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第56話 お前はなにを言っているんだ?

「卑怯だぁ? 言わねえよ。そんなもん」


 こめかみの出血を腕で拭う。骨まで達する怪我ではない。血は数秒で止まるだろう。


「それよか………そういうの持ってるなら早く出せよ。むしろもっと出せ。面白くなってきやがったじゃねぇか!」


「………おかしくなったのかな? 銃を前にして万策尽きたからって、自暴自棄になるのは早過ぎると思うけど」


「なにほざいてやがる。俺は正気だ。むしろこれくらいのハンデがあった方がいい。お前、弱そうだしな」


「まだ虚言が出る余力があったとはね」


 御影は無慈悲な発砲を続ける。横に体を投げ出して前転し、全力で疾走。


 人間のジャブの速度と拳銃の弾速では比較にもならないが、それくらいあった方が楽しめるのは事実だ。


 そして、今さら拳銃を取り出したからといい、少しくらいの脅威にしかならないという認識は、絶対に揺るがない。


 飛び道具に関しては、奏さんから教わった。彼女は銃に関する知識はそこそこ持っていて、対人戦においてと、ダンジョンにおける銃のメリットとデメリットを同時に説いてくれた。


 御影が握っているのはグロック17という銃だ。装弾数は十七発。三発を短く区切って放つ。片手のみの射撃ではあるが、狙いはいい。俺の足を狙って機動力を落とす作戦だ。


 対して、俺も短いステップで対応。走りながらスプリットステップを使い、左右前後に移動する。


 途中で何発か腕に掠ったが、その程度で臆するはずがない。



 俺は銃よりも、()()()()()()()を知っている。



「どうしたクソッタレ! もっとよく狙えよ!」



 拳銃を使う御影にとっては好条件なはずだ。


 なぜなら俺が少しずつ距離を詰めているからだ。近い場所にあるものほど狙いやすいはずが、挑発やフェイクを混ぜたステップに、今度は御影のエイムが間に合わなくなる。


 そして、十七発を撃ち終えた瞬間に一気に距離を詰めた。



「銃は弾丸が尽きたら終わりだ。それくらい考えて撃てよ!」



「く、くそっ………と言うとでも」



「思ってたぜぇ! ほらこれが最後の一発だなぁ!」



「なにィッ!?」



 距離を詰めるには斜めか直線しかない。御影はこの数秒で俺を分析し、隙を見せれば猛進すると結果を出したのだろう。


 撃ち尽くしたはずのグロック17から、あるはずのない弾丸が発砲されるも───俺はそれも読んでいた。多くの銃は薬質に一発充填することで、本来の装弾数より一発だけ多く撃つことができる。もう散々奏さんに聞いたことだ。御影のことだ。文字通り隠し玉として俺への迎撃に取っておいているだろうと確信していた。


 より身を低くしながら疾走。最後の一発を頭上に躱し、ついに御影のグロックの銃身を掴む。


「お前はスキルか、おもちゃに頼り過ぎなんだよ」


「ガッ!? ………なんだ、これは………」


「俺はスキルの使いどころを間違えない。スキルに頼り過ぎれば、他が疎かになるからな。今のお前みたいに」


 御影の手からグロック17()()()()()がこぼれ落ちる。


 銃身からグリップにかけて、歪に()()()()()()()()


「まだ、まだぁっ!」


「お?」


 御影は損壊したグロック17を捨てて、また別の銃を出す。だがまだ距離は近い。


 今度は撃たせない。全力で前進。一歩で追い付くと新しい拳銃の銃身を掴んで折り畳む。


「残念。それはブラフだ」


「………だろうよ」


 御影は片手で拳銃を抜いたが、もう片方の手はスクリーンに届いていて、これまでのものとは違う銃を抜き取った。


 自動小銃───AK-47だ。


 潰された拳銃を捨てると両手で握り、今度は細かくマズルフラッシュが弾ける。


 これがメイン装備らしい。表情でわかる。狂喜の笑み。これまでこの銃で何人殺してきやがったのか。


 側転で回避。御影は俺の動線を正確に読んで、銃口を横に移動させる。途中で逆立ち状態で両足を振り回すことで遠心力で停止。御影の火線から逃れた。


「まだまだこれだからだ。お前にはもっと踊ってもらわなくては。あの女たちが見ている前で蜂の巣になれっ」


 アサルトライフルを質量化させるのと同時に、マガジンも五本ほど抜き取ったのか。


 とても慣れた手付きで弾倉を変えて、迅速なリロードを完了させるとフルオートで弾丸をばら撒く。


 最初の掃射は遊んでいたのか、今度からは狙いがより鋭くなった。凶弾から逃れる俺は、確かに踊り狂うピエロのように見えるだろうな。


 狙いを定められぬよう、翻弄目的でアクロバティックな体捌きで射線から逃れるも、次第に足場や壁や天井が穴だらけとなる。


 AK-47の装弾数は三十発。フルオートでばら撒いてはすぐに尽きる。四本目を消費し、最後の五本目をリロードしたところで、御影は異変に気付いてトリガーを引く指を躊躇った。


「………おかしい」


「あ?」


「なぜ………当たらない」


「当たってんぞ。ほら」


 掃射を中断した御影に、腕と足を指さす。


 拳銃ならどうとでもなるが、自動小銃はキツいものがあった。避けられず掠った傷が何ヶ所かあった。


「………違う。僕が言いたいのはそんな傷ではない。普通の人間なら、とうの昔に致命傷を負って血飛沫を上げているはずだ。それなのに………なぜ、お前には当たらない!?」


「ああ、そういうことか」


 そろそろかな。と避けながら考えていた。


 御影が異変に気付くだろうポイントは、火線に晒された俺がいつまでも踊っていること。それから五メートル以内にいることくらいか。後者の、五メートルという距離だけは絶対に維持し続けた。左右に回避しようとも、円を描くように移動したからだ。


 そして前者だが、これは簡単だ。慣れているからだ。飛び道具というものに。常識的範疇なら、特に焦ることもない。


 だが、非常識的な領域にいる()()()()の装備は、俺はいつだって恐怖の対象だ。


「お前の弾は、途中で曲がらないな」


「え………曲がる?」


「増えないな」


「増え………は?」


「常に一直線だから、銃口見てれば射線は予想できる。けどあのひとの武器はなぁ。………信じられるか? 撃ったと思ったら増えるし。曲がるし。そんなのが一気に襲い掛かってくるんだ。それに比べれば、一般人が使って満足してるような銃じゃ、射線が素直すぎて怖いとも思わねぇよ」


「お、お前はなにを言っているんだ?」


「信じられねぇと思うけど、今の全部事実な。訓練とはいえ、何度殺されそうになったやら」


 だから俺は銃弾を避けられる。


 これまで俺が経験したものに勝るものはない。御影なんて特に。


「増える、曲がる………は、はは………そういう妄想を見たのか。しかし、増えもしないし曲がりもしないが、これなら避けられないだろう!?」


 再び掃射を開始する御影。


 二十発をすぐに撃ち尽くしたあと、その姿が消えた。スキルを使ったからだ。


「射線が素直と言ったが、これならどうかな?」


 背後で声がする。


 銃声。背中に衝撃。


「避けられるものなら避けてみろ!」


 左右で銃声。


 前後、頭上。計五発。


 最後に正面。残った五発を掃射。



「見えない場所からの狙撃なら、予想はでき、ま………え」



「お前みたいな捻くれた野郎の考えそうなことだよな。出てくる場所だって、もう癖も把握してるぜ。防ぐまでもない。()()()()()



「銃弾を、掴む………そんな馬鹿な!?」



()()()()の弾は掴めない。掴んだら種類によっては手が終わる。アサルトライフルの銃弾なんてこんなもんか。熱いだけじゃねぇか」



 俺が避けられるなら、掴むこともできる。


 なんなら、もうひとりの、近接格闘戦を仕込んでくれたひとの方が、もっと早いくらいだ。


ブクマありがとうございます!


大変恐縮ですが、日曜日の大量の更新のため、皆様の力をいただきたく!

ブクマ、評価、感想などで作者に「書けオラァ」と気合いを入魂していただければと思います! よろしくお願いします!

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