表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生(運命から逸脱した者)  作者: わたあめ
三章~レイドタウン~編
34/52

4話:作戦と獣人の過去

4話始まります。


台詞が長い所があります。

時間を遡ること少し、リュートが魔族の男と取引を成立させた直後の事。


「もし、俺の仲間を拐ったのが獣人だとしたら一気に絞れるな」

基本的に人間の国に来ている他種族は冒険者や商人だ。

それ以外の者らを含めてもこの街にいる獣人はそこまで多くはない。



「そうだな。だが私には大体の目星がついているぞ」

「なに?」

この魔族の男はもうニーナを拐った犯人に目星がついたらしい。


「恐らく犯人はこの街の領主だな」

「街の領主がか」

「フン、こんな娼婦共を売る街の領主なんだ、女好きで何らおかしくないだろ」

「まあ、…その領主は獣人でも飼っているのか」

「あくまで噂だが最近とても強い従者を連れているらしい」

「まて、それじゃあ領主が犯人の可能性はまだ低いぞ」

「話を最後まで聞け。…つい先日、獣人の女を仕入れた奴隷商人がいる。どうやら女は解散したばかりの盗賊団の頭領をやっていた者らしい」

男はこの意味がわかるかとリュートを見る。



「その解散した盗賊団のメンバーが領主の従者だと考えているのか」

「ああ、どちらもこの街にきた時期が近いから可能性は高い」

「確かに、それなら領主が犯人の可能性が上がる…どうやって確かめるか」

少し犯人の姿が見えてきた。さぁ、どうするか。

リュートは頭の中で計画をたてていく。


「これでいくか」

「何か思いついたのか?」

「ああ、お前の言う事があっていれば直ぐにでも実行できる」

リュートは作戦を魔族の男に話す。


「確かにお前の言う通りになるかもしれん、だが確実ではないぞ」

「わかっている。後々調整はするが今はこの方法でやるしかない」

「……分かった。だが忘れるなこちらも独断の取引なんだ。あまり私を頼るなよ」


「わかっているさ。俺もお前の今回の事で情報の重要さを改めて思い知ったんだ。もう失態はおかさない」


「なら、いいがな」

「ああ、……少し時間をかけすぎた。俺はもう戻る」

「わかった。私も貴様の言う通りに動こう」

「俺もお前の情報を信じて……獣人の女を買いにいく」

そしてリュートはギルドに戻りライム達が来るのを待っていた。



そして場所は奴隷商人に案内された獣人の前に戻る。


「アンタのようなガキが私を買う?。ハッ、冗談を言わないで」

「お金の事かい……それならおじさん!」

「ハイハイ、なんでしょう~お客様~」

揉み手をしたままリュートに近づく奴隷商人に訝しげな顔をする狐の獣人。


「ねえ、おじさんこの獣人ていくら?」

「ハイハイ~。金貨1000枚でございます~」

「お姉ちゃん僕たちが持ってきたお金は」

「大金貨10枚くらいよ」

「良かったな。ある…リュート、足りるぞ」


「なっ!!」

リュート等のやり取りを見て狐の獣人は驚愕する。


リュートはここに来るまでに見た奴隷達の値段が金貨100枚前後だった事を思い出す。10倍もあるのに即買いされたら確かに驚いてもしょうがないか。


「ではこの隷属の首輪をつけて下さい」

奴隷商人はごてごてした金属の首輪ではなく革製のチョーカーのような首輪を渡してきた。

「コレが隷属の首輪か」

「首輪のご説明はお聞きになりますか」

「はい、お願いします」

リュートは隷属の首輪の効果を知っている。 これはライムとフェリスに聞かせるためだ。


「では、隷属の首輪――その効果は簡単。首輪に刻んだ魔法陣が主に害を及ぼそうとするのを感知すると首輪が縮み絞め殺すというものです」

「っ!」「ぎりっ」

リュートの後ろでライムとフェリスが怒りを堪えてるのを感じる。

リュートは今回あえて二人に隷属の首輪について教えないでいた。

人間の醜さを二人にも知っておいてほしかったのだ。


「その禁止行動をどうやって感知するんですか」

「奴隷契約には主に対して害をくわえる事ができません。それを応用して魔法陣にお客様の血を混ぜてもらう事で主にし、奴隷が害をくわえようとすると首輪は察知できます」

「なるほど。それはあった方が便利ですね」


「ええ、そうでしょう。今回は初回ということでサービスしておきますよ」

「ありがとうございます」

「いえいえこちらこそ、またご贔屓にしていただくと嬉しい限りです」

「ええ、また来ますよ……」

絶対にね、リュートのその言葉は誰にも聞こえる事はなかった。



「くっ、私を買ってどうするつもりだこの変態のガキめ!」

ニーナを探すのに必死で、宿を取るのを忘れてたリュート達は近くの人が全然いないであろうボロボロの宿に来ていた。


「あなたは僕に何をしてほしいですか?」

顔を怒りで真っ赤にして叫ぶ狐の獣人にリュートが聞くと、そんなのこれしかないだろと獣人は大声をだす。

「そんなの解放されて自由になりたい。私が貴様にしてほしいのはそれだけだ!」


「それは裏切られた盗賊団に復讐するためですか? エメリア・アンジェーネさん」

「っ!! アンタ何でそれを……」

自分の事を知っているリュートにエメリアは困惑する。


「そんな事はいいでしょう。…あなたは解放されたいんですよね。いいですよ。あなたを解放しましょう」

「……何を考えてる?」

わざわざ大金を払ってまで買ったのに解放すると言うリュートの考えが理解できない。


「なっ、リュートさん!?」

「どういう事だ主殿!」

それは仲間である二人も同じだった。

この獣人を買ったのには訳があるはずだ。

それを解放してどうするのかと二人は驚く。


「いいんだよこれで、自由になりたがっているんだ。……自由に動いてもらえばいいよ」

「むう、主殿がそういうなら」

「……もしかして。…私も賛成です」

リュートの言葉に驚きつつも主の言うことだからと納得するフェリスと何かに気付いたライムが獣人解放に賛成した。


「お前、私の事も調べて大金を払ったのに何故解放する。何か企んでいるのか」

「何も企んでなんていませんよ。……でもそうですねあなたの事を教えてくれると嬉しいですね」

微笑みを浮かべながらリュートは言う。


「はっ、私の事を調べたんだろ」

「僕が知っているのはほんの些細な事だけですよ。貴方が復讐が目的というのはただの当てずっぽうですよ」

リュートのその言葉が本当かは獣人には分からない。


「はぁ~、わかった。解放してくれるなら何でも話そう」

「とても賢明ですね。ではまずはあなたの盗賊団が解散した理由を教えてください」


「ああ、長くなるよ。……私達の白金狐族は今では数人しかいないんだ。そんな私達は違う集落に行くしかなかった。そして私達姉弟が行ったところでは盗賊業を行っていた。それからは大変だったよ。誹謗中傷は当たり前、盗みに失敗したら罰として拷問並みの暴力を受ける日々。そりゃもう何度死のうと思ったか。いや、弟がいなければ私はとっくに諦めていたね。弟のためにも私は必死で頑張ったよ。七歳から盗賊団に入ってから七年で頭になってこれでもう何も心配は要らないと思っていた。だけどそれから2年後、今から10日程前に突然弟が殺された。犯人は盗賊団の全メンバーだったよ。どこぞの領主からたんまりと報酬を貰えるとの事で裏切ったのさ。そのあと私は売られて今に至るというわけさ。私はあの領主と盗賊団のメンバーを殺さなければならない。それが私の復讐だ」


「そうですか。大変でしたね」

これで領主と獣人が組んでるのは間違いないな。あとはニーナがそこにいるかだ。

……それにしても思った以上の復讐の理由があったな。これならいけるかもしれない。


「ふん、思っても無いことを」

エメリアはリュートが自分の話に何も感じてないのに気付いていた。

別に同情をしてほしいわけではないがこの少年の態度はイラつく。


「まあ、そうですが……でっ、どうします。まだここに居ますか?」

「……っ、今すぐでるよ!」

リュートの同情でも欲しかったのか? という視線に怒りと恥ずかしさで顔を赤くしながらエメリアは立ち上がる。



「今のは意地悪ですよリュートさん」

「何がだ?」

エメリアが部屋から出ていき扉の方を見ていたリュートに後ろからライムが声をかける。


「彼女が同情してほしい訳ではないのはわかっているでしょう」

「ああ、でも早く帰ってくれただろ」

「はぁ、やっぱりわかっていたんですか。どうするんです。もう追うのですか」

「やっぱり気づいてたか」

「えっ? えっ?」

リュートとライムの話についていけないフェリスは戸惑いながら首をリュートにライムと左右に行き来する。


「フェリスさん。リュートさんはニーナさんを拐ったのがこの街の領主と疑っているんですよ。そしてその領主さんとその仲間である盗賊団のメンバーに恨みをもつ彼女をニーナさんを見つけるための囮としようとした…そうですね」


「正解だ。恐らくあいつは直ぐにでも領主の館で暴れるだろう。そこを侵入する」

「なっ、主殿。そんな卑劣な事をしたのですか!」

フェリスがそういうやり方を嫌いなのはわかっていた。


「じゃあフェリス。ニーナを助けなくてもいいのか」

「そっ、それは。…ですが、彼女は弟君のために頑張ろうとしているのにそれを利用するなんて」

親を失ってるフェリスは大事な者を無くした者の気持ちを利用するのにどうしても抵抗がある。


「それなら大丈夫だ。俺は死んだ弟なんて利用しない。だから今は俺を信じてくれないか」

「主殿……分かった。私は主殿を信じるぞ」


「ありがとう」

「でも私達にも作戦を教えてくれれば良かったですのに」

「悪かったよ。確信がある訳じゃないからぬか喜びさせるのも悪いと思って言えなかったんだ」

「もう私達に黙って色んな事を進めないでくださいよ」

「ああ、分かったよ。もう隠し事はしないよ」

この時リュートは一つ嘘をついていた。




「アダム、絶対姉さんが仇を射つからな」

エメリアは金色の狐耳を風で揺らしながら、決意の声で呟く。


――たとえこの身が朽ちようとも。

その声は強く吹く風によってエメリア自身にも聞こえなかった。

エメリアは静かにすぐ目の前にある館に向かって歩を進めていく。


それは彼女が残酷な真実に向かって進む事でもあった。

結構伏線をいれました。


誤字脱字や感想等があったらどんどん送ってください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ