5話:退屈と動き出す歯車
とても短いです。
「はぁ、退屈ね」
闇と血に包まれた暗黒大陸にあるあるお城。
その中で、専用の大浴場に浸かっていた女がため息を吐く。
湯に浸かる女は二つの膨らみをふわふわと浮かしながら手足を精一杯伸ばし伸びをする。
ほんの少し気が紛れた女はしかし、直ぐにため息を吐く。
「あー、本当退屈だわ」
女はこれ迄、長い生を過ごしてきた。
長い生が苦になることはないが、どうしても退屈は感じてしまう。
「はぁ~。遊びまでは時間があるし、仕方ないわね。これで時間潰そうかしら」
「あっ」
女は手を伸ばして隣にある双丘の一つを揉みしだく。
大浴場には他にも女がいた。一人ではない。浴場を埋め尽くす程の女がお湯に浸かっている。
全員が頬を染めて脱力しているのはのぼせたのではなく、女と遊び終えたからなのだが、女は疲弊した者達を無視し、己の欲を満たすべく立ち上がり女達を貪る。
嬌声と噎せかえるような女臭に包まれた大浴場での饗宴も一時間程で終演を迎えてしまう。
「満たされないわね」
一時間足らずでは女の飢えはおさまらない。
「あの方が目覚めるまで後僅か......それまでこんなに苦しまないといけないのかしら」
もう少しでこの飢えは満たされる。
それでも、その間苦しむ事も女は嫌だった。
何か____何かこの退屈を紛らわせる出来事が起きないものか。
「......あらぁ、何かしらこれ」
闇に包まれた地で高い権力を持つ女はこの地では高い知覚力を持つ。
そんな、女の知覚に異物が侵入してくるのが引っかかった。
「ウフフフフ。行幸だわ」
異物が現れたのは女の領域だ。
ならば、他の六人にはまだ感知されていないはずだ。
異物が纏っているのは忌々しい神気の力。
これを他の者に託す訳にはいかない。
女の所に現れたのは女にとって幸いだった。
「いや、これも運命なのかもしれないわね」
女は立ち上がり浴場を出ると豊かな胸を締め付けるようなボンテージへと着替え、紫色の髪を人束にし、首からまわすように斜めへと流す。
「いずれにしろ、間もなく世界の歯車が回りだすわ。ウフフ、これで退屈が終わるわ。これで貴方の願いが叶うわよ____魔王ちゃん」
女は退屈等伺わせない喜色の笑顔を浮かべながら異物の元へと向かっていく。
次話から久しぶりの主人公サイドです。




