はそのまま表情を変えず、

『帰るぞ』とひとこと言うと、部屋を退出した。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「アレ? 終わり?」


「(みたいですね。

 どうしますか? 誰か尾行します?)」


『う~ん』と声を上げ、ひとしきり悩んだ後、

女神はお目付け役に指示を出す。


「あっさり話が終わったという事は、

 別にもうこれといった話は出てこないんじゃ

 ないでしょうか」


「(本音は?)」


「これ以上難しい話が出てくる前に切り上げたいです」




│ ■農業特区・研究試験所内  │




「ある意味正直でよろしいでしゅ。


 それと確かに―――

 これ以上の深入りはしない方がいいと

 思いましゅ。


 少なくともあのマイヤー伯爵という人、

 タダ者じゃないでしゅよ」


女神の指示を肯定的に返し、ナヴィは

雨避けから身をひるがえして屋根に上り―――

その影を誰にも気付かれる事なく消した。




│ ■温泉街周辺  │




同じ頃―――

アルプとレイシェンは2人で、宿屋からそう遠く

離れていない市中を見回っていた。


「そうですか。

 アルプ殿は、母上がバクシアへ連れて行かれて……」


「はい。ですが―――

 フィオナ様のおかげで、奉公労働者になった人たちと

 一緒に、お母さんを取り戻す事が出来ました」


どことなく、目的地など無い状態で歩き回って

いる間―――

まだフィオナ達と行動を共にして間もない彼女は、

第一眷属から詳しい情報を共有しようとして、

聞き役となっていた。


「苦労なされたのですね」


「い、いえっ。

 そのおかげでフィオナ様の眷属になれたような

 ものですし……

 それに、バクシア側にも侯爵様のような、

 いい人がいるってわかりましたから」


意中の人を出され、彼女は得意気になって応える。


「そうでしょうそうでしょう。

 羨ましい限りですよ、わたくしからしてみれば。

 もっと早く彼に出会えたらと思うと……」


「そうですね。後はまあ……

 いろいろな人がいるんだなー、とか」


アルプは頬に指を当てて急にトーンダウンする。

当然それはレイシェンの気を引き―――


「?? どうかしたのですか?」


「あ、いえその……何ていうか……

 同じ頃に、ネクタリンさんのご姉妹とも

 知り合ったんですけど」


言いにくそうにもじもじする少年に、彼女はその

人物を思い出し聞き返す。


「ああ、フィオナ様の第三の眷属になられた

 ポーラ殿と、その妹のメイ殿ですね。

 彼女たちが何か?」


「えーと……よく僕の事を気遣ってくれた方々

 なのですが……

 最初の頃、服とかを送ってきてくれたんですけど、

 その、間違えて女性の服を」


「…………」


どう答えたらいいかわからず、伯爵令嬢は沈黙する。


「僕は間違えが多い、そそっかしい人なんだなって

 思っていたんですが―――

 最近ミモザさんから、

 『アレは女性服しか送ってきてない』って……

 言われてみれば、その」


「確かに似合いそう……で、ではなく!

 まあ、人の好みもいろいろあるとは思われますが、

 あくまでも同意を得てからっていうか強制は

 いけないかとわたくしにも経験はありますが

 やはり本人の意思を尊重するか完全に隠し通すか

 どちらかで」


何か言葉を繋ごうとしてテンパってしまう

レイシェンに、背後から声が掛けられた。


「ここにいたんでしゅか。

 アルプしゃん、レイシェンしゃん」


2人は同時に振り返り、その顔を見て返事をする。


「あ! ナヴィ様」


「ナヴィ様、もう戻られたのですか?

 という事は……」


彼女の問いに、彼はコクッと頷いて―――


「その話は宿に戻ってからにしましょう。


 ある程度はフィオナ様と共有してましゅので、

 詳しい話はしょの時に」


そして3人となった彼らは、用心のために、という

レイシェンの意見を聞いて―――

30分ほど時間を潰してから、別々のルートで

戻る事にした。




│ ■温泉宿メイスン・最上級客室『光の間』  │

│ ■シンデリン一行宿泊部屋         │




「……よし、感覚が戻ってきましたね」


ベッドから起きていたネーブルは、手を握ったり

開いたりしながら、自分の体の調子を確認する。


そこへ、ちょうど温泉から戻って来た姉妹が部屋に

入って来た。


「ネーブル、寝てなきゃダメでしょう」


「……もう大丈夫なの? ネーブルお兄ちゃん……」


シンデリンとベルティーユが足早に近付き、心配そうな

声を掛ける。


「一日寝てましたし、これ以上は休めません。

 それにこのままだと、護衛としての役目が

 果たせませんし。


 ……? シンデリン様、それは?」


ネーブルの視線の先には、彼女が手にしていた

封筒らしき物があった。


「あーコレ?

 何か実家から手紙が送られてきたのよ。

 まったく、旅行先まで―――」


「いえ、しかし……

 何かあったのでは」


緊張した顔色になるネーブルに、ベルティーユは

いつも以上にゆっくりした口調で彼を諭す。


「……ん……もし緊急事態だったら……

 使者も来ると……思う……」


それもそうか、と彼は表情を和らげ―――

ベッドに腰をかける。

そして当然のように、ネーブルを挟むように

姉妹も座る。


「まあ、いいですけど……

 それで内容は?」


シンデリンは慣れた手付きで開封すると、

中身に目を通し―――


「はー……何よ。

 今回は絶対に関わらないって言ってあったのに。


 『奉公労働者』のオークションの準備と―――

 あと何コレ?」


そのまま手紙をネーブルに渡し、ベルティーユも

のぞき込むように一緒に内容を確認する。


「……??

 ……ここの……クルーク豆の……?」


「空売りの用意?

 でも、空売りって言ったら、相場が下がる事が

 前提のものですよね?」


2人の言葉にシンデリンは、隣りの彼の方に

頭を預け、


「どーでもいいわよ、両方とも放っておけば。

 私にはこっちの方が大事♪」


「ん……お姉さま、ズルい……」


姉妹はそれぞれのネーブルの腕をつかむと、

肩に顔を密着させ―――

少年が中心で困惑していた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3124名―――




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