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【サカイメの書架】2019年5月 お題「天の河」
「やけん、何で年に一日しか会えんと?」
彼女がずっと七夕伝説に文句を言っている。
「罰だよ。仕事せずにデートばっかしてたから」
「なんなん? 神様は何考えとうと!」
エキサイトしだした彼女。僕は腕時計を見る。
「ごめんもう発車時刻が近い」
「デネブがあるったい!」
声が大きくなりはじめた。
「アルタイルが彦星でベガが織り姫やろ? デネブは天の河にかかる橋なんやって。橋あるやん? 会いに行ったらええんよ。行けるやろ? いつでも」
一年に一度会えれば十分なんだよ、と言いかけた僕の言葉は発車ベルに遮られる。
「私は十分やない!」
仕方ないだろ、と僕は彼女の涙を拭う。
「来月また来るから」
そう言って僕は東京行きの新幹線に乗り込んだ。




