4話:精霊と癒し
この話で一度間章は終わります。
あのあと急いで準備をした優奈達はステータスを計った真っ白な部屋に集まっていた。
「皆集まったようだな、では食事の時間になるまでこの先の事について話し合おうではないか」
どうやらフウコ先輩がみんなに集合をかけたのは話し合うためだったようだ。
先程の殺人の自慢の影響か周りを見ると金城達は端の方にいてクラスメイト達と距離をあけている。
「これから私達はとりあえず3ヶ月程はここで訓練を受ける事になっている。そこで時間を置いて考えが少しは整理できた今聞くが訓練について反対の者はまたは何かの意見がある者はいるかいるなら手を上げてくれ」
周りを見ても手を上げる者はいない。
「反対の者はいないとみていいのだな、最後に聞くがこれは強制ではないのだぞ」
もう一度フウコ先輩が聞くけどやはり誰も手を上げない。
そこで将輝が手を上げて答える。
「天龍院先輩、実はみんなと話したんですけどこの知らない地で少しは身を守る術は見つけるべきだという結論になりまして」
「フム、確かにそうした方がいいだろう」
ちなみに私は真っ先に訓練すると言った方だ。
「天龍院先輩に黙ってみんなと確認してしまいすみませんでした」
「何、気にするなじっくり好きなだけ話し合えばいいさ、では訓練は皆すると言うことでいいな」
「はい!」
「な~そろそろメシ食いにいこ~ぜ」
話し合いが一段落した時金城が言う。
「明日から訓練なんだろメシ食って早く寝て~よ」
「そうだな、では彼女らに案内してもらおう。いいかな」
金城に思うところがあるはずなのにそれを僅かにも外にださず、フウコ先輩は扉に佇んでいたメイドさんに声をかける。
「もちろんでございます。では皆様、食堂にご案内します」
そうして私達は食堂に案内された。
「は~すごい美味しかったね、鈴ちゃん、桃花ちゃん」
食事を終えた私達は部屋に戻って来ていた。
「うん、すごく美味しかった」
「本当ですよね!ほっぺたがとろけるようでした」
食事の内容を思いだしながら笑い合う私達は食事の最後に王女様に言われたことに話を変えていった。
「明日やる魔力の練習ってどうやるんだろうね」
王女様は魔力の練習をし精霊契約と云うものもやる時言っていた。
「イメージをちゃんとするといいと言ってたよ」
「でも、イメージと言われてもわかりませんよね」
「私もなんかすごいエネルギーとしか想像できないな鈴ちゃんは?」
鈴ちゃんに聞くと鈴ちゃんは頷き、答える。
「私は分かるような気がする」
「えっ鈴ちゃんわかるの!」
「本当ですか!」
「うん、私もよく鍛練中に自分の中の力をイメージしたりしてるから、多分魔力と云うものはそういう感じでイメージすればできると思う」
「あぁ、私も分かりました。いわゆる、気ですね。そうかぁ、私も漫画や小説を参考にすればできるかもしれません」
「えっ、もしかして桃花ちゃんそういうのに詳しい?」
「あっ」
桃花ちゃんの笑顔が固まりどんどん血の気が引いていく。だっ大丈夫かな。
「いや、その、あのいや全然詳しくなんて」
「すごいよ桃花ちゃん!」
「えっ」
「もしかしたら桃花ちゃんに聞けば私でも分かるかもしれないんでしょ」
「えっでも、もしかしたらで確証は」
「全然それでもいいよ。だから私に教えて桃花ちゃん」
「うん、私でいいなら」
良かった少しは希望が見えた....ってなんだろう、鈴ちゃんがこっちを見て笑っている。
「どうしたの鈴ちゃん私を見て笑って、何か顔についてる?」
「いや、相変わらず優奈はすごいなと思って」
「えっ私が?」
なんだろう私何かすごい事したかな?
「うん本当にすごいよ」
何かものすごく褒められて恥ずかしくなる。
「も~やめてよ、なに、何か私した」
「優奈ちゃん可愛い」
「今度は桃花ちゃんまで!」
まさか桃花ちゃんまで私をからかってくるなんて、しかも二人ともベッドに入ってるし。
「何もう寝るの?」
「うん、明日早いらしいし、優奈をからかってもう今日は充分」
「えへへ、私もそうです。楽しい気分のまま寝たいので」
確かに今なら笑いながら寝れそうだ。
「うん、私も寝よう」
ベッドに入り目を瞑る、明日は初の訓練だ
、私頑張るからね、お休みりゅうくん。
「うっ~ん……ほへ」
起きたら鈴ちゃんの顔が目の前にあった。
何してるんだろう。
「おはよう優奈」
「うん、おふぁよう~~ねぇ鈴ちゃんなんで鼻つまんでるの~?」
「優奈が何度起こしても起きないから、桃花はちゃんと一度で起きたのに」
「ごめんね~」
そうだった、自分が朝弱いのを忘れてた。
「ほらッ、早く起きてもうみんな食堂に向かっている」
「エエ!もうそんな時間」
大慌てで着替える私に鈴ちゃんが呆れてため息をついている。
「ハァ、昨日のあのカッコいい優奈はどこに行ったのかしら」
私は昨夜自分が語った決意を思い出した。
はっ恥ずかし~あんなに偉そうに人を助けるとか言っといて朝寝坊するなんて。
「おっ……終わったよ」
「なら早く行く!」
「はっ、はい!」
鈴ちゃんがこわい、実家の決まりでこういう事には厳しいからなー。
私は急いで鈴ちゃんと食堂に向かっている。
食堂に着くともうみんなは食事を始めていた。
うぅ、やっぱり寝坊したの私だけなんだ。
「あっ、優奈ちゃん、鈴ちゃんこっちこっち」
桃花ちゃんが私達に気づいてちいさく手を振ってくれた。
「ゴメン桃花、席取っといてもらって」
「平気だよ~もともと私の隣に座る人なんていないし」
ちょっとネガティブな事を言う桃花ちゃんの両隣にそれぞれ私と鈴ちゃんが座る。
「ねぇ桃花、私達がいないとき何か話とかなかった」
「うん、あったよ。あのね今日の魔力の訓練の後精霊契約を他の貴族様を招いてやるんだって」
「意外、何かアクシデントがあった時のため、来ても王様くらいかと思ってた」
「何かね、昨日の内に風虎様と北条君は魔力の練習をして、もう使えるようになったんだって、これで面目はたつからとフウコ様が言ってたよ」
「まぁ、最悪あの二人がいるだけできっと受けはいいしね」
確かにもし私達が失敗してもあの二人がいれば誰も気にしないだろう。
あっそうだ。
「ねぇ、桃花ちゃん昨日の話だけど桃花ちゃんの小説何かの魔力の出し方教えてよ」
「あっ、そうだったね、じゃあ訓練の時に説明するよ」
「ありがとー桃花ちゃん」
ご飯を慌てて食べているとフウコ先輩が話し出した。なんだろう?
「皆今日から訓練だ、まずは魔力の放出 だが、安心しろ、私達勇者は魔力を普通の者よりも扱いやすいようだ。先程も言ったが私と北条君は一時間くらいでできた」
「ねぇ、桃花ちゃん一時間て早いの?」
「うん、王女様の話だと魔力と云うのは誰にでもあるらしいけど、意識して放出するとなると一週間はかかるんだって」
「へーやっぱり、あの二人すごいね」
鈴ちゃんも感心してるが、何だか鈴ちゃんもそのくらいで出来ちゃうような気がする。
「よし、じゃあ二人とも頑張ろうね」
私は二人に声をかけながら、自分を鼓舞する。
最初の訓練から躓く訳にはいかないんだから!
「うぅ~できないよ~」
私は行きなり躓いていた。いまだにできてないのは私を含め数人しかいない。
「落ち着いて、優奈、おへそを中心に体、全体にエネルギーが満ちわたる感じでイメージして」
「そんなのイメージできないよ~」
「じゃ……じゃあ血が全身を流れるように魔力も全身を流れてるってイメージしてみたら」
「なんかしっくりこないよ~」
鈴ちゃんと桃花ちゃんがそれぞれアドバイスしてくれるがいまいちイメージが掴めない。
そんな私を見てフウコ先輩が近づいてくる。
「フム、ステータスを見た限り三枝君は魔力の適正が高いと思うのだが……そうだな」
「フウコ先輩~何か分かったんですか」
人の事によく気付くフウコ先輩なら何か分かるかも知れない。最後の希望にすがり付くように私はフウコ先輩に聞く。
「いや、たいした事じゃないんだが皆大体魔力を温かい物としてイメージしているのだが、三枝君がイメージする温かい物を考えながらやってみるのはどうだ」
「温かいものですか」
私にとって温かい物は――家族、友達、お昼寝、御飯、なんだろう……あと温かいものは――「ありがとうりゅうくん!」
……あっ
私は、小さい頃よくいじめられていた。
まだりゅうくんが暴力を振るわれる前で、私がいじめられる度に庇って代わりにりゅうくんが殴られて、私は何度も泣きながら謝るんだけど、りゅうくんはその度に頭を撫でてくれて、私は悪くないと、自分はそれくらいしかできないと笑いながら言っていた。
それはどんなにボロボロでも確かに私にとってはヒーローで、――そうか、私あの時からりゅうくんの事を好きだったんだ。
会いたい。りゅうくんに会いたいよ、
りゅうくん私はやっぱりあなたが大好きです。
……えっ、体が温かい、これが魔力
「出来た?」
何かいつのまにかに魔力らしき物が体からでている感じがする。
「優奈、できてる」
「優奈ちゃん! 出ていますよ」
「どうやら、掴んだらしいな」
三人もそう言ってるし、やっぱりこれが魔力なんだ。
「やった!? わたしできたよ」
「おめでとう、優奈」
「やりましたね、優奈ちゃん」
「よく頑張ったな三枝君、ちょうど皆終わったようだな」
「では皆様、これより精霊契約の儀を行います。正殿にて行いますので案内いたします」
王女様が、現れて次に行く場所を案内し始める。
王女様に、案内されてきたのは、神聖で静謐な空間だった。
部屋には中心にそこがとくに神聖な場所なのか、サークルがあり、そのなかに紋様が書いてあり、いわゆる魔方陣が書いてあり、その横に水晶玉のような物が置いてある。
魔方陣の周りには人が沢山居る、あれが見に来るといっていた貴族たちなのだろう。
早速何人かの貴族達がフウコ先輩達の顔を見ては賛辞を送っている。
「では、皆さん精霊契約のやり方となぜこの部屋にてやるかについて説明いたします」
王女様の説明がはじまる聞きのがさないようにしなくちゃ。
「精霊契約自体はとても簡単にできます。ただ魔力を放出するだけです」
よかった、それなら私でも簡単にできる。
「ただ、精霊とはこの世界のどこにでもいますが、契約できる最低のランクに達する精霊は全体の2割程しかいないと言われています。そのため普通に魔力を放出するだけではほぼの人が精霊とは契約できません。それに魔力の波長という精霊との相性も合わさるともう確率はほぼゼロと言ってもいいでしょう。そこでこの正殿を使います。正殿は精霊を集めやすくあの魔法陣は精霊との相性を合わせやすくする効果があるのです。皆様にはあの魔法陣の中にて契約をしてもらいます。長くなりましたがこれで説明は終わりです」
そこでフウコ先輩が手を上げて。
「では、また私が最初にやろう」
あの先輩には躊躇という物がないのだろうか。
周りの皆に応援されながら風虎先輩は魔方陣に近づいていく。
魔法陣の光のなかに入っていったフウコ先輩はその体から魔力を放出する。
その魔力は明らかに私や他のみんなよりも無駄なくキレイに放出されてるのが分かる。恐らく何度も練習したのだろう。
「フム、これは……成る程これが精霊か」
フウコ先輩がそう言っているけど、私には何も見えないが。精霊は主の前にしか、それも一度しか現れないと言ってたしこれは成功したのだろう。
王女様が魔方陣の近くに置いてあるステータスを計った時のような水晶を見て驚きの声を上げる。
「すっ、すごいです。行きなり中級それも2体と契約するなんて」
その声に周りがざわつく、そこかしこで「あの美しさに中級に同時契約までとはさすが勇者ですな」「いやはや、まったくでございます」「これは聖剣の勇者にも期待できますな」「聖剣の勇者殿もまた立派なお顔をしてますしな」「こらこら、顔は関係ありませぬぞ」「これは失礼」
主に二人の顔についての話しばっかがきこえてくる。……この国大丈夫かな。
魔方陣から契約を終えたフウコ先輩が出てくる。
「どうやら、私には風属性の適正が強いのか、契約した精霊はどちらも風属性だったようだ」
「それは、二重属性ですね。二重属性は魔法をスムーズに発動できますし、威力も高めになるのですよ」
風属性、何かクールな感じがして風虎先輩にぴったしだな。次は誰がやるのかな。
「じゃあ次は俺がいくとしますか~」
どうやら金城のようだ、……契約に失敗してくれないかな。
周りのみんなも風虎先輩の時と違い誰も応援をしていないが金城は気にせずに歩いていく。
魔方陣に入った金城はその口角を吊り上げ笑顔を浮かべる。
「ハハ、これが精霊か、いいぜ俺に力を寄越せよ」
どうやら契約に成功したらしい金城がでてくる。
「どうだお姫さま、契約に成功したぜ」
「おめでとうございます。金城様も中級精霊との契約に成功です」
「ねぇ鈴ちゃん? さっきから言っている中級って何の事」
私のその質問がおかしいのかあんぐりとする鈴ちゃん。えっ、なにその反応。
「呆れた、昨日の食事の時に聞いてなかったの」
「えっ、何か話してた?」
どうやら食事に夢中で気づかなかったらしい。
「ハァ~あのね、精霊にはそれぞれ階級と云うものがあって、大体の人は最下級や下級が多いのそれなのに、行きなり中級と契約したあの二人はすごいってこと」
「うん、ありがとう鈴ちゃんおかげでわかったよ」
「すごいです! 北条様は光属性の精霊と契約――それにこれは上級ですよ!」
それを聞いた貴族達はそれぞれ喜色満面になり喝采を上げる。
話してる内にどうやら北条君の契約が終わっていたらしい。ふーん上級か~、
「恐らく分かってないから言うけど、上級はとても珍しく、それに光属性は魔族に効きやすいから王女様はあんなに喜んでるんだよ」
その時の私の心情はなんでバレた! だった。
「なっ――なんの事かなー? 私はそんなのわかってたのになー」
自分の棒読みに呆れる。演技下手すぎでしょ私、あぁ! 何か鈴ちゃんの目が優しい
あれ完全に呆れてるよ。
それから何人者の人達が契約に成功していった。ここまで失敗した人はいない、どうやら異世界から来た者は精霊契約が成功しやすいのだろう。
とうとう次は私の番だ。精霊契約は一度失敗すると契約は二度とできないというし緊張しながら魔方陣に向かって歩く。
光を放つ魔方陣に私は足を踏み入れる。
大丈夫落ち着け、ここまでみんな成功してるんだ。そう自分を鼓舞するが心臓の鼓動はどんどん速くなっていく。
暑い、汗が雫となり頬を滑る。
魔方陣の内の熱と緊張により体温が上がり、呼吸も早まっていく。
大丈夫だろうか、失敗した時の恐怖で体が重い、それでも魔力の放出は全部だしつくさないように集中するのは忘れない。
先程契約した人達もみんな魔力をだしつくして、ぐったりとしていた。
体から魔力がどんどんと放出される。
魔力が抜けてく影響でさらに体が重く、息ぐるしくなっていく。
その時、魔方陣が一層と輝く、反射的に私は目を瞑る。この光は成否に関わらず精霊契約が終了した証だ。
この目を開けた時に精霊はいるのか、恐る恐る目を開け、俯いていた顔を上げる。
……あっ、
目の前には光を放つ小さな塊が浮いている。これが精霊?
『貴方が私を呼んだのね』
精霊の意思のようなものが流れ込んでくる。「そうよ、私が貴方を呼んだの」
フラフラになりながらも必死に倒れないように堪える。
『そう、では私を呼んだということは契約したいのね』
「うん、契約したい」
『そう、一応聞いておくけど何のために力を求めるの』
「人を助けられるように力が欲しいの」
『……そう、今はそうする事で罪悪感を無くしたいのね』
精霊が言いたいことが私にはすぐにわかった。
「そう、多分私はりゅうくんにたいしての罪悪感を減らしたいだけなんだと思う」
相手が精霊だからだろうか、素直に話せる。
私が人を助けたいのはりゅうくんの代わりに来た私が頑張れば、それはりゅうくんのおかげであるなんてのは、最初から嘘だとわかってた。私はただりゅうくんに何もできなかった自分の罪悪感をまぎらわしたいだけだ。
でも、それでも
「私はもう何も出来ないのは嫌なの!」
『そう、貴方は幼なじみに何もできなかったわ。だから貴方には癒しの力をあげる、これで仲間を死なせないようにしなさい』
「癒しの力?」
『貴方に戦は似合わないもの、それに貴方には癒しの力の適正があるようだしね』
癒しの力、確かに私には回復魔法のスキルがあるし、ぴったしなのかもしれない。
『それじゃあ、私は行くわ、友達は大切にするのよ』
「あっ、ありがとう。私と契約してくれて」
精霊はそのまま消えていなくなった。
魔法陣から出ると、鈴ちゃんと桃花ちゃんが私の所にきてくれた。
「おめでとう優奈」
「やりましたね、優奈ちゃん」
「うん、ありがとう。二人も頑張ってね」
二人と話してから、床に座り休憩する。
もう体が限界のようだ。
よかった。契約が成功して、次は戦いの訓練をするんだよね、それもがんばろう。
でも先ずは契約を成功させるであろう仲間に贈る祝福の言葉を考えるとしよう。
この話の続きは二章が終わってから、書く予定です。
次書く時の話は魔法という力を得た勇者達が訓練を終えて、モンスターと戦う所から書くと思います。
誤字脱字や感想等があったら、どしどし送ってください。




