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異世界転生(運命から逸脱した者)  作者: わたあめ
間章~動きだす世界~編
26/52

1話:ダンジョンと慢心

間章の1話目です。


※冒険者ランクは一つ上がる毎にステータスの数値が三倍程変わります。


Gランクは初心者、Fランクは100あればなれるので簡単になれる

Eランクは300~800台、Dランクは900~2500とこんな感じです。

ちなみに、一章のバルトはEランクレベルです。



地球から転移してきた優奈達勇者組は、日々剣術と魔法の訓練をしてきた。

時間がたつのは早いもので、もう転移して、から二週間目に入る所だ。


勇者たちが今いる場所は、体育館を三倍程の大きさにした模擬戦闘をするための部屋だ。

部屋は戦闘で壊れないために硬い材質そうな石の床や壁でできている。


「いくぞ」

凛とした少女の声が訓練場に響く。

少女は声と同時に前にでて、模擬戦の相手である少年に素早く近づいていく。


「甘いですよ!」

対する少年は無防備に少女が近づいた所を平手で殴ろうとする。


「わかってるさ」

そこで少女は急停止して、逆に無防備に手を突き出してる少年の腕と服の襟首を掴み体勢を崩しにかかる。

少年はこのままではやられると思い強化魔法にスキルを使って力で離れようとするが、体の動きを止めて結局地面に倒されてしまった。


「くっ、……参りました」

体勢を崩された所を足をかけられて地面に倒され喉に手を突きつけられ少年は降参する。


「フム、もう少し相手の攻撃の意図を考えてみるといい。そうすれば君はもっと強くなる」

「はい、ありがとうございます。やはりすごいですね。天龍院先輩」

少年――北条将輝は、天龍院風虎に爽やかな笑みを向ける。


「なに、剣術では君の方が強いんだ。大したことではないさ」

これまでの訓練で剣術、体術、魔法の総合的な強さでは風虎は勇者の中では一番だ。


「ハハ、それをいうなら凄いのは東雲さんですよ。彼女には一度も勝てていませんから」

「安心しろ、君の剣は間違いなく強いさ」

「はい!」



「あの二人は本当に凄いね~速くて何も見えなかったよ」

風虎と将輝の試合を見て優奈は毎度の事とはいえ驚く。


「そうだね。天龍院先輩も凄いけど北条君も中々だった」

優奈の感想に風虎らが話していた東雲鈴が同意する。


ただ優奈とは違い武術に特化した鈴は二人の動きをちゃんと捉えての感想だ。


風虎が将輝の体勢を崩そうとした時将輝は強化魔法を使っていた。

恐らくスキルも使って力ずくで体勢を建て直そうとしたのだろう。

にも拘らず将輝は動きを止めて結局やられてしまった。


「天龍院先輩のスキルだよね」

風虎のスキルは接近戦闘には向いていないと思っていたが、風虎はうまく応用してるようだ。


「どうしたの?」

一人で何かを呟く鈴に優奈が心配して声をかける。

「大丈夫、何でもない」

鈴は自分が将輝はともかく風虎には劣っている事をさらに自覚する。


「私は負けない」

戦闘だけは負けないと小さく鈴は呟く。


「では、勇者様方、そろそろ次の訓練に移ろうと思います」

勇者達に訓練をつけてくれている教官のマークが勇者達を集合させて話す。


「次の訓練てなんだろうね?」

「さぁ? なんでしょうね」

「…………」

優奈が隣にいる桃花と鈴に話すが桃花は優奈と同じく次の訓練は何かわかっていない。

ただ鈴は顔を険しくして、優奈の話しも聞こえてない程マークの話しに集中している。


「鈴……ちゃん?」

そのただならぬ雰囲気に優奈は緊張する。


その時マークが話す内容に優奈は固まる。

「次の訓練は実際にモンスターを狩ってもらいます」

「えっ」

これまでの訓練は全て魔族やモンスターを倒すための訓練だといえ、実際に命をかけて戦った事のない優奈を含めた勇者の全員が硬直する。


「鈴ちゃん、わかってたの」

鈴は先程の様子からこの事に感ずいていたと優奈は察する。


「そろそろかなと思っていた」

鈴の家は剣術道場を営んでいるからこそ、鈴は命がけの戦いを一番わかっている。


「でも私はやる」

この訓練で魔王を倒す事を拒否する者が増えるだろう。……でも自分は優奈といくと決めたのだ。


「鈴ちゃん……」

そんな鈴の心情を幼い頃からの付き合いの優奈は理解する。


「そうだね! 先に進むためにはこんな訓練くらい頑張らなきゃ」

勿論優奈だって怖い。

だけど、親友は自分のために頑張ろうとしてくれて、何より私は変わると決めたのだから。


周りのみんなも誰一人文句を言うものはいない。

実感がないのもあるの思うがみんなもある程度は覚悟決めているのだろう。


「どうやら皆さん覚悟はあるようですね。それでこそ勇者です」

マークは一度頷いてから勇者達を見る。


「ではこれより実際の戦いを行ってもらいます」



優奈達勇者の事は王族や一部の貴族しか知らないので王都をでて、モンスターが生息する所に行くのに二日もかかっていた。


「わぁ、大きい」

優奈達は五メートルの高さはある洞窟の入り口の前にいた。


その前では勇者達をこの場につれてきた教官のマークが説明をし始める。


「この洞窟はダンジョンと呼ばれています。進むと下がっていく構造になっておりまして、地上にはない宝物やモンスターの強さが下に降りる毎に上がっていくので強くなりたい者やトレジャー目的でくるのです」


ダンジョン、地球で高校生だった勇者達の大体は聞いた事がある言葉だ。


「このダンジョンはどのくらいの深さがあるのだ?」

風虎がマークに聞くとマークは首を左右に振る。


「それは、わかっていません。このダンジョンの事は何一つわかっていないんです。ですので質問に答えるとしたら今までで一番進んだ者の地下三十階です」


「そうか、では教官から見た我らはどのくらいまで行けそうだ」

風虎達は勇者の成長の早さを遺憾無く発揮して、今では人間の中では上位のステータスを持つ。


マークは顎に手を当てて考え込む。

周りの勇者達も自分等の実力は教官からみてどのくらいなのかと緊張する。


「そうですね……行けて地下二十階あたりでしょう」

マークの答えに勇者達は思った以上に進めるようで安心する。

過去最高で三十階なのだ、二十階も十分凄いだろう。

そんな安心感が漂う勇者達にマークは油断しないように更なる言葉を放つ。


「……ですが、それはあくまでも勇者様達が実力をしっかりと発揮できた場合です。……それにダンジョンにはトラップ等も多数あるのでそこにも気をつけないといけません。ですのでもしもの時に備えて護衛はいますが、あまりうろつかないでください」

マークと護衛の騎士数人をつれて勇者達はダンジョンに入っていった。


ダンジョンの中は壁や地面がほんのりと発光していて進むのに不自由がない。


「ダッ……ダンジョンです! ダンジョンですよ。光る部屋ですよ!」

「桃花ちゃん。楽しそうだね」

ダンジョンに入った時からハイテンションの桃花に優奈が話す。


「はい、ダンジョンには少し憧れていましたから。……それにせっかくこれたのに怯えてばかりじゃ、勿体ないです」

そういう桃花の体は細かく震えている。


「桃花ちゃん……うん、そうだね!」

優奈は慰めたい気持ちに駆られるが拳を握りしめて堪える。


「皆さん、モンスターが見えましたよ」

前方からモンスターが現れて勇者達は身構える。


現れたモンスターは緑の肌の少し耳が尖っている小さな人間の群れだった。

「あれはゴブリンというモンスターです。最弱レベルのモンスターなので、皆さんなら簡単に倒せます」

マークはそういうが、初のモンスターだけでなく人に近いモンスターの見た目に勇者達は躊躇して動けない。


飛び出した二人――鈴と風虎を除いて。


鈴は腰に差していた長剣を抜いてゴブリンを斬りつけていく。


「やるな、ならこちらも」

鈴が今もゴブリンを殺していく様子を見て、遅れは取らぬと風虎は特別に用意してもらった、先端が細く尖っている片手剣のレイピアを抜き放ちゴブリン十体を突いて殺していく。


そんな二人の圧倒的な強さを見て他の勇者も勇気づけられていく。


「みんな、あの二人だけには任せられない。行こう!」

真っ先に前に出た将輝が他の勇者に声をかける。

「「「「「うぉぉぉぉぉ」」」」」

やる気を出した勇者達により、ゴブリンの群れは瞬く間に全滅した。


だけどその後勇者達は顔を青くして吐いてしまい三十分程動けなくなってしまう。


だけどそれも階を降りていく毎になくなっていって、元々実力が高い勇者達はあっという間に十五階にたどり着いていた。


その頃にはモンスターを狩ることに躊躇しなくなる者が多くなり、中には最初の忠告を忘れ、自分の力に酔う者まで出始めていた。


「んだよ~。ダンジョンっていっても楽勝じゃんよ~」

真っ先に調子に乗ったのは金城琢磨だった。

だけどそれに対して金城を避けていたクラスメイト達は気にした様子をみせない。みんな自分の事しか考えていないのだろう。

「そうっすね。俺達もしかして最強なんじゃね」

「特に琢磨さんが強すぎてパネェよな」

琢磨の腰巾着である、松野健太と須田高次も琢磨に追随する。


「なによあいつら、マークさんや護衛の人達の言うことも聞かないで」

力に酔った琢磨達はマーク達の言うことを聞かずに、好き勝手し始めていいた。


「三枝君の言うとおりだ。このまま空気が悪くなるのはまずい」

優奈の文句に風虎が同意してきた。


「金城様、止まってください。そこに罠があるやもしれません」

「あん? 何、ただ階段があるだけじゃんよ~」

琢磨はマークの言うことを聞かずに下に降りるための階段に進む。


「まっ、待ってください。その階段自体が罠――」

「うぉっ」

マークの言葉と同時に地面がほんのりと発光する石の上から、さらに強い光を放つ魔方陣がこの場の全員足下まで広がり、強い光がさらに輝き全員の視界を塞ぐ。



「うん? ここどこ」

光に視界を奪われた優奈が目を開けるとそこは先程の場所から移動したのか見覚えのない部屋に来ていた。


周りをみると他の勇者達も一緒にいた。

「どうやら、間違った階段に足を乗せると一定の範囲にいる者を転移させるトラップに掛かったようです」

マークが今の状況になった理由を教えてくれた。


「優奈大丈夫?」

鈴が心配の声をかけてくる。

「うん、皆も何も怪我していないようだし、ただ移動させるための罠だったのかな」

「そうだろうな」

優奈と鈴の会話に風虎が入ってくる。


「見てみろ、この部屋を何かと戦うための部屋に見えるだろう」

風虎に言われて部屋を見てみると、幾つもの石柱が等間隔に置いてあり、床はタイルのようなものが敷き詰められており、確かに戦いやすい様に思える。


「皆気をつけろ! 何かくるぞ!」

突然将輝が大声を上げたと同時に先程の様に床が光って、そこからモンスターが現れる。


それは筋骨隆々で二メートル程の大きさを持つ茶色肌のモンスターだった。


「もしかして、ミノタウロス」

そのモンスターは二本の雄々しい角を持つ牛の顔をしていて、その見た目は優奈でも知っているものだった。


「あれはミノタウロス! 強靭な肉体を持つ凶悪なモンスターです。ここは私が……」

ミノタウロスを見たマークが慌てながら自分が戦うと前にでようとする。


「まぁ、待てよ~。ここは俺がやりますよ」

だけどそれを琢磨が止めた。


「金城様が……」

先程まで浮かれていた琢磨にマークは一抹の不安をおぼえる。


「ああ、直ぐ終わらせるけどな~」

そう言って琢磨は強化魔法でミノタウロスに一気に近づく。


「じゃあな~うし」

琢磨は拳に炎を纏わせてミノタウロスに殴りかかる。

琢磨の拳はミノタウロスに直撃して殴った所に火柱を立てる。


『ぐぉぉぉ』

ミノタウロスは何故か二発の火柱を体からあげて地面に倒れる。


「さすが勇者だ。なんという力なんだ……」

ミノタウロスは強力なモンスターだ、Cランクの冒険者で倒せるレベルなのにそれをたった二週間で倒せるかとマークは驚く。


「アハハハハハ」

攻撃をくらい絶命したモンスターを見て琢磨は笑う。


こうしてハプニングはあったが、勇者は簡単に対処してみせた。

これにより勇者達に慢心する者が増えてしまう。


勇者達はそれにより絶望を味わう事になることを知るよしもない。

間章が始まりました。

今回はあっけなく琢磨がミノタウロスを倒しましたが、これは琢磨を含めた勇者が強いだけです。


次回は魔族側を少し書く予定です。


誤字脱字や感想等があったらどしどし送ってください!

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