2話:初依頼と提案
二章の2話、は~じま~るよ~
冒険者ギルドにてモーブという男に絡まれたリュートは、その対応について思考を働かせていた。
モーブはバルト達と比べると確かに強いが今のリュートの前では、小さな事でしかない。
(どうするか、簡単に倒せるけど、村の中で一番強い奴をあっさりと倒すと目立つよな……
こんなへんぴな村で目立っても平気だと思うが、今は目立ってもメリットはないし、しょうがない、大人しく殴られるか。
「じゃあ、早くその教育とやらをしてくださいよ」
怯えるどころか、めんどくさそうに言うリュートにギルドがわずかに騒然となる。
「……どうするの?」
「今からボコられるから、離れてろよ」
リュートから余裕を感じたニーナは言うとおりに離れる。
相手を怯えさせる目的で声をかけたのに、怯えるどころか、こちらをなめている態度のリュートにモーブが青筋を浮かべる。
「いい度胸じゃねーか、――ご褒美にこの拳をくれてやるよ!」
話ながら急に殴りかかってくる。
相手の意表を着いたタイミングでの攻撃だ、さすが、レベル40超え、だてに戦って来たわけじゃないのだろう。
力の数値も高いし当たれば普通の者じゃ、顔が腫れて見れたもんじゃないものになるだろうが、そこは相手が悪かった。
確かにモーブの拳はリュートに当たった。
周りの者達もこの少年は凄い怪我をするだろうと思い、実際にリュートは、吹っ飛び壁に激突した。間違いなく怪我をおっただろう。
だがそれが間違いだと、殴られたリュートやニーナ以外にも分かった者がいる。
それは殴った本人――モーブだ。
(なんだ、あの仮面のガキ、俺の攻撃でも手応えがまったくなかったぞ)
吹っ飛んだ少年の方を見ると仮面から覗く瞳にモーブは背筋が凍りつくような思いをした。
モーブは今年四十二歳のベテランだ。
長年戦いをしてきたその経験が、目の前の少年が、自分程度が手を出していい存在ではないと、今更ながらに気づく。
(クソ、酔って手を出しちゃいけねぇ奴に、絡んじまった。ヤベェ、殺されちまう)
モーブはそのまま逃げようか迷うが目の前の少年は実力を隠したがっているようなので、袋に入った硬貨を少年に投げつけてから、悠々と去っていく事にした。
「ふん、この金でもっとましな仮面を買うんだな」
そのままギルドを出ていくモーブ。
リュートはモーブの思惑にちゃんと気づいていた。
(ちゃんと実力の差に気づいたか。それに俺が余り目立ちたくないと理解したようだな)
モーブは咄嗟に自分がやるべき事を理解していた。
リュートに怯えて逃げてもただ硬貨を渡しても怪しいので、こちらを軽くばかにしつつ渡したのだ。
(あの感じだと、もう絡まれる事はないだろう……これなら大丈夫か)
この時モーブは命拾いしていた。
もし、リュートの実力に気づかず、また絡むような事があったら、リュートはモーブを殺していただろう。
「大丈夫ですか! 今、奥の部屋に」
受付嬢がリュートを心配して駆け寄ってくる。
「……大丈夫、リュートは無事」
ニーナがその間に入り、リュートを見えにくくする。
リュートはその間に口の中の肉を軽く噛み、血を流す。
「ですが、モーブさんに殴られたんですよ」
先程のステータスを見た受付嬢からすれば
リュートが無傷だと、思えないのだろう。
「大丈夫です。咄嗟に後ろに飛んだので、軽く口を切ったくらいで済みました」
そういい、立ち上がるリュートを見て安心したのか、ほっ、と息を吐く受付嬢。
「そうですか、ご無事で何よりです。この度はすみませんでした。モーブさんを止められずに、ギルド職員を代表して謝罪させてもらいます」
「いえ、本当になんともないので、それにしても意外でした。こういう事はギルドは関与しないと思ってましたので」
リュートが読んだことがある小説でも、ギルドは、こういう時、謝罪などしなかった。
「いえ、ギルドは冒険者様方の喧嘩には関与はしません。ですが、あなた達はこちらのミスで書類が終わったわけじゃないですから。市民を守るのはギルドの仕事です」
先程この受付嬢は登録は終わったと言っていた。リュート達を庇うためにそういう事にしたのだろう。
(この町のギルドに来るときはこの人の所だな)
リュートはこの優しい受付嬢に先程しようとした。依頼の事を聞く事にした。
「あの、おねえさん、僕達依頼を受けたいんですけど、何かオススメはありますか」
「はい、色々な依頼がありますが、どういう仕事がいいですか」
採取系の依頼で薬草などの事を知るのもいいが、初めはGランクに来る依頼のモンスターの強さを知ることにする。
「出きれば、討伐系でお願いします」
「討伐系となると……そうですね、ゴブリン十体の討伐というのが、いいのではないでしょうか」
さすがに最低ランクの討伐だけあってモンスターのレベルが低い、ゴブリンなんて数百匹だって平気だが、せっかくだ受けてみよう。
「じゃあ、それでお願いします」
「はい、承りました。ゴブリン十体の討伐ですね、期限は3日間です」
依頼を受けたリュート達は村の外にでて、数キロを歩いて、モンスターがよく出るという草原に着いた。
この草原はリュート達が抜けた森林とは、反対側のほうにあり、ほぼの冒険者はこちらの草原にくる。
その理由はあそこの森林は視界が悪いうえに、モンスターの数が遮蔽物が多くて把握しずらい。
そんな危険な場所に行くなら、この草原にきて、モンスターを狩った方が効率がいいからだ。
奴隷商人のワルドはそこに目をつけて、あの森林に館を建てたのだろう。
「これは、凄い見晴らしがいいな」
見渡す限り草だらけだ。確かにこれじゃあモンスターを簡単に見つけられる。
「……そのわりには、つまんなそう」
ニーナがそう指摘してくるが、リュートの態度がつまらなそうになるのもしょうがないだろう。
「いや、唯でさえ、弱いゴブリンが普通に近づいてくるんだぞ、簡単に倒せるじゃないか」
「……しょうがない、依頼やんないと……ランクあがらない」
『そうですよ、命を狩るんですから、そんな態度は相手に失礼です!』
向こうが正論を言うのでリュートは何も言えない。
(まぁ、でも今の俺は油断してたな。もしこれで自分並みの強さを持つ者が、攻撃をしてきたら、俺はやられてたな)
少し自惚れていたリュートは油断を消して、どんな事が起きても平気なように心がけとく。
「そうだな、今のは俺が悪かった。さっさと依頼を終わらせよう」
「……んっ、がんばる」
『はい、早く終わらせて、宿を探しましょう』
ニーナやライムに、自分がこんなにもあっさりと謝罪した事にリュートが驚いていると、討伐対象であるゴブリンが、十体を軽く超える、三十体位の数で現れた。
想定よりは多いが問題ない。
「じゃあ、二人とも、いつもみたいに、ここは俺が一人でやるぞ」
二人の返事を聞かずにリュートはモンスターに歩いて近づいていく。
実はワルドの館を出てから戦闘を行ったのは、リュートだけだ。
リュートは、異世界から来た自分は、訓練したとはいえ、戦いの空気を一番知らないと考えて、とにかく戦闘を行っていた。
三十体のゴブリンに対し、リュートは一本のショートソードしかない。
ゴブリンの中で先頭にいた個体がリュートに迫るが、リュートはただ腕を振るだけだ。
すれ違った瞬間にゴブリンの頭が、首から離れる。
すれ違う時にゴブリンが認識できない速さで剣をふりかぶったのだ。
仲間が殺される所を見て、一気に迫りかかるゴブリンだが、リュートの足が一歩進む事に、一体、また一体とその数をどんどん減らしていく。
全てのゴブリンの頭が飛ぶのに、一分とかからなかった。
結局リュート達の初依頼は、その内容よりも難易度が上にも関わらず、圧倒的な強さの前に直ぐに達成してしまった。
「はい、コレがゴブリンを討伐した証拠の魔石」
依頼を終えた、リュート達は、冒険者ギルドに依頼終了の報告に来ていた。
依頼終了の確認方法は、まずモンスターの心臓である、魔核を体から抜くのだ。
魔核は抜き取ると、魔石という鉱石になる。
それをギルドの受付にもっていく事で依頼を達成したことになる。
魔石を、三十個持ってきたリュートはそれを受付嬢に渡したのだが、何故か物凄く驚いている。
「凄いですね、ステータスで達成できるとは思ってましたが、こんなに早く、それも三十個の魔石を持ってくるとは思ってませんでした」
ゴブリンは弱いがそれを一時間もかけずに三十体はやりすぎたか。
「まぁ、ニーナがいますから」
だけど、こういう時のための言い訳は用意してある。
「まぁ、エルフの彼女が入れば納得はできますね」
ステータスプレートにはスキルや種族は写らないので、こういえばニーナが、何かしらの魔法を使ったと誤解してくれる。
「あの、リュートさんとニーナさんにご提案があるのですが、どうやらGランクじゃあ、お二人の実力にあっていないようですので、ランクアップの試験を受けてみませんか?」
「できればしたいですけど、試験なんて、勝手に決めてもいいんですか」
ランクアップなんて受付嬢が勝手に決められる物ではないと思いたずねると。
「はい、その通りです。……ですがGランクに限り、受付の推薦があれば直ぐに試験を受けられます」
話を聞くと、ギルド側も、できれば直ぐにでもGランクを抜けて、どんどん高ランクの依頼を受けてほしいようだ。
いつまでもゴブリンを倒すのも嫌だし、ここは、受けておこう。
「じゃあ、僕達二人とも受けます」
「はい、では詳しい事は、明日、話しますので、ギルドに明日も来て下さい」
ギルドをでたリュート達は宿の前にたどり着いていた。
その宿の外観は石材で作られている。ちゃんと磨かれていて、想像したよりもきれいだった。
「じゃあ、ここに泊まるぞ」
『どんな感じなんでしょうね』
「……ごはん、おいしいかな」
扉をあけて入ると、女将らしき女の人が声をかけてくる。
「いらっしゃい、何泊だい」
「とりあえず、一週間で」
内装を見ても、清潔に保たれてるし、当分はここを、活動拠点にしてもいいだろう。
「部屋は、二部屋でいいのかい」
お金も、まだまだ余裕あるし、二部屋でいいか、そう思っていると。
「……いい、一緒の部屋」
ニーナが先にそう言ってしまった。
「……いいよね?」
「まぁ、問題ないか」
お金を節約するのも悪いことじゃないし、
リュートはニーナと同じ部屋で寝ることに決めた。
「じゃあ、一部屋でお願いします」
「あいよ、それじゃあ、ゆっくりしてきな」
そういって部屋の番号札がついてる鍵を投げて寄越す女将。
こうして俺とニーナは部屋で休む事になった。
『私もいますよ!』
雑な文章になったので、そのうち修正します。
誤字脱字や感想等があったらどしどし送ってください。




